親の準確定申告は要るか|年金だけなら多くは不要。ただし医療費が多かった年は戻ることがあり、戻ったお金は相続財産になる
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親が亡くなると、所得税の手続きも一つ残ります。準確定申告です。亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得を、相続人が代わりに申告します。期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内。ただ、年金だけで暮らしていた親なら、そもそも申告が要らないことが多いのも事実です。問題は、要らないからと放っておくと、戻るはずの税金を受け取り損ねることがある点です。この記事は、国税庁の資料から、申告が要る場合・要らない場合・したほうがいい場合を分けて整理します。
- 期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内。相続人が申告し、複数いれば連署か各人で提出します
- 公的年金の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら、確定申告は要りません。年金だけの親は、ここに入ることが多い
- それでも、亡くなるまでに払った医療費が多ければ、申告すると税金が戻ることがあります。国税庁は、その還付金を相続財産として扱うとしています

年金の未支給分の請求は親の未支給年金は、別居の子でも受け取れる|決め手は「生計同一」の申立書。仕送りの通帳や施設の領収書が証明になるに、借金の調べ方と相続放棄の3か月は親の借金を調べる方法|信用情報3機関の開示は合計6,080円。ただし「載っていない」は「借金がない」ではないに書きました。
準確定申告は、相続人が4か月以内に出す
国税庁のタックスアンサーNo.2022に、中身がまとまっています。
- 誰が… 相続人(包括受遺者を含む)
- 何を… 1月1日から死亡した日までに確定した所得金額と税額
- いつまでに… 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、申告と納税
- 相続人が複数なら… 連署で1通を出すか、各人が別々に出す
期限が短いことに気をつけてください(ほかの期限も含めた一覧は親が亡くなったあとの手続きと期限の一覧|7日・14日の届出から、3か月・10か月・3年まで。取り返しがつかないのは3か月)。相続放棄は3か月、準確定申告は4か月、相続税は10か月。亡くなってから半年のあいだに、期限が3つ並びます。相続税の申告は、実家の土地の特例を使うなら、税額がゼロになっても必要です(実家の土地の相続税が8割減る「小規模宅地等の特例」|別居の子は「家なき子」の6要件。10か月の申告期限まで売らない)。実家じまい全体の期限の一覧は実家じまいは何から始める?5つの段階と、かかるお金の全体像にまとめました。

年金だけの親なら、申告は要らないことが多い
ここが最初の分かれ目です。
国税庁のタックスアンサーNo.1600は、公的年金を受けている人の「確定申告不要制度」を説明しています。
その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下なら、確定申告の必要はありません。
年金だけで暮らしていた親は、ここに入ることが少なくありません。年金の額は源泉徴収票で確かめられます。アパート収入や事業収入がなければ、年金以外の所得は20万円以下に収まることが多いはずです。
年金からは、所得税があらかじめ引かれています。同じNo.1600は、公的年金等からは、収入金額から一定の控除額を差し引いた額に5.105パーセントを掛けた金額が源泉徴収されるとしています。つまり、税金は年金を受け取る時点で、ある程度払い済みです。
注意:不要制度に入らない親もいます。年金が400万円を超えていた、実家とは別に貸家を持っていて家賃収入があった、株の配当や売却益があった、という場合です。このときは準確定申告が必要です。

要らなくても、申告すると税金が戻ることがある
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
No.1600は、確定申告不要制度に当てはまる人でも「医療費控除や社会保険料控除など各種の所得控除の適用による所得税の還付を受けるための確定申告をすることができます」としています。
年金から税金が引かれているのに、その年の医療費控除などは計算に入っていません。だから、控除を使って計算し直すと、引かれすぎた分が戻ってくることがあります。
亡くなる前の年に入院や通院が多かった親は、ここに当てはまりやすい。
医療費控除の計算は、国税庁のタックスアンサーNo.1120に書かれています。
- 控除額=(実際に支払った医療費−保険金などで補てんされる金額)−10万円
- ただし、総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5パーセント
総所得金額等が200万円未満なら、10万円より低いところから控除が始まります。たとえば総所得金額等が150万円なら、その5パーセントは7万5,000円です。医療費がそれを超えていれば、控除の対象になります。
注意:準確定申告で使える医療費は、亡くなった日までに親が支払った分だけです。No.2022は、医療費控除や社会保険料控除の対象を「死亡の日までに被相続人が支払った」ものに限っています。亡くなったあとに子が払った入院費は、親の準確定申告では控除できません。
戻った還付金は、相続財産になる
ここは見落とされやすい点です。
国税庁の質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」は、準確定申告で戻った税金(還付金)について、こう回答しています。
還付金請求権は相続財産であり、相続税の課税の対象となる。被相続人の死亡後に発生するとしても、生存中に潜在的な請求権が被相続人に帰属しており、死亡によって顕在化したものと考えられる、という理由です。
一方で、還付金に付く「還付加算金」は、相続人が申告書を出したことで取得するものとされ、相続税ではなく所得税(雑所得)の対象とされています。
実家じまいとの関係で言えば、2つのことが起きます。
- 遺産分割の対象になる… 還付金は親の財産なので、誰が受け取るかは相続人どうしで決めることになります。葬儀費用のように相続税から引けるものとの違いは葬儀費用は誰が払い、どこまで引けるのか|故人の預金・相続税・相続放棄に書きました
- 相続放棄との関係… 還付金は相続財産です。放棄を考えている人が受け取ると、相続財産の処分にあたるおそれがあります。放棄を考えているなら、準確定申告と還付金の受け取りをどうするか、先に専門家に確かめてください。限定承認を選ぶと、実家の値上がり益に親の所得税がかかることもあります(借金があっても実家を残せる「限定承認」|放棄32万件に対し637件。相続人全員の同意と、実家を買い取るお金が要る)
No.2022は、還付金を相続人の代表者などが受け取るには、付表とは別に「還付金の受領に関する委任状」が必要だとしています。代表者が受け取ったあとで分ける形です。
申告に使う書類は、実家の中にある
準確定申告に要る書類の多くは、実家の片付けの途中で出てきます。
- 公的年金等の源泉徴収票… 年金の収入と引かれた税額が書かれています。亡くなった年の分の受け取り方は、年金事務所に確かめてください
- 医療費の領収書… 病院・薬局の領収書。医療保険者から届く「医療費のお知らせ」も使えます(No.1120)
- 介護保険料・国民健康保険料の通知… 社会保険料控除に使います
- 生命保険・地震保険の控除証明書
- 亡くなった年の収入が分かるもの… 家賃収入の通帳、配当の通知など
これらは、ごみと一緒に捨ててしまいやすい書類です。実家の郵便物は、開けずに捨てず、一か所に集めておいてください。借金の督促状も同じ箱に入れておけば、相続放棄の判断にも使えます。
注意:親の扶養に入っていた家族がいる場合も、判定は亡くなった日で行います。No.2022は、配偶者控除や扶養控除などの適用の有無は「死亡の日の現況」で判定し、月割りはしないとしています。
保険証や資格確認書を役所へ返すときに、葬祭費の申請も一緒に済ませられます。額は自治体で違います(葬儀費用の補助金「葬祭費」は2万円から7万円|47都道府県の後期高齢者医療と、政令市・東京23区の国保を公式ページで比べた)。
親の税金(準確定申告)のこと、調べたので共有します。
- 亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得税を、相続人が代わりに申告する手続きがあります。期限は亡くなったのを知った翌日から4か月です
- ただ、年金が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら、申告はしなくていいことになっています
- それでも、亡くなるまでに払った医療費が多ければ、申告すると税金が戻ることがあります
- 戻ったお金は親の財産(相続財産)として扱われます。相続放棄を考えているなら、受け取る前に確かめたいです
- 源泉徴収票や医療費の領収書は捨てずに取っておいてください
よくある質問
多くの場合は不要です。国税庁は、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下なら、確定申告の必要はないとしています(No.1600)。ただし、その場合でも、医療費控除や社会保険料控除などで所得税の還付を受けるための申告はできます。亡くなる前に医療費が多かった親なら、申告すると税金が戻ることがあります。
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(No.2022)。1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人が申告と納税をします。相続人が複数なら、連署で1通を出すか、各人が別々に出します。相続放棄の3か月、相続税の10か月と期限が近いので、まとめて予定を立ててください。
亡くなった日までに親が払った分だけです。国税庁は、準確定申告の医療費控除や社会保険料控除の対象を「死亡の日までに被相続人が支払った」ものに限っています。亡くなったあとに子が払った入院費は、親の準確定申告では控除できません。控除額は、支払った医療費から保険金などで補てんされる額を引き、さらに10万円(総所得金額等が200万円未満なら総所得金額等の5%)を引いた額です。
亡くなった親の相続財産です。国税庁の質疑応答事例は、準確定申告の還付金請求権は相続財産であり、相続税の課税対象になるとしています。遺産分割で誰が受け取るかを決めることになります。一方、還付金に付く還付加算金は、相続人が申告したことで取得するものとして、所得税(雑所得)の対象とされています。代表者が受け取る場合は、還付金の受領に関する委任状が必要です。
先に専門家に確かめてください。準確定申告をするのは相続人で、戻った還付金は相続財産として扱われます。相続放棄を考えている人が還付金を受け取ると、相続財産の処分にあたるおそれがあります。放棄するかどうかを決める前に、準確定申告の要否と還付金の扱いをまとめて、家庭裁判所や税理士に相談するのが安全です。
公的年金等の源泉徴収票、医療費の領収書(または医療保険者からの「医療費のお知らせ」)、社会保険料の通知、生命保険料などの控除証明書が中心です。亡くなった年の源泉徴収票の受け取り方は年金事務所に確かめてください。どれも実家の郵便物の中に紛れやすく、片付けで捨ててしまいやすい書類です。郵便物は開けずに捨てず、一か所に集めておいてください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
- 国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」
- 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(令和8年4月1日現在)
- 国税庁 質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」(令和7年8月1日現在)

