家をどうするか

親が家で亡くなった実家は「事故物件」になるのか|告知が要る死・要らない死と、訳あり物件買取の使いどころ

杉野 一樹

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親が実家で亡くなった。それだけで家が「事故物件」になるわけではありません。国土交通省の指針は、老衰や持病による病死、階段からの転落や入浴中の事故のような日常生活の中の死は、原則として告げなくてよいとしています。告知が要るのは、それ以外の死と、発見が遅れて特殊清掃をした場合です。この記事は、その線引きを指針の文言どおりに書き、そのうえで「訳あり物件の買取」をいつ使うかを整理します。

この記事で分かること
  • 病死・老衰・日常の事故死は、原則として告知不要。自宅での死因の9割は老衰や病死です(指針が引く人口動態統計)
  • 告知が要るのは、自死・事件・事故死などと、特殊清掃や大規模リフォームをした場合。告げる内容は「時期・場所・死因・特殊清掃の有無」の4つで、氏名や発見状況は要りません
  • 売買には「3年たてば告げなくてよい」という目安がありません。賃貸だけです。買主に聞かれたら、期間や死因に関わらず答えます
  • 一人暮らしで自宅で亡くなった人は令和7年に76,941人。発見が8日以上かかったのは28.9%で、特殊清掃が入りやすいのはこの帯です(警察庁)
実家じまいの5段階。お墓、仏壇・位牌、片付け、家をどうするか、解体。この記事は家をどうするか
この記事は④家をどうするかの、告知と売り方の話です。

「事故物件」に法律上の定義はない。あるのは国の指針

「事故物件」という言葉は、法律には出てきません。不動産の世界で使われてきたのは「心理的瑕疵」で、過去に人の死があった物件を買主に告げるべきかは、裁判のたびに「取引目的、事案の内容、事案発生からの時間の経過、近隣住民の周知の程度等」で判断されてきました。業者によって対応がばらばらで、亡くなった理由を問わず全部告げる業者もあり、そのせいで単身高齢者の入居を貸主が敬遠する、という指摘まで出ていました。

そこで国土交通省は令和2年2月から検討会を開き、令和3年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を出しました。宅地建物取引業者(仲介業者や買取業者)が、宅地建物取引業法上どこまで告げる義務があるかの基準です。対象は住宅(居住用不動産)だけで、オフィス等は対象外です。

注意が1つあります。指針に従っても、売主の民事上の責任が消えるわけではありません。指針自身が「宅地建物取引業者が本ガイドラインに基づく対応を行った場合であっても、当該宅地建物取引業者が民事上の責任を回避できるものではない」と書いています。売主が知っていて隠した場合は、指針とは別に責任を問われます。

告げなくてよい死:病死・老衰・日常の不慮の事故

指針4.(1)①が「宅地建物取引業者が告げなくてもよい場合」として最初に挙げるのが、自然死と日常生活の中での不慮の死です。

  • 自然死… 老衰、持病による病死など。指針は「そのような死が居住用不動産について発生することは当然に予想される」とし、統計でも自宅における死因の9割が老衰や病死だと書いています(人口動態統計・令和元年。自宅での死亡者188,191人から外因16,174人を除いた割合)
  • 日常生活の中での不慮の事故死… 自宅の階段からの転落、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など。「そのような死が生ずることは当然に予想される」ので、自然死と同じ扱い

どちらも、賃貸・売買のいずれでも、原則として告げなくてよい。親が実家で病気や老衰で亡くなり、すぐに見つかって葬儀を出したなら、指針上は告知の対象ではありません。

ただし、告げなくてよいのは業者の義務の話です。買主から「この家で亡くなった人はいますか」と問われたら、後述のとおり答えることになります。

告げる死:それ以外と、特殊清掃をした場合

指針は「告げなくてよい場合」を3つ挙げ、それ以外は告げなければならない、という書き方です。したがって、自死、他殺、火災や事件による死、日常生活とは言えない事故死は、業者が「取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合」に告げる対象です。

そして、自然死であっても告知の対象になるのが、次の場合です。指針の原文はこうです。

「自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、取引の対象となる不動産において、過去に人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等(以下「特殊清掃等」という。)が行われた場合においては、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性がある」

つまり、病死でも、発見が遅れて特殊清掃をしたなら告げる。「特殊清掃」の定義は指針の注に、総務省の調査報告を引いて「孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス」と書かれています。

告げる内容は4つに限られます。指針4.(2)の文言で、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合には発覚時期)、場所、死因(不明である場合にはその旨)、特殊清掃等が行われた旨、です。氏名、年齢、住所、家族構成、具体的な死の態様、発見状況は「告げる必要はない」と明記されています(4.(4))。亡くなった親の尊厳に関わる部分は、指針が守っています。死因は「自然死・他殺・自死・事故死等の別」を指すと注にあり、病名を告げる必要はありません。

親が亡くなった実家を売るとき告知が要るかの判断チャート
指針の4.(1)〜(3)を3つの質問にしました。

売買には「3年」の目安がない

「事故物件は3年たてば告知不要」と聞いたことがあるかもしれません。指針で「概ね3年」と書かれているのは、賃貸だけです。

指針4.(1)②は、賃貸借取引について、自然死以外の死が発生した場合や、自然死で特殊清掃等が行われた場合、その発覚から「概ね3年間を経過した後は、原則として、借主に対してこれを告げなくてもよい」としています。ただし「事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない」と付いています。

売買については、この期間の目安がありません。指針は売買の告知に期限を示しておらず、裁判例が「心理的瑕疵は時間の経過とともに希釈され、やがて消滅する」としていることに触れるにとどめています。実家を売るなら、「何年たったから言わなくていい」という線は自分では引けない、と考えてください。

もう1つ、指針が対象にしていないものがあります。「人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱い」と「搬送先の病院で死亡した場合の取扱い」です。裁判例や実務の蓄積がないため対象外にした、と結びに書かれています。解体して更地にすれば告知しなくてよい、と指針が言っているわけではありません。聞かれたら答える、が安全側です。

聞かれたら、期間も死因も関係なく答える

指針4.(3)は、上の原則にかかわらず「買主・借主から事案の有無について問われた場合」は、発覚からの期間や死因に関わらず、調査で判明した点を告げる必要があるとしています。社会的影響が大きく買主が把握しておくべき特段の事情がある場合も同じです。

答える内容は、調べて分かった範囲でよい。売主が「不明」と答えたなら、業者は不明と伝えれば足ります。ここで嘘をつくと、指針の話ではなく民事の話になります。指針は仲介業者に対し、売主に「事案の存在について故意に告知しなかった場合等には、民事上の責任を問われる可能性がある旨をあらかじめ伝えることが望ましい」としています。

業者が自分で調べる義務は限られています。指針3.(1)は、人の死を疑う特段の事情がなければ自発的に調査する義務はなく、売主に告知書(物件状況等報告書)への記載を求めれば調査義務を果たしたことになる、としています。近隣への聞き込みやインターネットの調査は、亡くなった人や遺族の名誉に配慮して「特に慎重な対応を要する」と書かれています。裏返すと、告知書に何を書くかは、売主であるあなたが決めることになります。

一人暮らしで自宅で亡くなる人は年76,941人。発見が8日以上かかるのは29%

「発見が遅れて特殊清掃」は、珍しい話ではありません。警察庁は令和8年3月31日に、令和7年中に警察が取り扱った死体204,562体のうち、自宅で亡くなった一人暮らしの人が76,941人(37.6%)だったと公表しました。65歳以上が58,919人で、76.6%を占めます。

発見までの日数は次のとおりです(警察庁刑事局捜査第一課、令和8年4月)。

  • 0〜1日… 28,398人(36.9%)
  • 2〜3日… 15,865人(20.6%)
  • 4〜7日… 10,456人(13.6%)
  • 8〜14日… 7,570人(9.8%)
  • 15〜30日… 7,504人(9.8%)
  • 31日以上… 7,148人(9.3%)

7日以内に見つかった人が71.1%、8日以上かかった人が28.9%(22,222人)です。特殊清掃が必要になるかは季節や住環境で変わるので一律には言えませんが、8日以上の帯が対象になりやすいと考えてください。離れて暮らす親が一人暮らしなら、「病死だから告知はいらない」で終わらず、「発見が遅れて特殊清掃をしたか」まで含めて考える必要があります。

一人暮らしで自宅で亡くなった人の発見までの日数の分布(令和7年)
76,941人の発見までの日数の分布です。

特殊清掃そのものの頼み方と費用は実家がごみ屋敷になっていたら|業者より先に、自治体に相談する理由と遺品整理の費用はいくら?相場より先に見るべき3つの内訳に書きました。特殊清掃をしたら、業者の領収書と作業内容を残してください。告知の項目「特殊清掃等が行われた旨」と「発覚時期」の根拠になります。特殊清掃そのものの費用の実額と、誰が払うか、頼む前に確かめることは特殊清掃とは何をするのか|費用の実額、誰が払うか、頼む前に確かめる8つのことにまとめました。

売り方は3つ。告知して仲介で売る、買取業者に売る、解体して土地で売る

告知が要る実家を売る方法は、大きく3つです。

1. 仲介で、告知して売る。告知書に時期・場所・死因・特殊清掃の有無を書き、仲介業者が買主に伝えます。値段は下がりますが、買主が直接買うので、買取より高く売れるのが一般的です。時間はかかります。

  1. 訳あり物件の買取業者に売る。業者が自分で買い取り、リフォームや賃貸に回して再販します。仲介手数料がかからず、早く現金になるのが利点で、代わりに仲介で売るより安くなります。「事故物件」「孤独死物件」を買取対象に明記している業者があります。
  1. 解体して、土地として売る。建物を壊せば「事故物件」ではなくなる、と言われることがありますが、上に書いたとおり指針は取り壊し後の土地取引を対象外にしているだけで、告知不要とは言っていません。解体費用は家の解体費用は坪数で決まらない|見積書で見るべき7項目に書きました。

どれを選んでも、3,000万円控除(相続空き家の特例)の条件は変わりません。相続開始から3年目の12月31日までに売り、耐震改修か取り壊しをする要件です。詳しくは相続した実家を売ると税金はいくら?3,000万円控除の条件と期限にまとめました。告知が要らない実家も含めた、仲介と買取を手取りで比べる順番と、800万円以下の仲介手数料の特例は相続した実家の売り方|売りに出した空き家の7割は1年後も空き家のまま。仲介と買取を手取りで比べるにあります。

訳あり物件の買取業者を使うのは、こういうとき

買取業者は「安く、早く」の道具です。使いどころは、次のどれかに当てはまるときです。

  • 仲介で出しても買い手が付かない。告知が要る物件は、内見で断られることが続きます
  • 早く手放したい。固定資産税と管理の手間が続く。遠方で通えない
  • 契約後に責任を問われたくない。買取業者との契約では、売主が契約不適合責任(引き渡した物が契約の内容に合わなかったときの責任)を負わない特約が入ることが多い。ただし効くのは契約書の条項です。LPに書いてあるかではなく、契約書で確かめてください
  • 共有持分や再建築不可など、事故物件以外の理由も重なっている。訳あり専門の業者は、こうした条件をまとめて引き受ける前提で値付けします

逆に、買取だけで決めないでください。買取は仲介より安いのが普通なので、仲介の査定と買取の査定を両方取り、差額を見てから決めるのが順番です。査定を取っても売る義務はありません。

告知書には、買取業者に対しても正直に書きます。買取業者は宅地建物取引業者なので、指針の告知義務を負う側です。売主から聞いた内容をそのまま再販先に告げます。売主が隠して業者が知らずに再販すると、後で売主の責任になります。

事故物件・訳あり物件の買取専門【ラクウル】で無料査定を見る

事故物件・孤独死物件を買取対象に明記している業者の一つです。査定は無料で、査定を取っても売る義務はありません。仲介の査定と並べて差額を見てください。

売る前に残しておくもの

告知は「調べて分かった範囲」を告げればよい、と指針は書いています。裏返すと、根拠になる書類が手元にないと、正確に言えなくなります。片づける前に、次のものを残してください。

親が亡くなった実家を売る前に残しておく8つのことのチェックリスト
片づける前・業者に頼む前・契約の前の3段階です。

遺品の片付けと残置物の扱いは実家の残置物は誰が片づけるのか|解体業者に任せられない理由に書きました。書類を残してから片づける、の順です。

進める順番

  1. 死因を確かめる。病死・老衰・日常の事故なら、原則として告知は要らない。自死・事件・事故死なら告知が要る
  2. 発見が遅れて特殊清掃をしたかを確かめる。したなら、病死でも告知が要る。領収書と作業内容を残す
  3. 告知書(物件状況等報告書)に、時期・場所・死因・特殊清掃の有無を自分で書く。氏名や発見状況は書かなくてよい
  4. 仲介の査定と、買取業者の査定を両方取る。差額を見て、早さと責任の軽さにいくら払うかを決める
  5. 契約書で、契約不適合責任の免責と仲介手数料の有無を確かめる
  6. 買主に聞かれたら、期間や死因に関わらず、分かる範囲で答える。不明なら不明と伝える
家族に送る用(コピーしてLINEへ)

親が家で亡くなった実家を売るときのこと、調べたので共有します。

  • 病気や老衰、日常の事故で亡くなった場合は、国交省の指針では原則として買う人に伝えなくてよいとされています
  • 伝える必要があるのは、自死・事件・事故死と、発見が遅れて特殊清掃や大きなリフォームをした場合です
  • 伝えるのは時期・場所・死因・特殊清掃の有無だけで、名前や見つかったときの様子は要りません
  • 売り方は仲介・買取・解体の3つで、買取は早いけれど安くなります
  • 仲介と買取の査定を両方取ってから決めたいです。どう思いますか

よくある質問

よくある質問①

親が実家で病気で亡くなりました。事故物件になりますか

原則としてなりません。国土交通省のガイドライン(令和3年10月)は、老衰や持病による病死などの自然死と、階段からの転落・入浴中の事故・食事中の誤嚥などの日常生活の中の不慮の死について、賃貸・売買とも原則として告げなくてよいとしています。ただし、発見が遅れて特殊清掃や大規模リフォームをした場合は、病死でも告知の対象です。買主から問われた場合も答えます。

よくある質問②

孤独死で特殊清掃をしました。いつまで告知が必要ですか

売買には、期間の目安がありません。ガイドラインで「概ね3年」と書かれているのは賃貸だけで、売買については期限を示していません。告げる内容は、発覚時期・場所・死因(不明なら不明)・特殊清掃をした旨の4つで、氏名や発見状況は要りません。買主に聞かれた場合は、経過した期間に関わらず答える、とガイドラインは書いています。

よくある質問③

事故物件は、仲介と買取のどちらで売るべきですか

両方の査定を取ってから決めてください。仲介は買主に直接売るので高く売れやすい一方、告知が要る物件は買い手が付きにくく時間がかかります。買取業者は仲介手数料がなく早く現金になりますが、仲介より安くなるのが一般的です。買取を選ぶなら、契約不適合責任を売主が負わない条項が契約書にあるかを確かめてください。査定を取っても売る義務はありません。

よくある質問④

解体して更地にすれば、告知しなくてよいですか

そうとは言えません。ガイドラインは「人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱い」を、裁判例や実務の蓄積がないため対象外にしています。告知不要と言っているわけではなく、判断基準を示していないだけです。買主から問われたら答える、が安全側です。解体費用と補助金は別記事にまとめています。

よくある質問⑤

隣の家で事件がありました。うちを売るとき告げる必要はありますか

原則として要りません。ガイドライン4.(1)③は、取引対象の隣接住戸や、買主が日常生活で通常使用しない集合住宅の共用部分で自然死以外の死や特殊清掃があった場合について、賃貸・売買とも原則として告げなくてよいとしています。ただし「事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない」との但し書きがあり、買主から問われた場合は答えます。

出典

  • 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)
  • 国土交通省 報道発表「『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』を策定しました」(令和3年10月8日)
  • 警察庁「令和7年中における死体取扱状況(警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者)について」(令和8年3月31日)/警察庁刑事局捜査第一課「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和7年)」年齢階層別・経過日数別(令和8年4月)
  • 総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(令和2年3月)※特殊清掃の定義(ガイドライン注11の引用元)
  • 株式会社ネクサスプロパティマネジメント「訳アリ物件の買取専門店ラクウル」(買取対象・査定無料・全国対応の記載)
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