親のスマホは初期化しない|デジタル遺品は「契約先」さえ分かれば止められる。証券口座の調査は結果まで約2か月
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実家を片付けていると、親のスマホとパソコンが出てきます。解約して、初期化して、処分する。その前に止まってください。国民生活センターには、亡くなった家族のスマホを携帯ショップに持ち込んでロックの解除を頼んだら、「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われた、という相談が寄せられています。スマホの中には、ネット銀行やサブスクの契約の手がかりが集まっています。初期化すれば、それも消えます。この記事は、国民生活センターの報告と証券保管振替機構の手続きから、デジタル遺品を調べる順番を整理します。
- スマホのロックは、第三者には解除できないと考えてください。携帯ショップでも「初期化はできるが、ロック解除はできない」とされた相談があります。解約・初期化・処分の前に、中身を確かめる手を尽くします
- サブスクは解約しない限り請求が続き、事業者は契約者の死亡を知る手段がありません。ただし契約先さえ分かれば、IDやパスワードがなくても、遺族からの連絡で解約等に応じてもらえるケースが多いとされています
- 証券口座の開設先は、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求できます。1件6,050円、結果まで約2か月。相続放棄の3か月と重なるので、早めに出してください

借金の調べ方は親の借金を調べる方法|信用情報3機関の開示は合計6,080円。ただし「載っていない」は「借金がない」ではないに、遺品整理の費用は遺品整理の費用はいくら?相場より先に見るべき3つの内訳に書きました。
親の世代も、スマホの中に契約がある
「うちの親はスマホでそんなことはしていない」と思うかもしれません。数字を見ると、そうとも言い切れません。
国民生活センターが引いている総務省の令和5年通信利用動向調査では、スマホでインターネットを利用する人は、60代で78.3%、70代で49.4%でした。令和6年の同じ調査でも、スマホは60〜69歳の年齢階層で約8割が使っています。
国民生活センターは2024年11月20日、デジタル遺品に関する相談事例を公表しました。デジタル遺品に明確な定義はありませんが、この資料では、デジタル機器を通して確認できるデータや、インターネットで契約したサービスのことを指し、スマホやパソコンといった機器そのものは含まないとしています。
つまり問題は「端末」ではなく、「端末の中にしかない契約の手がかり」です。
相談事例:3つの困りごと
国民生活センターが紹介した事例は3つです。
- ネット銀行の契約先が分からない… 亡くなった兄がネット銀行に口座を開いていたようだ。契約先を確かめるために、携帯電話会社の店舗でスマホの画面ロックを解除してほしいと頼んだが、「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われた(2024年2月受付、60歳代男性)
- コード決済の相続手続きが終わらない… 亡くなった弟がコード決済サービスに数万円入金していたと聞いていた。指示どおり戸籍謄本や住民票等を送ったが、1か月たっても残高がいくらあるのかも回答がない(2023年10月受付、50歳代女性)
- サブスクの請求が止められない… 夫が亡くなり携帯を解約した。クレジットカードの明細に約1,000円の不明な請求があり、カード会社は「スマホのセキュリティのサブスクではないか」。キャリアに聞いて請求元は分かったが、事業者には「IDとパスワードがわからなければ、すぐには解約できない」と言われた(2024年7月受付、80歳代女性)
国民生活センターは、ここから3つの特徴を挙げています。
- 故人のスマホやパソコンのパスワードが分からない場合、第三者がロック解除することは困難
- ネット上の資産は本人以外が実態を把握しにくく、相続手続きに時間がかかることがある。実店舗がない事業者は、郵送で書類をやりとりするので時間がかかる
- サブスクは解約手続きをしない限り、請求が続く
3番目にはもう一言あります。契約者が亡くなっていても、事業者はその事実を知る手段がないので、相続人となる遺族が解約手続きをする必要がある、としています。
まず、スマホを初期化・処分しない
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
事例1のとおり、ロックの解除は携帯ショップでもできません。できるのは初期化です。そして初期化すれば、ネット銀行のアプリも、契約確認のメールも、サブスクの登録情報も消えます。
実家じまいの流れの中で、スマホは次の場面で消えがちです。
- 携帯電話の解約… 解約しても端末は手元に残りますが、SMSで届く確認コードが受け取れなくなります
- 下取り・買取り… 初期化が前提です
- 遺品整理でまとめて処分… 家電と一緒に回収されることがあります
だから、どれも「中身を確かめてから」にしてください。パスワードが分からなくても、端末と、充電器と、SIMカードは残しておく。事例3のように、キャリアに聞けば請求元が分かる場合もあります。携帯電話の契約をすぐに解約しないのも一つの手です。
遺品整理を業者に頼むなら、見積もりの段階で「スマホ・パソコン・タブレットと充電器は処分せず取り分けてほしい」と伝えてください。初期化や回収に回ると、契約の手がかりが消えます。

契約先さえ分かれば、止められることが多い
IDもパスワードも分からない。それで終わりではありません。
国民生活センターは、「ID・パスワードがわからない場合でも、契約先事業者が特定できれば、遺族から連絡することで、解約等に応じてもらえるケースが多くみられます」と書いています。
つまり、本当に探すべきなのはパスワードではなく、契約先です。スマホが開かなくても、契約先の手がかりは端末の外に残っています。
- クレジットカードの利用明細… サブスクの請求元は、ここに毎月出てきます。事例3もここで気づいています
- 銀行口座の引き落とし・入出金の記録… ネット銀行や証券口座への送金、定期的な引き落とし
- 携帯電話会社の請求書… キャリア決済で払っているサブスクは、携帯の請求に載ります
- 郵便物… ネット銀行や証券会社でも、年に一度は書類が郵送で届くことがあります
- パソコンのメール… スマホが開かなくても、パソコンのほうはパスワードが分かることがあります
明細は最低でも数か月分をさかのぼってください。年払いのサブスクは、年に1回しか請求が出ません。
注意:クレジットカードを解約すれば、サブスクの請求も止まる、とは限りません。支払いが止まっても契約が残っていれば、事業者から請求が続くことがあります。カードを止める前に、明細から請求元を書き出しておいてください。
証券口座は「ほふり」に開示請求できる
株をやっていたかどうか分からない。その場合の調べ方を、国民生活センターが報告書の注で紹介しています。証券保管振替機構(ほふり)への開示請求です。
証券保管振替機構は、相続人向けの手続きを公表しています(2026年8月版)。
- 開示費用… 1件6,050円(税込)。法務局発行の法定相続情報一覧図のコピーを出すと1件4,950円(一覧図の作り方は親の戸籍の集め方|2024年からは最寄りの役所で出生まで請求できる。法定相続情報一覧図にすれば写しは無料で使い回せる)
- 調査対象が複数の場合… 同じ被相続人について氏名と住所の組合せごとに1件と数え、2件目以降は1件1,100円を加算
- 該当がなくても費用はかかる
- 郵送のみ。結果は郵便局の代金引換(簡易書留)で届き、費用と引き換えに「登録済加入者情報通知書」を受け取る
- 結果が届くまで… 書類を受け付けてから約2か月(混雑しているため、と機構は説明しています)
分かるのは口座の開設先(証券会社・信託銀行など)までです。残高は、その結果をもとに各社へ直接問い合わせます。外国株式、国債、社債、機構が扱っていない非上場株式などは対象外です。
住所の組合せが1件ごとに数えられる点に気をつけてください。親が転居していて、昔の住所で口座を開いていた可能性があるなら、過去の住所も調査対象に入れる必要があります。その分、1,100円ずつ加算されます。

2か月は、相続放棄の3か月に食い込む
ここは期限の話です。
相続放棄の期限は、相続の開始を知った時から3か月です(民法第915条第1項)。ほふりの開示が2か月かかるなら、書類をそろえるのに1か月かかった時点で、期限ぎりぎりになります。
ネット上の資産は、あるか分からないまま3か月が過ぎやすい。事例2のように、コード決済の相続手続きで1か月たっても残高の回答がないこともあります。
決めきれない場合は、3か月が過ぎる前に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることができます。そして、調べている間は遺品を処分しないこと。処分すると単純承認とみなされることがあります(親の借金を調べる方法|信用情報3機関の開示は合計6,080円。ただし「載っていない」は「借金がない」ではない)。
注意:ネット銀行やコード決済の残高も相続財産です。見つかった資産は遺産分割の対象になり、相続税の計算にも入ります。
親が元気なうちにできること
国民生活センターは「デジタル終活」として4つの対策を挙げています。
- 万が一の際に家族がロックを解除できるようにしておく… 名刺大の紙にパスワードを書き、修正テープを2〜3回重ね貼りして隠しておく「スマホのスペアキー」を紹介しています。削った跡があれば、すぐにパスワードを変える
- サービス名・ID・パスワードを整理しておく… ネットの契約は、契約書面が紙ではなくメールで届くことが多く、家族が見つけにくい
- エンディングノートを使う… 法務省と日本司法書士会連合会がエンディングノートを無料で公開しています
- アカウントにアクセスできる人を指名しておく… AppleやGoogleは、アカウントの持ち主が亡くなった場合に誰が情報にアクセスできるかを設定できる仕組みを用意しています
親と一緒に、スマホに入っている銀行・証券・サブスクのアプリを書き出すだけでも、あとの手間が大きく変わります。財産と契約の一覧の作り方は生前整理は片付けから始めない|親が決められるうちに残す3つの書類にまとめました。
親のスマホとパソコンのこと、調べたので共有します。
- スマホのロックは、携帯ショップでも解除できません(初期化はできるけど、中身が消えます)。解約・下取り・処分はいったん止めたいです
- サブスクは解約しないと請求が続きます。でも契約先が分かれば、パスワードがなくても家族からの連絡で止められることが多いそうです
- なので、クレジットカードの明細と通帳の引き落としを数か月分見て、請求元を書き出したいです
- 株をやっていたか分からない場合は「ほふり」に開示請求できます(1件6,050円、結果まで約2か月)。相続放棄の3か月に間に合わせるなら早めに出したいです
よくある質問
解除してもらえないと考えてください。国民生活センターには、携帯電話会社の店舗でロック解除を頼んだところ「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われた相談が寄せられています。同センターは、パスワードが分からない場合に第三者がロック解除することは困難としています。初期化すると中身は消えるので、解約・下取り・処分の前に、明細や郵便物から契約先を探してください。
まず契約先を特定してください。国民生活センターは、ID・パスワードが分からなくても、契約先事業者が特定できれば、遺族から連絡することで解約等に応じてもらえるケースが多いとしています。請求元はクレジットカードの利用明細や携帯電話の請求に出てきます。サブスクは解約しない限り請求が続き、事業者は契約者の死亡を知る手段がありません。遺族から連絡する必要があります。
証券保管振替機構(ほふり)に開示請求できます。相続人が請求でき、費用は1件6,050円(法定相続情報一覧図のコピーを出せば4,950円)、2件目以降は1件1,100円です。該当がなくても費用はかかります。結果は郵送(代金引換)で、受付から約2か月かかると機構は案内しています。分かるのは口座の開設先までで、残高は各証券会社に問い合わせます。
契約先に相続の手続きを申し出ます。死亡の事実や相続人が確認できる書類(戸籍謄本など)を求められます。実店舗がない事業者は郵送でのやりとりになり、時間がかかることがあります。国民生活センターの事例では、コード決済の相続手続きで1か月たっても残高の回答がなかったものがあります。残高は相続財産なので、遺産分割と相続税の計算にも入ります。
頼むなら、スマホ・パソコン・タブレットと充電器は処分せず取り分けてもらってください。家電と一緒に回収や初期化に回ると、契約の手がかりが消えます。相続放棄を考えている場合は、遺品を処分すること自体に注意が必要です(民法第921条で単純承認とみなされることがあります)。借金や資産を調べ終わるまでは、処分を急がないでください。
スマホのロックを家族が解除できるようにしておくことと、契約の一覧を作ることです。国民生活センターは、名刺大の紙にパスワードを書いて修正テープで隠す「スマホのスペアキー」、サービス名・ID・パスワードの整理、エンディングノート(法務省と日本司法書士会連合会が無料公開)、AppleやGoogleのアカウントにアクセスできる人を指名する設定を挙げています。
出典
- 国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-」(2024年11月20日)
- 証券保管振替機構「【相続人(又は相続人の代理人)用】登録済加入者情報の開示請求に係るお手続について」(2026年8月版)
- 総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」(令和7年5月30日)
- 民法第915条第1項、第921条第1号

