平成4年より前に借りた土地は「旧法借地権」|新法と何が違い、何に気をつけるか
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実家の借地の契約書を見ると、日付が昭和です。そのときの法律は、もう廃止されています。ところが、その契約には廃止された法律のルールが今も生きています。どこがそうなのかを、条文で確かめます。
- 平成4年8月1日より前の借地契約には、旧借地法のルールが残ります。借地借家法の附則がそう定めています
- 残るのは主に4つ。更新、建物の朽廃による消滅、建て替えによる期間の延長、建物買取請求の一部です
- 空き家を放置して建物が朽ちると、旧法では借地権そのものが消えます。新法にはない危険です

借地の実家を壊す前に確かめることは借地の実家をどうするか|壊す前に確かめることに、売る手順は借地権付きの実家を売る|地主の承諾と、3つの売り先にまとめました。この記事は、その2本の前提になる「どの法律が適用されるか」の話です。
平成4年8月1日が境目
借地借家法は平成4年8月1日に施行されました。附則第2条は、それまでの借地法(大正10年法律第49号)を廃止すると定めています。
ただし、附則第4条にはこうあります。「この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、附則第二条の規定による廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない」
原則は新法が適用される。ただし「特別の定め」がある部分は旧法のまま。その特別の定めが、附則第5条から第9条にあります。
注意:境目は「契約を結んだ日」です。その後に更新していても、施行前に設定された借地権であることは変わりません。契約書の最初の日付を見てください。
旧法のまま残る4つのこと
附則が「なお従前の例による」「適用しない」と書いている部分が、旧法の領域です。
- 建物の朽廃による消滅(附則第5条)… 施行前に設定された借地権について、「その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関しては、なお従前の例による」
- 契約の更新(附則第6条)… 施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による
- 建て替えによる期間の延長(附則第7条)… 施行前に設定された借地権について、建物の滅失後の建物の築造による借地権の期間の延長に関しては、なお従前の例による。新法第8条は適用されない
- 建物買取請求の制限(附則第9条)… 新法第13条第2項(更新後に再築された建物についての買取請求の制限)は、施行前に設定された借地権には適用されない
つまり、期間の数え方、更新のしかた、建て替えたときの扱い、そして建物が朽ちたときの扱いが、旧法で決まります。この4つ以外——たとえば譲渡の承諾に代わる裁判所の許可(第19条)や、建物の登記による対抗力(第10条第1項)——は新法が適用されます。

朽廃で借地権が消える。空き家の放置と直結する
ここが、この記事でいちばん大事なところです。
旧借地法には、期間の定めのない借地権について、建物が朽廃したときは借地権が消滅するという定めがありました。附則第5条により、施行前に設定された借地権には、この扱いが今も残ります。新法には、朽廃で消滅するという規定はありません。
朽廃とは、建物が自然に朽ちて、建物としての効用を失った状態を指します。放置した空き家が、そこに向かって進みます。屋根が抜け、柱が腐り、住める状態でなくなる。そうなると、土地を借りる権利そのものが無くなりえます。
注意:借地の実家を空き家のまま放置するのは、持ち家の放置とは別の重さがあります。持ち家なら建物が傷んでも土地は残りますが、旧法の借地では建物が朽ちれば土地の権利ごと失います。空き家の点検項目は相続した空き家を放置すると|「管理不全空家」の判断基準と、年に何をすればいいかにまとめました。旧法の借地なら、あの点検を怠る理由がひとつ増えるのではなく、怠れない理由が増えます。
なお、朽廃と取り壊しは別です。自分で壊した場合の扱いは借地の実家をどうするか|壊す前に確かめることの第10条の話です。どちらにしても、建物が無くなることが権利の危機につながる、という点は共通しています。
期間と更新は、建物の種類で分かれる
旧借地法は、建物を「堅固」と「非堅固」に分けて期間を定めていました。石造・れんが造・鉄筋コンクリート造などが堅固、木造が非堅固です。
旧借地法では、期間の定めがない場合、堅固建物は60年、非堅固建物は30年とされ、契約で期間を定める場合は堅固30年以上、非堅固20年以上とされていました。更新後の期間は堅固30年、非堅固20年。新法が建物の種類を問わず「30年、更新後10年(最初の更新は20年)」としたのと違います。
旧法の借地権は、更新しても旧法のままです。附則第6条が「更新に関しては、なお従前の例による」と定めているので、平成4年以降に更新した契約でも、更新のルールは旧法で動きます。「更新したから新法になった」ではありません。
注意:実家の木造家屋なら、非堅固です。契約書に「堅固」「非堅固」の記載があるか、期間が何年で結ばれているかを確かめてください。期間の定めが無い契約もあります。その場合は旧法の法定期間で数えます。
更新料は、法律に書かれていない
「更新料はいくらが相場か」という問いに、法律は答えません。
借地借家法にも、旧借地法にも、更新料を払えという規定はありません。更新料は、契約書に定めがあるか、当事者が合意したときに生じるものです。契約書に更新料の条項が無ければ、法律上の支払義務は当然には生じないと解されています。ただし、地域の慣行や過去の支払いの経緯を理由に請求されることがあり、争いになれば個別の事情で判断されます。
金額に公的な統計はありません。「借地権価格の何パーセント」という言い方を目にしますが、それは取引の実務上の目安であって、法令や統計に基づくものではありません。
確かめるのは、この3つです。
- 契約書に更新料の条項があるか
- あるなら、金額または計算方法がどう書かれているか
- 前回の更新のときに払ったか、払ったなら領収書や覚書が残っているか
請求されたら、何を根拠に求めているのかを文書で確かめてください。合意していないのに払う必要はなく、払うなら金額と根拠を書面に残します。判断に迷う場合は、弁護士か、自治体の無料法律相談へ。

借地権と賃借権は、どう違うのか
別の権利ではありません。賃借権は、借地権の一種です。
借地借家法の第2条第1号は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。建物を建てるために土地を借りる権利が借地権で、その中身が地上権か賃借権かのどちらか、という関係です。
違いが出るのは、売るときです。賃借権なら民法第612条により地主の承諾が要り、地上権にはその制限がありません。実家の借地は賃借権であることが多く、契約書の表題が「土地賃貸借契約書」ならそれです。詳しくは借地権付きの実家を売る|地主の承諾と、3つの売り先にまとめました。
旧法か新法かと、地上権か賃借権かは、別の軸です。旧法の賃借権、新法の賃借権、どちらもあります。
「新法に切り替えましょう」と言われたら
地主から、契約を結び直して新法にしようと持ちかけられることがあります。
合意して新しく契約すれば、新法の借地権になります。そのこと自体は違法ではありません。ただし、旧法から新法に移ると、更新後の期間が短くなる(旧法の20年・30年から新法の10年へ)など、借地人に不利になる点があります。
注意:「定期借地権」への切り替えには特に注意してください。定期借地権は新法で作られた制度で、更新がなく、期間が満了すれば土地を返します。国土交通省の解説によれば、更新しない・建物の再築による延長をしない・建物買取請求をしない、という3つの特約は「旧法借地権のもとでは、この3つの特約はいずれも借地人に不利な契約として、借地法上は無効とされていた」ものです。旧法で無効だった特約が、新法の定期借地権では有効になります。切り替えた瞬間に、それまで持っていた保護を手放すことになります。
持ちかけられたら、その場で返事をせず、弁護士に契約書を見せてください。
進める順番
- 契約書の最初の日付を見る。平成4年7月31日以前なら旧法
- 建物が堅固か非堅固か、期間の定めがあるかを見る
- 建物の状態を見る。朽廃に向かっていないか。空き家なら点検項目で確かめる
- 更新料の条項の有無と、過去の更新の記録を探す
- 登記事項証明書で、建物の名義と、地上権か賃借権かを確かめる
- 売る・壊す・建て替えるを決める前に、弁護士か司法書士へ。旧法の借地は判断が分かれる論点が多いところです
実家の借地が古い契約だった場合のこと、調べたので共有します。
- 借地の契約が平成4年7月31日以前なら「旧法借地権」です。更新や建て替えの扱いは、今も旧借地法のままです
- 旧法では、建物が朽ちると借地権が消えます。空き家を放っておくと、権利を失うことにつながります
- 更新料は法律に決まりがなく、契約に書いてあるかどうかで決まります
- 地主さんから新しい契約への切り替えを持ちかけられたら、返事の前に弁護士に相談したいです
- 借地の契約書、どこにあるか分かりますか
よくある質問
期間の数え方、更新、建て替えたときの扱い、建物が朽ちたときの扱いです。借地借家法の附則第5条から第7条が、施行前に設定された借地権についてこれらを「なお従前の例による」と定めています。旧法は建物を堅固・非堅固に分けて期間を定め、朽廃による消滅の規定がありました。それ以外の部分(対抗力、譲渡の許可の裁判など)は新法が適用されます。
なりません。附則第6条は、施行前に設定された借地権の更新について「なお従前の例による」としています。更新は旧法のルールで行われ、更新後も旧法の借地権のままです。新法になるのは、合意して新たに契約を結び直した場合です。
公的な統計はなく、法律にも規定がありません。借地借家法にも旧借地法にも、更新料の支払いを義務づける条文はありません。契約書の定めか、当事者の合意が根拠になります。契約書に条項が無いなら、請求の根拠を文書で確かめてください。払う場合は金額と根拠を書面に残します。
賃借権は借地権の一種です。借地借家法2条1号は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。実家の借地は賃借権が多く、その場合は売るときに地主の承諾が要ります(民法612条)。旧法か新法かとは別の軸です。
建物が朽廃すると、借地権が消滅することがあります。附則第5条により、施行前に設定された借地権には旧法の朽廃による消滅の扱いが残っています。持ち家の放置と違い、土地を借りる権利そのものを失いえます。屋根・柱・雨水の浸入を定期的に点検し、傷みが進む前に、売るか、地主に返すか、建て替えるかを決めてください。
出典
- 借地借家法(平成3年法律第90号)第2条、第8条、第10条、第13条、第19条、附則第2条、第4条、第5条、第6条、第7条、第9条(平成4年8月1日施行)
- 借地法(大正10年法律第49号。平成3年法律第90号により廃止)第2条、第5条、第7条。廃止法令のため現行法令データベースには収録されておらず、国立国会図書館「日本法令索引」の法令沿革および同館デジタルコレクションの官報で確認できます
- 民法(明治29年法律第89号)第612条
- 国土交通省「定期借地権の解説」

