片付け

特殊清掃とは何をするのか|費用の実額、誰が払うか、頼む前に確かめる8つのこと

杉野 一樹

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親が一人暮らしの家で亡くなり、発見まで日がたっていた。そう聞いて業者を探すと「特殊清掃」という言葉に行き当たります。特殊清掃とは、孤独死などがあった住居で、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービスです。業法も国家資格もなく、料金の決まりもありません。この記事は、費用の実額を孤独死保険の支払データで、業者の実態を総務省の調査で示し、誰が払うのかと、頼む前に確かめることをまとめます。

この記事で分かること
  • 特殊清掃に業法・国家資格はありません。必要なのは、ごみを運ぶための一般廃棄物収集運搬業の許可(無ければ許可業者への引き渡し)と、見積書の内訳です
  • 費用の実額は、残置物処理が平均29万円、原状回復が平均49万円(2024年度は61万円)。孤独死保険の支払データ12,105件からです。最大は原状回復で756万円
  • 賃貸なら相続人が払い、連帯保証人にも請求が来ます。親の家財保険に孤独死の特約があれば、相続人が保険金を受け取れます
  • 発見までの平均は19日。3日以内に見つかったのは37%で、15日以上が35%です
実家じまいの5段階。お墓、仏壇・位牌、片付け、家をどうするか、解体。この記事は片付け
この記事は③片付けの、特殊清掃が要る場合の話です。

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特殊清掃とは:消臭・消毒で原状回復する作業。遺品整理とは別

「特殊清掃」に法律上の定義はありません。総務省行政評価局が令和2年3月にまとめた「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」は、遺品整理サービス事業者のオプションの一つとして特殊清掃を挙げ、こう説明しています。

「自殺や孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス」

つまり、遺品を分けて運び出す「遺品整理」とは別の作業です。体液がしみた床や畳、部屋に残った臭い、虫の発生といった、通常の片付けでは手が付けられない状態を、消毒と消臭で元に戻すのが特殊清掃です。報告書に出てくる事業者は「特殊清掃をオプションメニューに加えることで、競合他社との差別化を図り」と説明しており、遺品整理業者が兼ねている場合と、特殊清掃を専門にしている場合の両方があります。

特殊清掃が要るかどうかは、部屋の状態で決まります。発見が早く、体液のしみも臭いも無ければ、通常の遺品整理で足ります。発見まで日がたち、しみや臭いが残っているなら、片付けの前に特殊清掃が要ります。順番は「特殊清掃→遺品整理→(必要なら)リフォーム」で、特殊清掃をしないまま片付け業者を入れると、断られるか、作業員の安全のために追加の対応が要ります。

同じ報告書は、遺品整理サービスそのものについて「法令上定義しているものも見当たらない。もちろん、いわゆる『業法』のようなものもない」と書いています。特殊清掃も同じで、誰でも名乗れます。だから、頼む側が確かめる項目を持っておく必要があります。

資格はない。あるのは「ごみを運ぶ許可」と「消毒の技術」

「特殊清掃 資格」で探す人がいますが、国家資格はありません。民間の団体が認定する資格はありますが、法律上それが無いと作業できない、というものではありません。

法律上の要件があるのは、作業そのものではなく、出た廃棄物を運ぶ部分です。家庭から出た廃棄物を事業として運ぶには、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)第7条第1項に基づく市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要ります。報告書によれば、調査した69事業者のうち、この許可を持っているのは34事業者(一般廃棄物のみ27、古物商と両方7)で、古物商の許可だけが32、どちらも無いのが3でした。半数は、ごみを自分では運べない業者です。

許可の無い35事業者がどうしているかも、報告書に出ています。

  • サービス実施場所の市町村の許可事業者に引き渡す、または依頼者に許可事業者を紹介する… 18事業者
  • 廃棄物は依頼者(遺族)が処理する… 3事業者
  • 遺品をまとめて自社倉庫に持ち帰り、選別後、自社から出た廃棄物として処理する… 14事業者

総務省は①について「料金が割高になりやすく」、②は「サービスの低下を伴う」と評価し、③については「違法性に関する個別の事実認定や判断は行わない」としています。電話で「一般廃棄物収集運搬業の許可はありますか。無ければ、ごみは誰が運びますか」と聞けば、この3つのどれかが返ってきます。答えられない業者は避けてください。

遺品整理業者の選び方全般は遺品整理の業者はどう選ぶ?ランキングより先に見る許可と書面に書きました。特殊清掃でも、見るところは同じです。

費用の実額:残置物処理29万円、原状回復49万円(孤独死保険の支払データ)

「特殊清掃 相場」で出てくる数字の多くは業者の目安です。ここでは、実際に払われた額を見ます。日本少額短期保険協会の孤独死対策委員会が2025年12月に出した「第10回 孤独死現状レポート」は、賃貸住宅の「孤独死保険」で支払われた12,105件(2015年4月〜2025年3月)の損害額を集計しています。

平均損害額(異常値を除く)はこうです。

  • 遺品整理(残置物処理)費用… 平均294,131円。最大4,253,473円、最小1,080円。2024年度の単年では266,265円
  • 原状回復費用… 平均494,344円。最大7,564,673円、最小422円。2024年度の単年では610,507円で、レポートは「物価高騰による材料・工費等の影響が考えられる」としています
  • 家賃保証(家主が受け取った保険金)… 平均337,035円。2024年度は389,706円

レポートは「孤独死が発生した場合の平均損害額は、100万円を超える高額となり、家主の負担は大きい」と書いています。残置物処理と原状回復を足すと、平均で80万円前後です。

注意が2つあります。

  • 「原状回復費用」には、特殊清掃だけでなく、床材や壁紙の交換などのリフォームが含まれます。消臭・消毒だけの金額ではありません。最大756万円は、部屋全体をやり直した例と読めます
  • 保険金は損害額の全部を埋めていません。平均支払保険金は、残置物処理293,360円、原状回復315,510円です。原状回復は損害額の6割ほどしか出ていない、ということです
孤独死のあとにかかった費用の平均(残置物処理・原状回復・家賃保証)
孤独死保険で実際に払われた額の平均です。

費用を左右するのは、発見までの日数と、部屋の広さ、季節です。同じレポートで、発見までの平均日数は19日。3日以内が37.0%、4〜14日が28.3%、15〜29日が15.4%、30〜89日が15.8%、90日以上が3.5%でした。15日以上たってから見つかった人が35%います。日数が延びるほど、しみは床下に達し、消臭の範囲が広がり、原状回復の額が上がります。

見積もりの取り方と内訳の見方は遺品整理の費用はいくら?相場より先に見るべき3つの内訳に書きました。特殊清掃の見積書も、人件費・車両費・処分費に「消臭・消毒」の項目が加わるだけで、見方は同じです。「一式」で出てきたら、内訳を出してもらってください。

誰が払うのか:賃貸なら相続人、連帯保証人にも請求が来る

「特殊清掃 費用 誰が払う」への答えは、実家が賃貸か持ち家かで分かれます。

賃貸の場合、原状回復の義務は借りていた親にあり、親が亡くなると相続人が引き継ぎます。部屋を借りていた立場(賃借人の地位)は相続されるので、子が相続人なら、残置物の処分と原状回復の費用は子に請求されます。連帯保証人がいれば、大家は連帯保証人にも請求できます。2020年4月以降に結ばれた契約では、個人の連帯保証人が負う額に上限(極度額)を書くことになっているので、契約書の極度額を見てください。

相続放棄をすれば、相続人としての支払い義務はなくなります。ただし、自分が親の連帯保証人になっていた場合、保証人としての義務は相続とは別なので残ります。相続放棄を考えるなら、遺品を持ち帰ったり処分したりする前に決める必要があります。相続放棄と家の管理の関係は相続した空き家を放置すると|「管理不全空家」の判断基準と、年に何をすればいいかに書きました。

持ち家の場合は、家を相続する人が払います。大家がいないので請求は来ませんが、売るにも貸すにも特殊清掃をしないと先に進めません。そして、特殊清掃をした家は、売るときの告知の対象になります。国土交通省の指針は、病死でも「特殊清掃等が行われた場合」は告知が要るとしています。線引きは親が家で亡くなった実家は「事故物件」になるのか|告知が要る死・要らない死と、訳あり物件買取の使いどころに書きました。領収書と作業内容(いつ・どの部屋・何をしたか)は、告知の根拠になるので残してください。

親の家財保険に「孤独死の特約」が付いていることがある

レポートが集計している「孤独死保険」には、大家が入る型と、入居者が入る型があります。入居者型は、賃貸の家財保険に「遺品整理(残置物処理)費用補償」と「原状回復費用補償」を付けたもので、レポートは保険料の目安を「2年間で20,000円程度」、保険の対象者を「入居者(=相続人)」としています。

つまり、親が賃貸の契約時に入った家財保険に、この特約が付いていることがあります。親自身が入った保険なので、遺族が知らないことも多い。契約書や保険証券を、片付ける前に探してください。レポートによれば、発見日から保険会社に連絡があるまでの日数は平均18日、最長886日で、「保険金請求手続きを行う者(相続人など)の判明に日数を要したなどの事情が推測される」と書かれています。

大家型の保険は大家が受け取るものなので、遺族には直接関係ありません。ただし、大家が保険で原状回復費用の一部を回収できるなら、遺族への請求額に影響します。請求が来たら、「大家型の孤独死保険に入っているか」を聞いてよい場面です。

特殊清掃が要るか、誰が払うかの判断チャート
要るか→賃貸か→保険を確かめたか、の順で見ます。

発見が遅れるのは珍しくない。一人暮らしの親がいるなら知っておく数字

レポートの孤独死者12,105人のうち、男性が83.3%、死亡時の平均年齢は63.6歳、65歳未満の現役世代が46.1%です。死因は病死57.1%、自殺8.3%、事故死0.9%、不明33.7%。第一発見者は、親族が20.8%、友人・知人が12.8%で、近親者は合わせて33.6%にとどまり、不動産管理会社・福祉関係者・警察などの「職業上の関係者」が50.4%です。

親族が第一発見者になった場合は、3日以内の発見が42.5%。福祉・配達員が発見した場合も51.5%が3日以内でした。一方、管理会社などが発見した場合は3日以内が22.0%で、30日以上が31.7%です。定期的に人が来る仕組みがあるかどうかで、発見の早さが決まっています。

全国の数字では、警察庁の統計で令和7年に自宅で亡くなった一人暮らしの人は76,941人、発見まで8日以上かかったのが28.9%でした(事故物件の記事に日数の分布を載せています)。「うちは大丈夫」と言える根拠は、数字の上ではありません。

頼む前に確かめる8つのこと

総務省の調査で、遺品整理サービス69事業者のうち見積書を作るのは63、契約書を交わすのは43でした。見積もりの出し方は「諸項目を積算して見積もる例もあれば、『○○一式』と見積もる例もある」とされ、報告書は追加料金について「契約は、細かく積算したものから、大まかに一式というようなものまで、様々な見積りを踏まえて結ばれていることから、トラブルの要因の一つと考えられる」と書いています。

頼む前に、次の8つを確かめてください。

  1. 一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているか。無ければ、ごみは誰が運ぶのか
  2. 見積もりそのものに料金がかかるか
  3. 「特殊清掃」に何が含まれるか。消臭・消毒まで/床材や壁の交換は別か
  4. 見積書の内訳が分かれているか。人件費・車両費・処分費・消臭消毒。「一式」なら出し直してもらう
  5. 追加料金が出る条件と、キャンセル料が書いてあるか
  6. 作業前と作業後の写真を撮ってもらえるか
  7. 領収書と作業内容を書面で出してもらえるか。保険金の請求と、売るときの告知の根拠になる
  8. 親の家財保険の証券を探したか。孤独死の特約があれば相続人が受け取れる
特殊清掃を頼む前に確かめる8つのことのチェックリスト
電話で聞く・見積書で確かめる・作業の前後で残す、の3段階です。
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特殊清掃にも対応している遺品整理の紹介サービスです。頼む場合も、上の8つの項目(許可・見積料・作業の範囲・内訳)を電話で聞いてから決めてください。

進める順番

  1. 部屋の状態を確かめる。しみや臭いが無ければ特殊清掃は要らない。あれば、片付けの前に特殊清掃
  2. 賃貸なら管理会社か大家に連絡し、契約書で連帯保証人と極度額を見る。持ち家なら相続する人を決める
  3. 親の家財保険の証券を探す。孤独死の特約があれば、保険会社に連絡する
  4. 業者に電話で、許可・見積料・作業範囲を聞く。答えられなければ次の業者へ
  5. 見積書の内訳と、追加料金・キャンセル料を確かめてから契約する
  6. 作業前後の写真、領収書、作業内容を残す。保険と、売るときの告知の根拠になる
家族に送る用(コピーしてLINEへ)

特殊清掃のこと、調べたので共有します。

  • 特殊清掃は、亡くなった部屋を消臭・消毒して元に戻す作業で、遺品整理とは別のものです。専用の法律も国家資格もありません
  • 業者には、一般廃棄物収集運搬業の許可があるか(ないなら、ごみを誰が運ぶのか)と、見積書の内訳を確かめます
  • 孤独死保険の支払データでは、残置物の処理が平均29万円、部屋の原状回復が平均49万円(2024年度は61万円)です
  • 賃貸なら相続人が払い、連帯保証人にも請求が来ます
  • 親の家財保険に孤独死の特約があれば受け取れるので、片付ける前に保険証券を探したいです。見かけたことはありますか

よくある質問

よくある質問①

特殊清掃の費用はいくらですか

孤独死保険の支払データ(12,105件)では、原状回復費用の平均損害額が494,344円、2024年度単年では610,507円です。この額には床材や壁紙の交換などのリフォームが含まれ、消臭・消毒だけの金額ではありません。残置物処理は平均294,131円で、合わせると80万円前後になります。発見までの日数、部屋の広さ、季節で大きく変わり、最大は原状回復で756万円でした。

よくある質問②

特殊清掃に資格は必要ですか

国家資格はありません。民間の認定資格はありますが、法律上それが無いと作業できないというものではなく、業法もありません。法律上の要件があるのは、出た廃棄物を運ぶ部分で、市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要ります。総務省の調査では、遺品整理サービス69事業者のうち許可を持つのは34事業者でした。無い業者は、許可業者に引き渡すか、依頼者に処理させるか、自社倉庫に持ち帰っています。

よくある質問③

特殊清掃の費用は誰が払うのですか

賃貸なら、原状回復の義務を引き継ぐ相続人が払い、連帯保証人がいれば大家は連帯保証人にも請求できます。2020年4月以降の契約では、個人の連帯保証人の負担に上限(極度額)が書かれています。相続放棄をすれば相続人としての義務はなくなりますが、自分が連帯保証人なら保証人としての義務は残ります。持ち家なら、家を相続する人が払います。親の家財保険に孤独死の特約があれば、相続人が保険金を受け取れます。

よくある質問④

特殊清掃と遺品整理は同じ業者に頼めますか

兼ねている業者もあります。総務省の報告書は、遺品整理サービス事業者が特殊清掃をオプションとして提供している例を挙げています。ただし、特殊清掃を専門にしている業者と、遺品整理の延長で受けている業者では、消臭・消毒の設備と経験が違います。「特殊清掃に何が含まれるか」「原状回復のどこまでやるか」を電話で聞き、見積書の内訳で確かめてください。順番は、特殊清掃→遺品整理→リフォームです。

よくある質問⑤

特殊清掃をした家は、売るときに言わないといけませんか

はい。国土交通省の「人の死の告知に関するガイドライン」は、病死や自然死でも、発見が遅れて特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、買主に告げる対象としています。告げるのは発覚時期・場所・死因・特殊清掃をした旨の4つで、氏名や発見状況は要りません。特殊清掃の領収書と作業内容は、その根拠になるので残してください。

出典

  • 総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」/同「調査結果(ポイント)」(令和2年3月。調査対象69事業者)
  • 一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第10回 孤独死現状レポート」(2025年12月。2015年4月〜2025年3月、12,105件)
  • 警察庁「令和7年中における死体取扱状況(警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者)について」(令和8年3月31日)
  • 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)
  • 独立行政法人国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」(2018年7月19日)
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杉野 一樹(ペンネーム)
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