お墓

海洋散骨は違法なのか|法律に無いから、国のガイドラインで見る

杉野 一樹

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墓じまいのあと、遺骨を海へ還したいと考える人がいます。ただ「そんなことをして大丈夫なのか」という不安が先に立ちます。

この記事で分かること
  • 違法ではありません。東京都は「墓地埋葬法においてこれを禁止する規定はない」との国の見解を示しています
  • ただし法律に規定もありません。許可も届出も無いかわりに、国のガイドラインが実質のルールです
  • 業者はガイドラインの項目で選べます。約款の公表、文書での契約、費用の明細書、散骨証明書が目安です
実家じまいの5段階。お墓、仏壇・位牌、片付け、家をどうするか、解体。この記事はお墓
この記事は①お墓の中の、納め先を決める話です。

実家じまい全体の流れと、先に確かめる期限は実家じまいは何から始める?5つの段階と、かかるお金の全体像にまとめています。

先に、海洋散骨の案内を見たい人はこちら

シーセレモニーの海洋散骨プランと料金を見る

違法ではない。ただし法律に規定もない

まず、いちばん多い不安から書きます。

東京都は散骨について、「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない」という国の見解を示しています。そのうえで「散骨は『墓地、埋葬等に関する法律』に規定されていない行為であるため、法による手続きはありません」としています。

横浜市も同じ立場です。「散骨するにあたり現行の法令上の許可手続は必要ありません」と案内しています。

つまり、禁止もされていないが、認める規定も無いという状態です。許可も届出も要らないかわりに、守るべき基準が法律の中にありません。

これが散骨の難しさです。業者ごとにやり方が違っても、それを止める法律の仕組みが無いということでもあります。

国のガイドラインが、実質のルール

そのすき間を埋めているのが、国の研究事業でまとめられたガイドラインです。

令和2年度の厚生労働科学特別研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」の報告書に、「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」が収められています。目的は「散骨が関係者の宗教的感情に適合し、かつ公衆衛生等の見地から適切に行われること」とされています。

ここで散骨は、次のように定義されています。

墓埋法に基づき適法に火葬された後、その焼骨を粉状に砕き、墓埋法が想定する埋蔵又は収蔵以外の方法で、陸地又は水面に散布し、又は投下する行為

「粉状に砕く」ことが定義に入っています。遺骨をそのまま撒く行為は、この定義の散骨にあたりません。ガイドラインは焼骨の形状について「その形状を視認できないよう粉状に砕くこと」と明記しています。

場所についても決められています。

  • 陸上… あらかじめ特定した区域。河川及び湖沼を除く
  • 海洋… 海岸から一定の距離以上離れた海域(地理条件や利用状況を踏まえて適切な距離を設定する)

自然環境への配慮も求められています。プラスチックやビニールを原材料とする副葬品を投下するなど、自然環境に悪影響を及ぼす行為は行わないこととされています。

散骨業者を国のガイドラインの項目で選ぶチェックリスト
許可も届出も無いので、選ぶ基準が要ります。

業者は、ガイドラインの項目で選ぶ

許可制ではないので、資格や登録番号で見分けることができません。その代わり、ガイドラインが事業者に求めている項目を、そのまま確認の材料に使えます。

契約について、次のことが求められています。

  • 約款の整備と公表。「あらかじめ散骨に関する契約内容を明記した約款を整備し、公表する」
  • 文書による契約。「散骨に係る契約の方法は、文書によること」
  • 費用の明細書。「費用に関する明細書を契約書に添付すること」
  • 解約への対応。約款に定めるところにより、利用者の解約の申し出に応じること
  • 散骨証明書の交付。「散骨を行ったことを証する散骨証明書を作成し、利用者に交付すること」

実施状況についても求めがあります。散骨の件数と場所を年度ごとにまとめ、自社のホームページ等で公表することとされています。

この5つ6つを聞くだけで、かなり絞れます。約款が公表されていない、口約束で進む、総額しか示されない、証明書が出ない。どれかが当てはまれば、ガイドラインが求める水準に届いていません。

注意:ガイドラインに法的な強制力はありません。守らなくても罰則はありません。だからこそ、守っているかどうかが業者を見分ける材料になります。

海洋散骨で決めておくことを3つの質問で確かめる判断チャート
撒いたあとでは戻せません。

戻せないことが、最大のデメリット

遺骨は返ってきません。これが散骨の性質です。

考えておくべきことは3つあります。

1つ目は、親族の同意です。あとから「聞いていない」と言われても、遺骨は取り戻せません。撒く前に、範囲を決めて伝えてください。きょうだい、親の兄弟姉妹、配偶者の親族まで、誰に伝えるかを決めておくと揉めにくくなります。

2つ目は、手を合わせる場所が無くなることです。海は広く、命日にそこへ行くには船が要ります。高齢の家族が毎年行けるかを考えてください。「遠くて通えない」を理由に墓じまいをした人が、次に選んだ場所もまた行けない、というのでは同じことの繰り返しです。

3つ目は、一部を残す選択があることです。全部を撒く必要はありません。分けて、一部を手元供養や納骨堂に納める方法があります。手を合わせる場所を残しつつ、お墓の管理からは離れられます。自宅で保管することの法律上の扱いと、分骨証明書の取り方は手元供養は違法なのか|自宅に置くのは自由、庭に埋めると違反にまとめました。

墓じまいの理由の1位は「お墓が遠方にある」で52.0パーセントでした。鎌倉新書が2026年に733人へ行った調査です。通える距離かどうかは、方式より先に考える材料になります。

自治体の条例で制限している地域がある

法律には無くても、条例にはあります。

散骨を規制する条例を設けている自治体があります。墓地以外の場所への散骨を禁止しているところ、事前の届出や市長の承認を求めているところなど、内容はさまざまです。一般財団法人地方自治研究機構は、2026年4月1日時点で16件を確認しています。北海道、宮城県、長野県、埼玉県、神奈川県、静岡県、愛媛県、熊本県、鹿児島県の市町村です。

海洋散骨の場合、撒く海域を管轄する自治体の扱いを確認してください。東京都も「地元の自治体に確認することをお勧めします」としています。東京湾・相模湾で撒く場合の自治体のルール(三浦市の条例、熱海市の10km・伊東市の6海里)と、家族を乗せる船に要る許可・登録は東京・神奈川で海洋散骨をするなら|許可が要るのは船のほう。運輸局の許可・登録と、三浦市・熱海市・伊東市の海のルールにまとめました。

業者に任せる場合でも、どこで撒くのかは聞いてください。「沖合」とだけ言われたら、具体的にどのあたりかを確かめます。ガイドラインは「海岸から一定の距離以上離れた海域」としており、その距離は地理条件や利用状況を踏まえて設定するものとされています。

墓じまいと組み合わせるとき

散骨は改葬にあたりません。

墓地、埋葬等に関する法律の第2条第3項は、改葬を「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定義しています。散骨の場合、移す先が墳墓でも納骨堂でもないため、この定義に当てはまりません。

そのため、市区町村の改葬許可は要らないという扱いになります。

ただし、お墓から遺骨を取り出す作業そのものには、墓地の管理者との調整が必要です。黙って持ち出すことはできません。寺や霊園に事情を伝え、閉眼の法要や撤去工事の段取りを組んでください。

自治体によって案内が違うことがあります。手続きの全体像は墓じまいの手続きはどこへ出す?改葬許可の流れと必要書類にまとめています。窓口で「散骨するので改葬許可は要りますか」と聞くのが確実です。実際に、神奈川県三浦市は「すでにお墓に埋葬しているご遺骨を取り出して散骨する場合は、改葬許可申請が必要です」と案内しています。東京都も「散骨のために取り出す場合は、区市町村により取扱いが異なります」としています。

沖縄の古い墓では、火葬されていない遺骨が出てくることがあり、移す前に火葬し直します。那覇市の火葬場が改葬の遺骨の受け入れを止めた時期もありました(沖縄・那覇で墓じまいするなら|改葬は全国の約3倍。那覇市民共同墓は1体3万円で随時受付、個人の墓は「地図」で申請できる)。

費用の考え方

散骨の料金に公的な統計はありません。業者が公表している料金体系はおおむね3つに分かれます。

  • 個別散骨… 1組で船を借り切る形。乗る人数が定員内なら料金が変わらないのがふつうです
  • 合同散骨… 複数の家族が同じ船に乗る形。大きな船を使うので、小型船の貸し切りより高いこともあります
  • 代行散骨… 業者に託し、立ち会わない形。最も安くなります

一例として、東京都港区の海洋散骨業者シーセレモニーが公表している料金は、代理散骨が税込5万5,000円から、貸し切りのファミリー散骨が15万4,000円から、合同乗船が17万6,000円からです(2026年9月時点)。この業者は、散骨証明書を送ることと、国のガイドラインに沿って行うことをサイトに明記しています。

金額だけで比べないでください。含まれるものが違います。粉骨の作業が料金に入っているか、乗船できる人数は何人か、散骨証明書は出るか、記念の写真や動画はあるか。費用の明細書を出してもらえば、比べられます。

墓じまい全体の費用は墓じまいの費用はいくら?実際に払った733人の分布と高くなる3つの条件にまとめています。総額を最も動かすのは次の納め先で、散骨は選択肢の中では低い部類に入ります。

シーセレモニーの海洋散骨プランと料金を見る

「業者は、ガイドラインの項目で選ぶ」で挙げた約款の公表・文書契約・費用明細書・散骨証明書の4つを、申し込む前に確かめてください。問い合わせても契約の義務はありません。

他の方式と迷っているなら

散骨は、遺骨を残さない方式です。ここが他と決定的に違います。

「戻せるか」で並べると、散骨がいちばん先にあります。迷っているなら、一部を残す方法を検討してください。分けて納めることは、どの方式でもできます。

家族に送る用(コピーしてLINEへ)

海洋散骨のこと、調べたので共有します。

  • 海洋散骨は違法ではありませんが、法律に決まりもありません。許可も届出も要りません
  • 実際のルールは国のガイドラインで、遺骨を粉状にすること、海岸から離れた海でまくことなどが書かれています
  • 業者は、約款を公表しているか、文書で契約するか、費用の明細書と散骨証明書が出るかで選びます
  • まいたら戻せないので、親戚にも先に伝えておきたいです。どう思いますか

よくある質問

よくある質問①

海洋散骨は違法ですか

違法ではありません。東京都は「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない」との国の見解を示しています。ただし法律に規定も無いため、許可や届出の仕組みもありません。自治体の条例で制限している地域があるので、撒く海域の自治体に確認してください。

よくある質問②

遺骨をそのまま撒いてもいいですか

いけません。国のガイドラインは、焼骨について「その形状を視認できないよう粉状に砕くこと」としています。粉骨の作業が業者の料金に含まれているかを確認してください。含まれていない場合、別に費用がかかります。

よくある質問③

自分で船を出して撒いてもいいですか

法律上は禁止されていませんが、場所と方法の判断を自分で負うことになります。海岸からの距離、漁業者への影響、条例の有無を自分で確かめる必要があります。まず自治体に確認してください。業者に頼めば、その判断も含めて任せられます。

よくある質問④

全部を撒かないといけませんか

いいえ。分けて、一部を手元供養や納骨堂に納める方法があります。手を合わせる場所を残したい家族がいる場合は、この形が現実的です。業者に「分骨したい」と伝えれば対応してもらえます。

よくある質問⑤

あとから遺骨を取り戻せますか

取り戻せません。これが散骨の最も戻せない点です。親族の中に迷っている人がいる場合は、撒く前に必ず話し合ってください。判断がつかないうちは、納骨堂などに一時的に預けるという選び方もできます。

出典

  • 令和2年度厚生労働科学特別研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」研究報告書「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」
  • 東京都保健医療局「散骨に関する留意事項」
  • 横浜市「散骨するにあたっての手続について」
  • 墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第2条第3項
  • 鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」2026年1月(有効回答733件)
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