実家を生前に子の名義にするといくらかかるか|贈与は登録免許税2%と不動産取得税。相続なら0.4%で取得税なし
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親が元気なうちに、実家を子の名義に移しておきたい。認知症になる前に、兄弟で揉める前に、という理由はよく分かります。でも実家を贈与で移すと、相続で受け取るより税金がずっと重くなるのが普通です。贈与税だけの話ではありません。名義を変える登録免許税、不動産を取得したときの税金、そして相続でしか使えない特例があります。この記事は、国税庁の資料と地方税法から、評価額1,500万円の実家を例に試算します。
- 名義を変える登録免許税は、贈与なら2%、相続なら0.4%です。不動産取得税は、贈与ではかかり、相続ではかかりません
- 仮の例(評価額1,500万円)で税金を並べると、一度に贈与405万円、相続時精算課税で贈与39万円、相続4.8万円でした
- 相続時精算課税で贈与税を0にしても、小規模宅地等の特例と空き家の3,000万円控除は使えなくなります。どちらも相続(遺贈)が条件です

相続で受け取った土地の評価が8割減る特例は実家の土地の相続税が8割減る「小規模宅地等の特例」|別居の子は「家なき子」の6要件。10か月の申告期限まで売らないに、相続した実家を売るときの3,000万円控除は相続した実家を売ると税金はいくら?3,000万円控除の条件と期限に書きました。
実家を移すときにかかる税金は3つ
親から子へ実家を移すとき、かかりうる税金は次の3つです。
- 贈与税か相続税… 財産をもらったことに対する税金
- 登録免許税… 名義を変える登記にかかる税金
- 不動産取得税… 不動産を取得したことにかかる都道府県の税金
このうち、後ろの2つで贈与と相続の差がはっきり出ます。
国税庁のNo.7191によると、土地と建物の所有権を移す登記の登録免許税は、相続なら1,000分の4(0.4%)、贈与なら1,000分の20(2%)です。課税標準は、原則として固定資産税の評価額です。
不動産取得税は、地方税法73条の7が「相続による不動産の取得」には課すことができないと定めています。贈与で取得すれば課税されます。税率は原則4%ですが、2027年3月31日までの住宅と土地の取得は3%で(附則11条の2)、宅地は課税標準が価格の2分の1になります(附則11条の5)。
評価額1,500万円の実家で試算する
仮の例で比べます。実家の相続税の評価額が土地1,300万円・家屋200万円の計1,500万円、固定資産税の評価額が土地1,000万円・家屋200万円だったとします。子は18歳以上です。
一度に贈与する(暦年課税)場合です。
- 贈与税… (1,500万円−基礎控除110万円)×40%−190万円=366万円(国税庁 No.4408の特例税率)
- 登録免許税… (1,000万円+200万円)×2%=24万円
- 不動産取得税(土地)… 1,000万円×2分の1×3%=15万円
- 合計… 405万円
相続で受け取る場合です。
- 登録免許税… 1,200万円×0.4%=4.8万円
- 不動産取得税… かからない
- 相続税… 遺産全体が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるときだけ
同じ実家でも、贈与なら405万円、相続なら4.8万円です。相続税の課税割合は亡くなった人の約1割なので、多くの家では相続税もかかりません。

注意:この試算には、家屋にかかる不動産取得税と、条件つきの軽減を含めていません。実際の税額は、都道府県税事務所と税理士に確かめてください。
相続時精算課税なら贈与税は0。でも失うものがある
贈与税を抑える方法として、相続時精算課税があります。国税庁のNo.4103によると、次のような制度です。
- 原則60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与で選べる
- 年110万円の基礎控除のほか、累計2,500万円まで特別控除があり、超えた分に一律20%
- 親が亡くなったとき、贈与した財産を相続財産に足して相続税を精算する
- 一度選ぶと、その親からの贈与は暦年課税に戻せない
さきの例なら、1,390万円は特別控除の枠内なので、贈与税は0円です。ただし登録免許税24万円と不動産取得税15万円はかかり、合計39万円になります。
そして、相続でしか使えない特例を2つ失います。
- 小規模宅地等の特例… 国税庁のNo.4124は、相続時精算課税に係る贈与で取得した宅地等には適用がないとしています。親が住んでいた土地の評価を8割減らせる特例です
- 空き家の3,000万円控除… 国税庁のNo.3306は、対象を「相続または遺贈により取得した」親の家と敷地としています。贈与で受け取った実家を売っても使えません
実家をいずれ売るつもりなら、後者は特に大きい差です。
実家をいずれ売るなら、名義を先に移すより、相続したあとに売るほうが3,000万円控除を使えます。いま売るといくらかを知っておくと、家族で時期を話しやすくなります。
年110万円ずつ贈与しても、7年分は足し戻される
「毎年110万円以下なら贈与税はかからない」という話もあります。ただ、実家のように分けにくい財産を、少しずつ持分で移すには、そのたびに登記と登録免許税が要ります。
しかも国税庁のNo.4161によると、2024年1月1日以後の暦年課税の贈与は、親が亡くなったとき、相続開始前7年以内の分が相続財産に足し戻されます(相続開始日によって段階的に延び、2031年1月1日以後の相続から7年)。110万円以下の贈与も対象です。亡くなる前の数年間に移した分は、相続税の計算では節税になりません。
名義を決めたいなら、遺言という手がある
生前贈与を考える理由が「実家を誰が継ぐか、今のうちに決めておきたい」なら、遺言のほうが目的に合います。
遺言で実家を受け取る相続人には、不動産取得税がかかりません。地方税法73条の7は、相続と並べて「被相続人から相続人に対してなされた遺贈」も非課税としています。小規模宅地等の特例や3,000万円控除も、相続・遺贈が条件なので使える余地が残ります。
自筆の遺言は法務局に3,900円で預けられ、家庭裁判所の検認も要りません。書いてもらう方法は親の遺言書は、見つけても開けない|家庭裁判所の検認は年2万3,523件。法務局に預けた遺言は800円で有無を調べられるにまとめました。家庭裁判所で決まった遺産分割の35%は遺産1,000万円以下で、実家しかない家ほど分け方で止まります(実家しかない相続ほど、分け方で止まる|家庭裁判所で決まった遺産分割の35%は遺産1,000万円以下。7割で代償金)。
注意:贈与も遺言も、親に判断能力があるうちにしかできません。認知症が進むと、どちらもできなくなります(親が認知症だと実家は売れないのか|成年後見の申立ては年4万3,159件。売却が終わっても後見は続く)。
実家を先に子の名義にする話、調べたので共有します。
- 贈与で名義を移すと、登記の税金が2%かかります。相続なら0.4%です。不動産取得税も、贈与ではかかり、相続ではかかりません
- 評価額1,500万円の家で試算すると、一度に贈与すると約405万円、相続なら約5万円でした
- 相続時精算課税を使えば贈与税は0円ですが、土地の評価が8割減る特例と、売るときの3,000万円控除が使えなくなります
- 「誰が継ぐか」を決めておきたいなら、遺言を書いてもらう方法があります
- 一度、親も入れて話せますか
よくある質問
贈与税・登録免許税・不動産取得税の3つがかかります。仮の例(相続税評価額1,500万円、固定資産税評価額1,200万円のうち土地1,000万円)で一度に贈与すると、贈与税366万円・登録免許税24万円・土地の不動産取得税15万円で、計405万円でした。相続で受け取るなら登録免許税4.8万円だけで、相続税は遺産全体が基礎控除を超えるときだけです。
贈与は2%、相続は0.4%で、5倍の差があります。国税庁のNo.7191による土地・建物の所有権移転の税率です。課税標準は原則として固定資産税の評価額です。なお、相続による土地の登記で評価額100万円以下のものは、2027年3月31日まで登録免許税がかかりません。
贈与税は抑えられますが、失うものがあります。累計2,500万円までの特別控除で贈与税は0円にできても、登録免許税2%と不動産取得税はかかります。さらに、小規模宅地等の特例(No.4124)と、空き家を売ったときの3,000万円控除(No.3306)は、相続・遺贈で取得したことが条件なので使えません。一度選ぶと暦年課税に戻せない点にも注意してください。
贈与税はかからなくても、相続のときに足し戻されることがあります。2024年以後の暦年課税の贈与は、相続開始前7年以内の分が相続財産に加算されます(段階的に延び、2031年以後の相続から7年)。110万円以下の分も対象です。実家を持分で少しずつ移すなら、そのたびに登記と登録免許税もかかります。
遺言で「実家は誰に」と書いてもらう方法があります。遺言で受け取る相続人は不動産取得税が非課税で、小規模宅地等の特例や3,000万円控除を使える余地も残ります。自筆の遺言は法務局に3,900円で預けられます。贈与も遺言も、親に判断能力があるうちにしかできません。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」、No.4103「相続時精算課税の選択」、No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」、No.7191「登録免許税の税額表」、No.4124「小規模宅地等の特例」、No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(いずれも令和8年4月1日現在)
- 地方税法(73条の7、73条の15、附則11条の2、附則11条の5)e-Gov法令検索
- 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月)

