お墓

東京・神奈川で海洋散骨をするなら|許可が要るのは船のほう。運輸局の許可・登録と、三浦市・熱海市・伊東市の海のルール

杉野 一樹

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親の遺骨を、東京湾や相模湾に還したい。そう決めて業者を探すと、「許可は要らない」という説明と、「許可を受けた業者を選ぶ」という説明が並んでいて、どちらが正しいのか分からなくなります。どちらも正しく、話している対象が違います。散骨という行為に許可は要りません。許可が要るのは、家族を乗せて沖へ出る船のほうです。この記事は、東京・神奈川で海洋散骨を頼むときに確かめることを、国土交通省と自治体の資料からまとめます。

この記事で分かること
  • 散骨そのものに許可や届出の制度はありません。東京都も「法による手続きはありません」としています。ただし、お墓から取り出すときの扱いは区市町村で違います
  • 家族を乗せる船には、海上運送法の許可か登録が要ります。旅客定員13人以上は許可、12人以下は2025年4月から登録です。業者を確かめる公的な線はここにあります
  • 首都圏の海には、自治体のルールがあります。三浦市は海での散骨にも市の指針の参照を義務づけ、熱海市は陸から10km以上、伊東市は6海里(約11km)以内を避けるよう求めています
実家じまいの5段階。お墓、仏壇・位牌、片付け、家をどうするか、解体。この記事はお墓
この記事は①お墓の中の、海に還す場合の地域の話です。

海洋散骨が法律上どう扱われているか、国のガイドラインが何を求めているか、費用の考え方は海洋散骨は違法なのか|法律に無いから、国のガイドラインで見るにまとめました。この記事は、東京・神奈川・千葉の海で頼む場合の話です。

先に、海洋散骨の案内を見たい人はこちら

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散骨に手続きは無い。ただし、お墓から取り出すときは区市町村で違う

散骨する行為そのものには、許可も届出もありません。

東京都保健医療局は「散骨に関する留意事項」で、国が「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない」との見解を示していることを紹介したうえで、「散骨は『墓地、埋葬等に関する法律』に規定されていない行為であるため、法による手続きはありませんが、念のため、地元の自治体に確認することをお勧めします」と書いています。横浜市も「散骨するにあたり現行の法令上の許可手続は必要ありません」と案内しています。

違いが出るのは、いまお墓に納めてある遺骨を取り出して散骨する場合です。東京都は、他のお墓や納骨堂へ移すなら改葬許可が必要としたうえで、「散骨のために取り出す場合は、区市町村により取扱いが異なります」と書いています。

実際に、神奈川県の三浦市は「すでにお墓に埋葬しているご遺骨を取り出して散骨する場合は、改葬許可申請が必要です」と案内しています。許可が要らない自治体もあれば、要る自治体もある、ということです。

  • まだお墓に納めていない遺骨(自宅で保管している遺骨)… 散骨に手続きはありません。火葬許可証(埋葬許可証)は手元に残しておきます
  • お墓や納骨堂から取り出す遺骨… お墓のある区市町村の窓口に、改葬許可が要るかを先に聞いてください。業者に聞くことではありません

改葬許可の申請の流れは墓じまいの手続きはどこへ出す?改葬許可の流れと必要書類に書きました。

許可が要るのは、家族を乗せる船のほう

散骨に許可は要りませんが、家族を乗せて沖へ出る業者には、海上運送法の許可か登録が要ります。

国土交通省は2023年9月20日に「海上散骨に関するガイドライン」を出しました。散骨事業者が守らなければならない海事関係の法令を整理したもので、最初にこう書いています。

散骨を行うに当たって、旅客を乗船させる場合は、海上運送法の規制が適用される。

旅客定員により手続きが分かれており、旅客定員13名以上の船舶は許可、旅客定員12名以下の船舶は登録を行うこと。

12人以下の船の手続きは、2025年4月1日に変わりました。東京・神奈川・千葉を管轄する関東運輸局によると、それまで届出制だった「人の運送をする内航不定期航路事業」は登録制に改められ、「内航一般不定期航路事業」になりました。届け出れば済んだものが、登録を受けなければならないものになった、ということです。

同じガイドラインは、許可や登録を受けた業者に次のことを求めています。

  • 安全管理規程を定めて届け出ることと、安全統括管理者・運航管理者を選任して届け出ること
  • 船客の損害賠償の保険を結ぶこと。関東運輸局によると、保険の限度額は2024年10月1日から、許可事業で1億円、登録事業で5,000万円に引き上げられています
  • 船長は、旅客に救命胴衣を着用させること
  • 小型船舶の操縦者は、一級か二級の免許だけでなく「特定」の免許を取ること

散骨には資格も許可もないので、業者を公的な基準で確かめられる場面はほとんどありません。船の許可・登録と保険は、その数少ない例外です。業者には「この船は許可ですか、登録ですか」「船客の賠償保険はいくらまでですか」と聞いてください。答えられない業者に、家族の乗船を任せる理由はありません。

注意:代理散骨(家族が乗らず、業者だけで撒く形)では、この確認は当てはまりません。旅客を乗せないからです。代わりに、あとで説明する散骨証明書の中身を確かめます。

首都圏の海には、自治体のルールがある

東京湾・相模湾の周りには、散骨について条例や指針を定めた自治体があります。

地方自治研究機構(RILG)は、散骨を規制する条例を2026年4月1日時点で16件確認しています。そのうち神奈川県は湯河原町・箱根町・三浦市の3件、静岡県は御殿場市・熱海市・伊東市・三島市の4件です。東京都と千葉県の自治体は、この一覧に入っていません。

  • 三浦市(神奈川県)… 2025年1月27日に「三浦市散骨場の経営等の許可等に関する条例」を施行しました。散骨場の経営には市長の許可が要り、無許可の経営は5万円以下の過料です。河川・湖沼などの公共の水域(海域を除く)と、公園・道路・海岸など公共の場所での散骨は、誰であっても禁じています(第18条第1項・第2項)。さらに「散骨(海域において行うものを含む。)を行うときは、市長が別に定める指針を参照の上、産業等への影響を十分に考慮」するよう求める規定が、2026年1月21日から施行されています(第18条第3項)
  • 湯河原町・箱根町(神奈川県)… 散骨場の経営を町長の許可制にしています。陸の散骨場についての条例です
  • 熱海市(静岡県)… 条例は陸の散骨場が対象で、海については2015年に「熱海市海洋散骨事業ガイドライン」を定めています。熱海市内の土地(初島を含む)から10キロメートル以上離れた海域で行うこと、海水浴やマリンレジャーの多い夏期は控えること、焼骨を水溶性の袋に入れて投下すること、宣伝で「熱海沖」「初島沖」など熱海を連想させる言葉を使わないことを求めています
  • 伊東市(静岡県)… 2016年の「伊東市における海洋散骨に係る指針」で、伊東市内の陸地から6海里(約11.11km)以内の海域で散骨しないこと、自然に還らないものをまかないこと、「伊東沖」など伊東を連想させる言葉を宣伝に使わないことを求めています

熱海市と伊東市が挙げている理由は同じです。海産物、海水浴、観光への風評被害です。東京都の留意事項も「海や川での散骨では、水産物などへの風評被害が生じるおそれがあります」と書いています。

ガイドラインや指針に罰則はありません。ただ、守らない業者が撒いた海の近くで、漁業者や観光業者と揉めることになれば、困るのは業者だけではありません。親族が命日にその海を訪ねたとき、そこが「散骨をやめてほしい」と言われている海だった、ということは避けたいはずです。

東京・神奈川の海洋散骨で業者に聞く8つのことのチェックリスト
船・撒く海・書類の3つに分けて聞きます。

業者に聞く8つのこと

上のチェックリストを、問い合わせのときにそのまま使ってください。

国の散骨ガイドライン(厚生労働省の研究班がまとめた散骨事業者向けのもの)は、散骨する場所を「海岸から一定の距離以上離れた海域(地理条件、利用状況等の実情を踏まえ適切な距離を設定する。)」としています。何km以上という全国の数字はありません。だから、熱海市の10km、伊東市の6海里(約11km)のように自治体が示している数字が、首都圏の海での目安になります。

特に大事なのは次の3つです。

  • どの港から出て、陸から何km離れた海域で撒くか。「東京湾で」「湘南沖で」だけで終わらせず、距離を聞きます
  • 散骨証明書に、日時と場所が書かれるか。国の散骨ガイドラインは、証明書の交付と、散骨の件数・場所を年度ごとにまとめて公表することを事業者に求めています
  • 家族が乗るなら、許可か登録か、保険はいくらまでか。ここだけは法律の義務なので、答えがはっきり出ます

代理散骨を選ぶ場合は、散骨証明書が、撒いた場所を確かめる唯一の書類になります。場所の書き方(地名だけか、位置が分かるか)を、申し込む前に聞いてください。

東京・神奈川で海洋散骨を頼む前に確かめる3つの質問の判断チャート
役所→船→海域の順に確かめます。

頼む前に確かめる順番

役所、船、海域の順に確かめてから申し込んでください。

  1. お墓から取り出す遺骨なら、お墓のある区市町村に改葬許可が要るかを聞く。三浦市のように、要ると案内している自治体があります
  2. 家族が乗るなら、業者に許可か登録かと、保険を聞く。旅客定員13人以上は許可、12人以下は登録です
  3. 散骨する海域の距離と、散骨証明書の書き方を聞く。熱海市は陸から10km以上を求めています

この記事の結論は、東京・神奈川の海洋散骨で公的に確かめられる線は「散骨」ではなく「船」と「海」にある、です。散骨には許可も届出もなく、東京都も「法による手続きはありません」としています。一方で、家族を乗せる船には旅客定員13人以上なら許可、12人以下なら2025年4月からは登録が要り、保険の限度額も許可1億円・登録5,000万円と決まっています。撒く海についても、三浦市が2026年1月から海での散骨に市の指針の参照を義務づけ、熱海市は10km、伊東市は6海里という数字を出しています。業者の説明の良し悪しを比べる前に、この2つの線を越えているかを聞けば、選ぶ相手はかなり絞れます。

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申し込む前に、上の3つ(許可か登録か・保険・散骨する海域と証明書)を聞いてください。問い合わせても契約の義務はありません。

費用と、決める前に家族で話すこと

料金の決まり方と、公表されている料金の一例は海洋散骨は違法なのか|法律に無いから、国のガイドラインで見るに書きました。

東京・神奈川で頼む場合も、料金は大きく3つの形で決まります。家族で船を借り切る形、複数の家族が同じ船に乗る形、業者に託して乗らない形です。乗る人数と、出航する港までの距離で、選ぶ形が変わります。

決める前に、家族で次のことを話しておいてください。

  • 全部を撒くか、一部を残すか。分けて手元供養や納骨堂に納める方法があります(手元供養は違法なのか|自宅に置くのは自由、庭に埋めると違反)
  • 命日に、その海へ行けるか。出航する港までの距離と、乗船できる日(年忌の法要として船を出す業者もあります)
  • 撒いたあとは戻せないことを、親族全員が分かっているか

進める順番

  1. 家族で、海に還すか、一部を残すかを決める
  2. お墓から取り出すなら、お墓のある区市町村に改葬許可が要るかを聞く
  3. 業者に問い合わせ、8つのことを聞く。家族が乗るなら許可か登録かと保険、撒く海域の距離、散骨証明書の書き方
  4. 散骨する海域の自治体に、条例や指針がないかを確かめる
  5. 見積もりと約款を受け取り、文書で契約する
  6. 親族に、日時と場所を先に伝える
  7. 散骨証明書を受け取り、保管する
家族に送る用(コピーしてLINEへ)

東京の海で散骨する場合のこと、調べたので共有します。

  • 海洋散骨そのものに、許可や届出は要りません(東京都)
  • ただ、お墓から遺骨を取り出すときの扱いは区市町村で違い、三浦市は改葬許可の申請が必要と案内しています
  • 家族が乗る船は、定員13人以上なら許可、12人以下なら登録が必要です(2025年4月から登録制)
  • 熱海市は陸から10km以上、伊東市は6海里以内を避けるよう求めています
  • 業者には、許可か登録か、保険、まく海域、証明書を聞きたいです。一緒に候補を見ませんか

よくある質問

よくある質問①

東京湾で海洋散骨をしてもいいのですか

散骨そのものを禁じる法律や、東京都の条例はありません。東京都は「法による手続きはありません」としています。ただし、東京都も水産物などへの風評被害に注意を促しています。陸から十分に離れた海域で、夏の海水浴の時期などを避けて行う業者を選んでください。

よくある質問②

海洋散骨に許可は必要ですか

散骨する行為に許可は要りません。許可が要るのは、家族を乗せて沖へ出る船のほうです。旅客定員13人以上の船は海上運送法の許可、12人以下の船は登録が必要です(国土交通省「海上散骨に関するガイドライン」)。お墓から遺骨を取り出す場合は、区市町村によって改葬許可が要ることがあります。

よくある質問③

神奈川県で海洋散骨を規制している自治体はありますか

三浦市が、海での散骨にも市の指針を参照するよう条例で求めています(2026年1月21日から)。湯河原町と箱根町は、陸の散骨場の経営を許可制にしています。隣の静岡県では、熱海市が陸から10km以上、伊東市が陸地から6海里(約11km)以内を避けるよう求めています。

よくある質問④

業者はどう選べばいいですか

公的に確かめられるのは、船の許可・登録と保険です。家族が乗るなら「許可ですか、登録ですか」「船客の賠償保険はいくらまでですか」と聞いてください。そのうえで、撒く海域の陸からの距離と、散骨証明書に日時と場所が書かれるかを確かめます。

よくある質問⑤

家族が乗らない代理散骨でも大丈夫ですか

大丈夫ですが、散骨証明書が、撒いた場所を確かめる唯一の書類になります。旅客を乗せないので、船の許可・登録の確認は当てはまりません。証明書に日時と場所がどう書かれるかを、申し込む前に聞いてください。

出典

  • 国土交通省「海上散骨に関するガイドラインを策定しました。」(2023年9月20日)、同「海上において散骨をする場合において遵守すべき海事関係法令の解説」
  • 関東運輸局「旅客船事業の申請案内」(内航一般不定期航路事業の登録制への移行、船客傷害賠償責任保険の限度額)
  • 東京都保健医療局「散骨に関する留意事項」
  • 横浜市「散骨するにあたっての手続について」
  • 三浦市「三浦市散骨場の経営等の許可等に関する条例」(令和7年三浦市条例第1号)、同「条例の制定について」
  • 熱海市「熱海市海洋散骨事業ガイドライン」(平成27年7月1日)
  • 伊東市「伊東市における海洋散骨に係る指針」(平成28年2月1日)
  • 一般財団法人地方自治研究機構「散骨を規制する条例」(令和8年4月1日更新)
  • 令和2年度厚生労働科学特別研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」
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杉野 一樹(ペンネーム)
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