片付け

親の借金を調べる方法|信用情報3機関の開示は合計6,080円。ただし「載っていない」は「借金がない」ではない

杉野 一樹

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親が亡くなって、実家を片付けようとしている。その前に、一つだけ確かめてください。親に借金がなかったかどうかです。相続放棄ができるのは、相続の開始を知った時から3か月以内。そして、遺品を処分すると、放棄できなくなることがあります。借金を調べる公的な窓口は、信用情報機関の3つです。この記事は、各機関の案内から手数料と手順を並べ、3つを調べても分からないことを先に書いておきます。

この記事で分かること
  • 信用情報機関は3つ。CIC 1,500円、JICC 2,177円、全国銀行個人信用情報センター2,403円で、3つ合わせて6,080円です。どれも郵送で、届くまで1週間から10日
  • 開示されるのは、各機関の加盟会社から登録された契約だけです。家族や知人からの借入れなど、加盟していない相手からの借金は出てきません
  • 相続放棄の期限は3か月。令和7年に家庭裁判所が受け付けた相続放棄の申述は32万3,524件でした。調べ終わる前に遺品を処分しないでください
実家じまいの5段階。お墓、仏壇・位牌、片付け、家をどうするか、解体。この記事は片付け
この記事は③片付けの、始める前に確かめる話です。

実家じまい全体の順番は実家じまいは何から始める?5つの段階と、かかるお金の全体像に、葬儀費用を故人の預金から払ってよいかは葬儀費用は誰が払い、どこまで引けるのか|故人の預金・相続税・相続放棄に書きました。

3か月の期限と、片付けてはいけない理由

期限は民法第915条第1項に書かれています。死亡届から相続登記までのほかの期限は親が亡くなったあとの手続きと期限の一覧|7日・14日の届出から、3か月・10か月・3年まで。取り返しがつかないのは3か月に並べました。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続を単純承認するか、限定承認するか、放棄するかを決めなければなりません。何もしないまま3か月が過ぎると、単純承認したものとして扱われ、借金も含めて引き継ぐことになります。

ただし、この期間は家庭裁判所に申し立てて伸ばしてもらうことができます(同項ただし書き)。調べきれない場合の道です。

もう一つ、片付けで気をつけることがあります。民法第921条第1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています(保存行為などは除かれます)。

実家の家財も、親の相続財産です。価値のある家具や車を売ったり、形見分けで持ち帰ったりすると、処分にあたるおそれがあります。そうなると、あとから借金が見つかっても放棄できなくなりかねません。

だから順番はこうなります。

  1. 借金を調べる(この記事)
  2. 承認するか放棄するかを決める(3か月以内。足りなければ期間の伸長を申し立てる)
  3. 承認すると決めてから、遺品を片付ける

令和7年に家庭裁判所が受け付けた相続放棄の申述は、32万3,524件でした(最高裁判所「司法統計年報 家事編」)。年に30万件を超える人が、放棄を選んでいます。

親が亡くなってから3か月の借金を調べる順番のタイムライン。3機関に申し込む、報告書が届く、期間の伸長、相続放棄の期限
3か月のうち、最初の1か月で調べ終えます。

信用情報機関は3つ。手数料は合計6,080円

日本には、個人の借入れやクレジットの契約を記録している信用情報機関が3つあります。それぞれ加盟している会社の種類が違うので、1つだけ調べても足りません。

  • CIC(株式会社シー・アイ・シー)… 1,500円。主にクレジット会社など
  • JICC(株式会社日本信用情報機構)… 2,177円(税込、速達は2,511円)。主に消費者金融など
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC、一般社団法人全国銀行協会)… 2,403円(開示手数料2,060円+発券手数料343円)。主に銀行など

3つ合わせて6,080円です。どれもコンビニで買う利用券(CICは定額小為替証書でも可)で払います。

どれも郵送が基本です。CICは窓口サービスを2023年2月28日で終えています。届くまでは各機関とも1週間から10日ほどで、本人限定受取郵便で届きます。3つ同時に出せば、2〜3週間で手元にそろいます。

注意:3か月の期限から逆算してください。戸籍を取り寄せるのにも日数がかかります。亡くなってから1か月以内に3機関へ出すのが目安です。

誰が請求できるか

3機関とも、相続人が亡くなった人の情報を請求できます。ただし、範囲が少しずつ違います。

  • CIC… 法定相続人(CICは「法定相続人による手続きにより亡くなった方の開示申込みができます」としています)
  • JICC… 法定相続人または2親等以内の血族。委任を受けた弁護士・司法書士も可
  • 全国銀行個人信用情報センター… 法定相続人。第一順位は配偶者と子、第二順位は父母・祖父母、第三順位は兄弟姉妹の順

JICCだけ「2親等以内の血族」にも開いています。相続を放棄した子の代わりに次の順位の相続人が調べる、という場面ではこの違いが効きます。

そろえる書類

機関ごとに細部は違いますが、共通して要るのは次の3種類です。

  • 亡くなったことが分かる書類… 死亡の記載のある戸籍謄本、または法定相続情報一覧図(JICCは「死亡が確認できる法定相続情報一覧図または戸籍謄本」の原本としています)
  • 請求する人が相続人(続柄)であることが分かる書類… 戸籍謄本など
  • 請求する人の本人確認書類… 全国銀行個人信用情報センターは2種類、JICCは2点(原本とコピーの組み合わせ)

戸籍は原本を求める機関があり、送った書類は返ってきません。3機関に出すなら、戸籍を3通取るか、法定相続情報一覧図を使うのが早い。法定相続情報一覧図は法務局で無料で何通でも交付されるので、銀行や相続登記でも使い回せます。戸籍の集め方と一覧図の作り方は親の戸籍の集め方|2024年からは最寄りの役所で出生まで請求できる。法定相続情報一覧図にすれば写しは無料で使い回せるに書きました。

注意:開示報告書は、申込書に書いた現住所へ本人限定受取郵便で届きます。住民票や印鑑登録証明書に載っている住所と申込書の住所が一致していないと、受け付けてもらえません。

載っていないことは、借金がないことではない

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

信用情報機関が開示するのは、その機関に加盟している会社が登録した情報です。CICは、開示で分かるのは「CICの加盟会員であるクレジット会社等から登録された」契約の内容、支払状況、残債額などだとしています。

つまり、加盟していない相手からの借入れは、3機関のどこにも出てきません。

  • 家族や知人、取引先からの借入れ
  • 加盟していない業者からの借入れ

3機関で「登録なし」と返ってきても、それは「加盟会社との契約はない」という意味です。借金がない、という証明ではありません。

だから、実家の中を見る作業が要ります。ただし、処分ではなく探すだけです。

書類は捨てずに、箱に入れて保管しておいてください。見つかった借金の相手と金額が分かれば、承認するか放棄するかを数字で比べられます。

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借金の有無を確かめて相続すると決めたあとなら、遺品整理を業者にまとめて頼めます。見積もりの段階で、書類や郵便物は処分せず取り分けてほしいと伝えてください。

3か月で決めきれないとき

調べても分からない、あるいは報告書が期限に間に合わない。そういうときの手続きがあります。

民法第915条第1項ただし書きは、この3か月の期間を、利害関係人などの請求によって家庭裁判所が伸長できると定めています。相続人が家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てる形です。

申し立ては、3か月が過ぎる前にしてください。過ぎてからでは、期間を伸ばすことはできません。

もう一つの選択肢が限定承認です。相続で得た財産の範囲でだけ借金を払う、という承認のしかたです。ただし相続人全員でそろって申述する必要があり、手続きも重い。借金の額がどうしても分からない場合の選択肢として、専門家に相談してください。限定承認で実家を残す流れと税金の注意は借金があっても実家を残せる「限定承認」|放棄32万件に対し637件。相続人全員の同意と、実家を買い取るお金が要るに書きました。

注意:相続放棄をすると、実家も含めて一切の財産を受け取れません。そして放棄しても、実家を現に占有している場合は、次の相続人などに引き渡すまで保存の義務が残ることがあります(相続した空き家を放置すると|「管理不全空家」の判断基準と、年に何をすればいいか)。放棄したあと実家が誰に移るかは相続放棄したら実家はどうなるか|放棄の申述は年32万3,524件。住んでいた人は、引き渡すまで管理が残るに書きました。土地だけを手放したいなら、別の制度もあります(実家の土地を国に引き取ってもらえるか|申請5,997件に対し帰属3,119件。建物があると申請すらできない)。

実家の遺品を片付ける前に確かめる3つの質問の判断チャート
3つそろうまで、遺品に手を付けないでください。

親が生きているうちなら

本人が開示を請求できます。3機関とも、本人は郵送などで自分の情報を確かめられます(CICとJICCはインターネットやスマートフォンでの手続きも用意しています)。

親と一緒に確かめておけば、あとで3か月に追われずに済みます。財産と契約の一覧を本人に書き残してもらう方法は生前整理は片付けから始めない|親が決められるうちに残す3つの書類にまとめました。

注意:本人以外は請求できません。CICは「信用情報の開示請求はプライバシーや個人情報保護の観点から、ご本人以外の方からのお申込みは受け付けておりません」としています。親の同意なく子が調べることはできないので、話をするしかありません。

家族に送る用(コピーしてLINEへ)

実家を片付ける前に、確かめておきたいことがあります。

  • 相続放棄の期限は、亡くなったのを知ってから3か月です。遺品を売ったり持ち帰ったりすると、放棄できなくなることがあります
  • 借金は信用情報機関3つ(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)に相続人が請求して調べます。手数料は合計6,080円、郵送で1週間から10日です
  • ただし、そこに載るのは加盟している会社との契約だけです。家族や知人からの借金は出てきません
  • なので、郵便物や通帳、契約書は捨てずに箱に取っておいてください
  • 3つの報告書がそろうまで、片付けは待ちたいです。戸籍を取るのを手伝ってもらえますか

よくある質問

よくある質問①

亡くなった親の借金は、どこで調べられますか

信用情報機関3つに、相続人が開示を請求します。CIC(手数料1,500円)、JICC(2,177円)、全国銀行個人信用情報センター(2,403円)で、合計6,080円です。加盟している会社の種類が違うので、3つとも請求してください。どれも郵送が基本で、届くまで1週間から10日ほど。亡くなったことが分かる戸籍と、請求する人が相続人であることが分かる戸籍、本人確認書類が要ります。

よくある質問②

3つとも「登録なし」なら、借金はないと考えていいですか

言い切れません。信用情報機関が開示するのは、加盟している会社から登録された契約です。家族や知人、取引先からの借入れのように、加盟していない相手からの借金は出てきません。実家の郵便物、通帳の記録、契約書・借用書、税金の督促などを探して、心当たりがないか確かめてください。書類は捨てずに保管しておくと、あとで比べられます。

よくある質問③

調べている間に、遺品を片付けてもいいですか

待ったほうが安全です。民法第921条第1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています(保存行為などは除く)。価値のある家具や車を売る、形見分けで持ち帰る、といった行為は処分にあたるおそれがあります。そうなると、あとから借金が見つかっても放棄できなくなりかねません。借金を調べて、承認すると決めてから片付けてください。

よくある質問④

相続放棄の期限はいつまでですか

相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法第915条第1項)。この間に、単純承認・限定承認・放棄のどれにするかを決めます。何もしないまま3か月が過ぎると、単純承認したものとして扱われます。調べきれない場合は、3か月が過ぎる前に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることができます。令和7年に家庭裁判所が受け付けた相続放棄の申述は32万3,524件でした。

よくある質問⑤

兄弟でも請求できますか

機関によって範囲が違います。全国銀行個人信用情報センターは法定相続人に限り、第一順位は配偶者と子、第二順位は父母・祖父母、第三順位は兄弟姉妹の順です。JICCは法定相続人に加えて2親等以内の血族も請求できます。CICは法定相続人による手続きとしています。子が相続を放棄して兄弟姉妹が相続人になった場合などは、この違いを確かめてから申し込んでください。

よくある質問⑥

親が生きているうちに調べられますか

本人なら請求できます。3機関とも、本人は郵送などで自分の情報を開示できます。ただし、本人以外は請求できません。CICは「ご本人以外の方からのお申込みは受け付けておりません」としています。親と話して、一緒に確かめるのがいちばん確実です。借入れの有無だけでなく、財産と契約の一覧も書き残してもらうと、亡くなったあとの3か月が楽になります。

出典

  • CIC「郵送で開示する」「よくあるご質問(亡くなった父の情報開示をすることはできるのでしょうか?ほか)」
  • JICC「二親等以内の血族 法定相続人等による開示」
  • 一般社団法人全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「郵送による開示手続」
  • 最高裁判所「司法統計年報 3 家事編 令和7年」第3表(相続の放棄の申述の受理:新受323,524件)
  • 民法第915条第1項、第921条第1号
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