実家に田畑が付いてきたら|農業委員会への届出が別に要る。怠ると10万円以下の過料
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実家を相続したら、家と宅地だけでなく田畑も付いてきた。地方の実家では珍しくありません。このとき、法務局への相続登記とは別に、もう一つ出す届出があります。農地のある市町村の農業委員会への届出です。怠ると10万円以下の過料と法律に書かれています。この記事は、農地法と農林水産省の資料から、何を出して次に何を考えるかを整理します。
- 農地を相続したら、農地のある市町村の農業委員会へ届け出ます(農地法3条の3)。相続登記とは別の手続きです
- 届出をせず、または虚偽の届出をすると、10万円以下の過料です(農地法69条)
- 宅地と違い、売るにも貸すにも農業委員会の許可が要ります。届出書には「あっせんを希望するか」の欄があります

相続登記そのものは相続登記の期限は2027年3月31日|過料が来るのは「一部だけ登記した」とき。親の不動産を洗い出す証明書が始まったに書きました。
相続登記とは別に、もう一つ出す
農地法3条の3の条文です。
「農地又は採草放牧地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得した者は、(略)遅滞なく、農林水産省令で定めるところにより、その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。」
そして69条に罰則があります。
「第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。」
農林水産省の資料も「法務局への相続登記とは別に必要な手続です」としています。2つを並べると、こうなります。
- 相続した農地の届出… 根拠は農地法3条の3。出す先は農地のある市町村の農業委員会。期限は「遅滞なく」。怠ると10万円以下の過料
- 相続登記… 根拠は不動産登記法76条の2。出す先は法務局。期限は取得を知った日から3年以内。怠ると10万円以下の過料
どちらか一方では足りません。過料の額が同じなので混同されやすいのですが、別の法律の、別の手続きです。
注意:条文は「遅滞なく」としか書いていません。具体的に何か月以内かは、農地のある市町村の農業委員会に確かめてください。窓口によって案内が違うことがあります。
届出書は1枚。書く欄は6つ
農林水産省が様式例(第3号の1)と記載要領を公開しています。難しい書類ではありません。

記載要領で、実家じまいに効く点が3つあります。
1つ目は、地目の欄が「登記簿」と「現況」に分かれていることです。登記簿では畑でも、何十年も耕していなければ現況は原野に近い。様式はそれを前提に作られています。現況をありのままに書けます。
2つ目は、備考欄です。記載要領は「登記簿上の所有名義人と現在の所有者が異なるときに登記簿上の所有者を記載してください」としています。名義が祖父のままでも、この届出は出せます。相続登記が終わるのを待つ必要はありません。
3つ目が、6番の「農業委員会によるあっせん等の希望の有無」です。記載要領によると、ここは「第三者への所有権の移転又は賃借権の設定等の農業委員会によるあっせん等を希望するかどうか」を書く欄です。
義務の紙が、そのまま出口になる
農林水産省のリーフレットには、こう書かれています。
「農業委員会では、例えば、相続した方が地元を離れていて、自分では手入れができない場合に、農地の管理についてのご相談や、地元で借り手を探すなどのお手伝いをします。」
つまり、出さなければ過料という義務の届出と、手放すための相談が、同じ1枚でつながっています。遠くに住んでいて耕せない人にとって、この6番の欄が最初の出口です。

農林水産省の「農地相続ポータル」は、持ち続けたくない場合の選択肢を3つ挙げています。
- 農地バンク(農地中間管理機構)への貸付け
- 売却。ただし農業委員会の許可が必要
- 相続土地国庫帰属制度。ただし土壌汚染や権利争いがある農地は対象外
宅地と同じ感覚では売れない
ここが、実家の宅地といちばん違うところです。農地は、農地法3条1項により、農業委員会の許可を受けなければ所有権を移せません。
宅地なら不動産会社に頼めば買い手を探せますが、農地はそうはいきません。買える相手が制度上限られているからです。農地以外のものにする「転用」も、4条・5条により都道府県知事等の許可が要ります。
だから「とりあえず売りに出す」ができません。売れない土地の出口として国庫帰属制度がありますが、こちらも条件があります(実家の土地を国に引き取ってもらえるか|申請5,997件に対し帰属3,119件。建物があると申請すらできない)。
田畑と一緒に、納屋や農業用の倉庫が残ることもあります。壊す費用に補助が出るかは納屋・蔵・倉庫だけの解体に補助金は出るか|19市の要綱を読むと「だけ」は0市。母屋と一緒に全部壊すのが条件の市が16にまとめました。
放っておくと、調査が来る
耕さないまま置いておくと、農業委員会のほうから接触があります。農地法32条です。
農業委員会は、利用状況調査の結果、次のいずれかに当たる農地があるときは、所有者等に利用意向調査を行うことになっています。
- 現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地
- その農業上の利用の程度が、周辺の地域における農地の利用の程度に比べて著しく劣っていると認められる農地
共有になっている場合の決まりもあります。32条2項は、所有者等の一部を確知できないときでも、知れている所有者等の持分が2分の1を超えるときに限り、知れている人に対して利用意向調査を行うとしています。
つまり、連絡が取れない共有者がいても、こちらに話が来ます。共有の実家で何に誰の同意が要るかは共有の実家は壊すのに全員の同意|貸すのは過半数、直すのは1人。相続から10年で使える手が増えるに書きました。
進める順番
- 固定資産税の課税明細書で、宅地以外に田・畑がないかを確かめる
- 農地があれば、その市町村の農業委員会に電話して、届出の様式と期限を聞く
- 届出書を出す。相続登記が終わっていなくても出せる
- 耕さないなら、6番の「あっせん等の希望」に希望すると書く
- 宅地・建物のほうと並行して、貸すか売るか手放すかを決める
実家の田畑のこと、調べたので共有します。
- 農地を相続したら、法務局の相続登記とは別に、農業委員会への届出が要ります
- 出さないと10万円以下の過料と法律に書いてあります
- 届出書は1枚で、名義がおじいちゃんのままでも出せるそうです
- 「借り手を探してほしい」という欄があるので、そこに希望を書けます
- 課税明細書に田や畑が載っていないか、一緒に見てもらえますか
よくある質問
足りません。農地法3条の3により、農地のある市町村の農業委員会への届出が別に必要です。農林水産省も「法務局への相続登記とは別に必要な手続です」としています。届出をせず、または虚偽の届出をすると、10万円以下の過料です(農地法69条)。
条文は「遅滞なく」としています。具体的な日数は条文に書かれていないので、農地のある市町村の農業委員会に確かめてください。相続登記(取得を知った日から3年以内)とは期限の書き方が違います。
できます。届出書の記載要領は、備考欄について「登記簿上の所有名義人と現在の所有者が異なるときに登記簿上の所有者を記載してください」としています。名義が親や祖父のままでも、届出は出せる作りになっています。
農業委員会の許可が要ります。農地法3条1項により、農地の所有権を移すには許可が必要で、買える相手も制度上限られます。農地以外にする転用も、4条・5条により都道府県知事等の許可が要ります。届出書の「あっせん等の希望」欄で、農業委員会に借り手や買い手を探してもらう道もあります。
出典
- 農地法(昭和27年法律第229号)第3条・第3条の3・第4条・第5条・第32条・第69条(e-Gov法令検索)
- 農林水産省「農地相続ポータル」
- 農林水産省「農地を相続したときは…〈農地の相続等の届出のお願い〉」様式例第3号の1および記載要領

