共有の実家は壊すのに全員の同意|貸すのは過半数、直すのは1人。相続から10年で使える手が増える
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親が亡くなって、実家をきょうだいの共有にした。あるいは、分け方が決まらないまま共有になっている。そのあと動かなくなるのは、何をするかによって必要な同意が違うからです。壊すには全員の同意が要りますが、貸すのは過半数で決められ、直すのは1人でできます。この記事は、民法の条文から、共有の実家で何がどこまでできるのかを整理します。
- 解体と売却は共有者全員の同意(民法251条1項)。1人でも欠けると進みません
- 3年以内で貸すのは持分の価格の過半数(252条1項・4項)。修繕や草刈りは1人でできます(252条5項)
- 連絡が取れない共有者がいるときの裁判が3つあります。ただし相続開始から10年を過ぎないと使えないものがあります

そもそも共有にするかどうかは、遺産分割の段階の話です(実家しかない相続ほど、分け方で止まる|家庭裁判所で決まった遺産分割の35%は遺産1,000万円以下。7割で代償金)。この記事は、すでに共有になっている場合の話です。
やることで、要る同意が変わる
民法は、共有物への行為を3つに分けています。

1つ目は「変更」です。251条1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない」としています。
解体や建替えは、ここに当たります。実家を壊すには、共有者全員の同意が要ります。売却も、共有物全部を処分するので全員です。
2つ目は「管理」です。252条1項は「共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する」としています。
ここで注意したいのは、頭数ではなく持分の価格の過半数だという点です。きょうだい3人でも、1人が2分の1を持っていれば、その1人の賛成がないと過半数に届かないことがあります。
貸すことも管理に入りますが、期間の上限があります。252条4項です。
- 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等… 10年
- それ以外の土地の賃借権等… 5年
- 建物の賃借権等… 3年
- 動産の賃借権等… 6か月
つまり、実家を3年以内で貸すなら過半数で決められます。空き家のまま持つより貸したい、という話は共有でも進みます。定期借家の使い方は実家を貸すなら定期借家で|借り手を募集した空き家のうち、1年あまりで貸せたのは約5軒に1軒に書きました。
3つ目は「保存行為」です。252条5項は「各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる」としています。雨漏りを直す、草を刈る、不法に占有している人に出ていくよう求める。こうしたことは1人でできます。
そして、自分の持分だけを売ることも1人でできます。持分は各自のものだからです。ただし、他人と共有になる物件を買う人は限られるので、値段は付きにくくなります。
持分だけを買い取る業者もあります。ワケガイは、買取の対象に共有持分・共有名義を明記している業者の一つで、査定は無料です。持分を売ると、買った業者が新しい共有者になります。使う前に、ほかの共有者に伝えておくほうが揉めません。
壊せないまま、費用だけが進む
この線引きが、実家じまいで重くのしかかります。「とりあえず貸す」は過半数でできるのに、「壊す」は1人でも欠けると進みません。
その間も、費用と期限は動き続けます。
- 固定資産税は、1月1日の所有者に毎年かかります(親が亡くなった後の実家の固定資産税|払うのは相続人。登記が3か月で終わらないなら「現所有者申告」を出す)
- 管理を怠ると「管理不全空家」として勧告を受け、住宅用地の特例が外れることがあります(相続した空き家を放置すると|「管理不全空家」の判断基準と、年に何をすればいいか)
民法は、費用を払わない共有者への手も置いています。253条2項です。
「共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。」
固定資産税や管理費を1人で立て替え続けている人にとって、条文上の出口はここにあります。
連絡が取れない共有者がいるとき
共有者の1人が所在不明、というのは珍しくありません。代が変わって、いとこの子まで共有者になっていることもあります。
令和5年4月1日施行の改正で、裁判所を使う道が3つできました。

1つ目は、変更を進める裁判です。251条2項により、他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所が「その者以外の同意で変更を加えることができる」旨の裁判をできます。
2つ目は、管理を決める裁判です。252条2項は、2つの場合を挙げています。
- 一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
- 二 相当の期間を定めて賛否を明らかにすべき旨を催告したが、その期間内に賛否を明らかにしないとき
2号が効きます。所在は分かっているけれど返事をしない、という共有者を、催告のうえで除いて過半数を数えられます。連絡はつくのに話が進まない場合の手です。
3つ目は、持分そのものを動かす裁判です。
- 262条の2… 所在等不明共有者の持分を取得する裁判。請求した共有者が2人以上なら、持分の割合で按分します
- 262条の3… 所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡する権限を付与する裁判。ほかの共有者全員が同じ相手に持分の全部を譲渡することが条件です
262条の3は、実家をまるごと第三者に売りたいときのための道です。ただし、どちらの裁判でも、所在等不明共有者はあとから時価相当額の支払を請求できます(262条の2第4項、262条の3第3項)。お金の問題が消えるわけではありません。
相続から10年で、使える手が変わる
ここが見落とされやすいところです。持分が相続財産で、共同相続人の間で遺産分割をすべき場合には、10年という条件が付きます。
- 262条の2第3項… 相続開始の時から10年を経過していないときは、持分を取得する裁判をできない
- 262条の3第2項… 譲渡権限を付与する裁判も同じ
- 258条の2第2項… 相続開始の時から10年を経過したときは、相続財産に属する共有物の持分について共有物分割の訴えができる
つまり、相続開始から10年より前は、まず遺産分割で決着をつけるしかない場面があります。共有物分割の訴えで一気に片付ける、という進め方は取れません。
一方で、10年を過ぎると別の効果も出ます。遺産分割で具体的相続分(生前にもらった分や貢献した分)を主張しにくくなります。10年は、裁判所を使う道が開く日であると同時に、主張できることが減る日でもあります。
注意:分割の請求そのものは、256条1項によりいつでもできます。ただし5年を超えない期間で「分割をしない」と契約することは妨げられません(更新もできますが、更新時から5年までです)。
話がつかないときの、裁判所の分け方
協議が調わないときは、258条により裁判所に分割を請求できます。裁判所が命じられる方法は決まっています。
- 現物分割… 共有物の現物を分割する
- 賠償分割… 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる
- それができないとき、または分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるときは、競売
実家のような一軒の建物は、現物で切り分けられません。だから実務では、誰か1人が取得して他に代償金を払う賠償分割か、競売になります。競売は市場より安くなりやすいので、競売まで行く前に売って分けるほうが、手取りは大きくなりやすい。
売り方の比較は相続した実家の売り方|売りに出した空き家の7割は1年後も空き家のまま。仲介と買取を手取りで比べるに書きました。
共有の農地には、別の決まりがあります。持分の2分の1を超える側に、農業委員会から利用意向調査が来ます(実家に田畑が付いてきたら|農業委員会への届出が別に要る。怠ると10万円以下の過料)。
進める順番
- 登記事項証明書で、いま誰が何分の何を持っているかを確かめる
- やりたいこと(壊す・売る・貸す・直す)を決めて、要る同意を確かめる
- 全員の同意が要るなら、連絡が取れない人がいないかを先に見る
- 相続開始からの年数を数える。10年が近いなら、その前後で手が変わる
- 話がつかないなら、遺産分割か共有物分割か、どちらの入口かを弁護士に確かめる
共有になっている実家のこと、調べたので共有します。
- 実家を壊したり売ったりするには、共有者全員の同意が要ります
- 3年以内で貸すなら、持分の過半数で決められるそうです
- 雨漏りを直すような保存の行為は、1人でもできます
- 連絡が取れない人がいる場合は、裁判所を使う道が3つあります
- ただし相続から10年を過ぎないと使えない手があるので、年数を確かめたいです
よくある質問
要ります。民法251条1項は、共有物に変更(形状又は効用の著しい変更を伴うもの)を加えるには他の共有者の同意が必要としています。解体や建替えはこの変更に当たるので、共有者全員の同意が要ります。1人でも反対したり、連絡が取れなかったりすると進みません。
3年以内なら、持分の価格の過半数で決められます。民法252条1項が管理は過半数で決するとし、4項3号が建物の賃借権等の上限を3年としています。頭数ではなく持分の価格で数えるので、持分が偏っていると人数が多くても過半数に届かないことがあります。
裁判所を使う道が3つあります。民法251条2項の変更を進める裁判、252条2項の管理を決める裁判、262条の2の持分を取得する裁判と262条の3の譲渡権限を付与する裁判です。ただし持分が相続財産の場合、262条の2と262条の3は相続開始から10年を経過していないと使えません。
売れます。持分は各共有者のものなので、単独で処分できます。ただし、買った人は他人と共有することになるため、買い手は限られ、値段も付きにくくなります。実家をまるごと第三者に売りたいなら、全員の同意を取るか、民法262条の3の譲渡権限の裁判を使う道を検討することになります。
出典
- 民法(明治29年法律第89号)第251条・第252条・第253条・第256条・第258条・第258条の2・第262条の2・第262条の3(e-Gov法令検索。共有の規定は令和5年4月1日施行の改正後)

