親の遺言書は、見つけても開けない|家庭裁判所の検認は年2万3,523件。法務局に預けた遺言は800円で有無を調べられる
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親が亡くなったあと、机の引き出しから「遺言書」と書かれた封筒が出てくることがあります。封がしてあるなら、開けずに家庭裁判所へ持って行ってください。勝手に開けると過料の対象になります。一方で、親が法務局に遺言書を預けていた場合は、家庭裁判所の手続きが要りません。この記事は、法務省の利用状況と司法統計、民法の条文から、親の遺言書の探し方と扱い方を整理します。
- 家で見つけた遺言書は、家庭裁判所で「検認」を受けます。封のある遺言書を家庭裁判所の外で開けると、5万円以下の過料があります
- 2025年に家庭裁判所が受けた検認の申立ては2万3,523件でした
- 法務局に預けた遺言書は検認が要りません。預けてあるかどうかは、全国どこの法務局でも1通800円で確かめられます。郵送でも請求できます

親が元気なうちに遺言を書いてもらう話は生前整理は片付けから始めない|親が決められるうちに残す3つの書類に書きました。この記事は、親が亡くなったあとの話が中心です。

家で見つけた遺言書は、開けずに家庭裁判所へ
民法1004条は、遺言書を保管している人は、相続の開始を知ったあと遅滞なく家庭裁判所に提出して、検認を請求しなければならないとしています。保管していた人がいなくても、相続人が遺言書を見つけたときは同じです。
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などが立ち会わなければ、開けることができません(同条3項)。
守らなかったときの定めもあります。民法1005条は、遺言書の提出を怠った人、検認を経ずに遺言を執行した人、家庭裁判所の外で開封した人を、5万円以下の過料に処するとしています。
ただし、公正証書で作った遺言は、この検認の定めの対象外です(同条2項)。
裁判所の案内によると、検認の申立ては次のとおりです。
- 申し立てる人… 遺言書の保管者か、遺言書を見つけた相続人
- 申立先… 親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 費用… 遺言書1通につき収入印紙800円分と郵便切手
- 流れ… 相続人に検認の日が知らされ、出席した相続人の立ち会いのもとで検認する。手続きに使う検認済証明書は、収入印紙150円分で申請する
注意:実家の片付けを始める前に、遺言書がありそうな場所を先に見てください。仏壇の引き出し、金庫、書棚の封筒、通帳と一緒の箱などです。片付けの途中で捨てられてしまうと、取り返せません。
検認の申立ては、1年で2万3,523件
最高裁判所の「令和7年 司法統計年報 家事編」第3表によると、2025年に家庭裁判所が新しく受けた遺言書の検認の申立ては2万3,523件でした。
この数字を、法務局の遺言書保管制度と並べてみます。法務省の「遺言書保管制度の利用状況」によると、2025年に相続人などが法務局に「預けてある遺言書の中身の証明書(遺言書情報証明書)」を請求したのは3,606件です。
件数の数え方は同じではありません。それでも、親の遺言書を家で見つけて家庭裁判所に持ち込む家族のほうが、まだずっと多いことは読み取れます。
注意:裁判所は、検認を「遺言書の偽造・変造を防止するための手続」と説明しています。遺言が有効かどうかを決める手続きではありません。
法務局に預けてあれば、検認は要らない
2020年7月から、自筆の遺言書を法務局に預けられるようになりました。法務省のパンフレット(令和7年度改訂版)によると、制度の要点は次のとおりです。
- 預けた遺言書は、家庭裁判所の検認が要らない
- 原本は遺言者の死亡後50年、画像データは150年、法務局が保管する
- 預けるときに、法務局の職員が全文・日付・氏名の自書や押印の有無など、形式を確かめる
- 手数料は、預けるときに3,900円
利用も増えています。保管の申請は、制度が始まった翌年の2021年が1万7,002件、2025年は2万2,550件でした。2020年7月から2026年8月までの累計は12万9,598件です。
預けてあるかは、800円で確かめられる
親が法務局に遺言書を預けていたかどうか、家族が知らないこともあります。確かめる方法が「遺言書保管事実証明書」です。法務省のパンフレットによると、次のようになっています。
- 請求できるのは、遺言者が亡くなったあと
- 全国すべての遺言書保管所(法務局)で請求できる。郵送でも請求できる
- 手数料は1通800円
- 請求した人が相続人などでない場合は、預けてあっても「保管されていない」という証明書になる
- 代理人による請求はできない
- 要る書類は、親が亡くなったことが分かる戸籍と、請求する人の住民票の写しなど。相続人なら、住所の書かれた法定相続情報一覧図の写しで代えられる
預けてあると分かったら、中身の証明書(遺言書情報証明書、1通1,400円)を請求します。この証明書で、相続登記や預金の手続きを進められます。相続人の1人が証明書を受け取ったり閲覧したりすると、ほかの相続人全員に、遺言書が預けてあることが通知されます。
戸籍や一覧図の集め方は親の戸籍の集め方|2024年からは最寄りの役所で出生まで請求できる。法定相続情報一覧図にすれば写しは無料で使い回せるに書きました。
これから親に書いてもらうなら
親がまだ元気なら、遺言を残してもらうことで、実家の分け方の話し合いが楽になります。名義を先に移す生前贈与は、税金が重くなりがちです(実家を生前に子の名義にするといくらかかるか|贈与は登録免許税2%と不動産取得税。相続なら0.4%で取得税なし)。家庭裁判所で決まった遺産分割の35%は遺産1,000万円以下で、実家しかない相続ほど分け方で止まりやすいからです(実家しかない相続ほど、分け方で止まる|家庭裁判所で決まった遺産分割の35%は遺産1,000万円以下。7割で代償金)。
法務省のパンフレットは、自筆証書遺言と公正証書遺言を次のように比べています。
- 自筆証書遺言… 本人が全文(財産目録を除く)・日付・氏名を自分で書く。証人は要らない。法務局に預ければ検認不要
- 公正証書遺言… 公証人の関与の下、2人以上の証人が立ち会って作る。公証人が遺言能力や内容の有効性を確かめる。病気などで出向けないときは公証人が出張できる。手数料は財産の価額に応じる
法務局に預けるときは、親本人が法務局に出向く必要があります。顔写真付きの身分証明書で本人確認があり、予約制です。家族が代わりに預けることはできません。

親の判断能力が落ちてからでは、遺言は残せません。認知症が進んでからの実家の扱いは親が認知症だと実家は売れないのか|成年後見の申立ては年4万3,159件。売却が終わっても後見は続くに書きました。
親の遺言書のこと、調べたので共有します。
- 家で遺言書の封筒を見つけたら、開けずに家庭裁判所で「検認」を受けます。勝手に開けると5万円以下の過料があるそうです
- 法務局に預けてある遺言書なら、検認は要りません
- 預けてあるかどうかは、全国どこの法務局でも1通800円で調べられます。郵送でも頼めます
- 片付けの前に、仏壇の引き出しや金庫、封筒を先に見ておきたいです
- 遺言書のことを聞いたことがある人はいますか
よくある質問
封がしてあるなら、開けないでください。民法1004条は、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人などの立ち会いがなければ開封できないとしています。家庭裁判所の外で開けると、民法1005条により5万円以下の過料があります。見つけたら、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求します。
過料の対象になります。民法1005条は、遺言書の提出を怠った人や、検認を経ずに遺言を執行した人を5万円以下の過料に処するとしています。2025年に家庭裁判所が受けた検認の申立ては2万3,523件でした。公正証書遺言と、法務局に預けた遺言書は検認が要りません。
遺言書保管事実証明書を請求します。親が亡くなったあと、全国どこの法務局でも請求でき、郵送でも頼めます。手数料は1通800円です。要る書類は、親が亡くなったことが分かる戸籍と、請求する人の住民票の写しなど。相続人なら、住所の書かれた法定相続情報一覧図の写しでも代えられます。
遺言書情報証明書(1通1,400円)を請求するか、閲覧します。請求できるのは相続人・受遺者・遺言執行者などで、代理人には頼めません。相続人の1人が証明書を受け取ったり閲覧したりすると、ほかの相続人全員に、遺言書が預けてあることが通知されます。証明書は相続登記や預金の手続きに使えます。
親が自分で全文を書けて、法務局に出向けるなら、自筆で書いて法務局に預ける方法があります。手数料は3,900円で、検認が要りません。自分で書けない、出向けない、内容の有効性まで確かめてほしいという場合は、公正証書遺言です。公証人が関与し、出張もできます。どちらも、親の判断能力があるうちにしか作れません。
出典
- 法務省民事局「遺言書保管制度の利用状況」(令和8年8月分まで)
- 法務省民事局「自筆証書遺言書保管制度のご案内」令和7年度改訂版
- 最高裁判所「令和7年 司法統計年報 3 家事編」第3表(令和8年6月)
- 裁判所「遺言書の検認」
- 民法(968条、1004条、1005条)e-Gov法令検索

