アスベストの調査費は削れない|法が発注者に費用負担を求めている。80平方メートルで報告が立つ
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解体の見積書に「アスベスト事前調査費」という行が入っていて、これは削れないのかと思う人がいます。結論から言うと、削る対象ではありません。法律が、発注者にその費用を負担するよう求めているからです。この記事は、石綿障害予防規則と大気汚染防止法の条文から、実家を壊すときに誰が何をするのかを整理します。
- 大気汚染防止法18条の15第2項は、発注者に「調査に要する費用を適正に負担すること」を求めています
- 事前調査は規模にかかわらず必要です。床面積80平方メートルという線引きは、調査ではなく「報告」のほうです
- 平成18年9月1日以降に着工した建物なら、着工日を文書で確認する方法で足ります。築年を先に調べてください

解体費用の見方は家の解体費用は坪数で決まらない|見積書で見るべき7項目に、補助金は空き家の解体に補助金は使える?受付は1か月、税金は上がるに書きました。
調査費用の負担は、発注者の義務
大気汚染防止法18条の15は、解体等工事の元請業者に事前調査をさせ、その結果を書面で発注者に説明させる仕組みです。その第2項に、発注者側の義務が書かれています。
「解体等工事の発注者は、当該解体等工事の元請業者が行う前項の規定による調査に要する費用を適正に負担することその他当該調査に関し必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力しなければならない。」
「協力するよう努める」ではなく「協力しなければならない」です。調査費を見積もりから外させることは、発注者自身の義務に反します。
もう一つ、同じ法律の18条の16第1項があります。
「特定工事の発注者は、当該特定工事の元請業者に対し、施工方法、工期、工事費その他当該特定工事の請負契約に関する事項について、作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。」
工期を縮めさせる、工事費を強く値切る。それが作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件なら、この配慮義務に触れます。相見積もりで金額を比べるのは当然ですが、石綿の項目を削らせる方向の交渉は筋が違います。
調査そのものに、規模の下限はない
よくある誤解を整理します。石綿障害予防規則3条1項はこうです。
- 建築物、工作物又は船舶の解体又は改修の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査しなければならない
ここに床面積や金額の条件はありません。小さな附属屋や物置を壊すときも、調査そのものは必要です。
床面積が出てくるのは、次の「報告」のほうです。石綿則4条の2第1項は、次の工事について、あらかじめ電子で所轄労働基準監督署長に報告するよう定めています。
- 建築物の解体工事… 当該工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル以上
- 建築物の改修工事… 請負代金の額が100万円以上
- 工作物(厚生労働大臣が定めるもの)の解体・改修工事… 請負代金の額が100万円以上
- 船舶(総トン数20トン以上)の解体・改修工事
80平方メートルは約24坪なので、一般的な戸建てはほぼ該当します。
そして抜け道はふさがれています。同条4項は「同一の事業者が二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったものとみなす」としています。母屋と離れを別契約にして80平方メートル未満に見せる、ということはできません。
納屋や倉庫だけを壊すときも、調査は省けません。その解体に補助が出るかは納屋・蔵・倉庫だけの解体に補助金は出るか|19市の要綱を読むと「だけ」は0市。母屋と一緒に全部壊すのが条件の市が16で整理しました。
80平方メートルで、手続きが3つ立つ
ここが分かりにくいところです。同じ80平方メートルという数字が、別の法律にも出てきます。

- 分別解体等の計画の届出(建設リサイクル法)… 発注者が、着手の7日前までに都道府県知事へ
- 事前調査結果の報告(石綿則4条の2)… 事業者が、あらかじめ労働基準監督署長へ
- 特定粉じん排出等作業の届出(大気汚染防止法18条の17)… 発注者が、作業開始の14日前までに都道府県知事へ
3つ目は、吹付け石綿や石綿含有保温材等がある場合の届出です。条文は「届出対象特定工事の発注者又は自主施工者は、当該特定粉じん排出等作業の開始の日の十四日前までに」と書いています。
3つのうち2つは、業者ではなく発注者の義務です。実務では業者が代行しますが、義務者は施主のままなので、代行を頼むなら委任状が要ります。届出の扱いが見積書に書かれていないなら、誰が出すのかを聞いてください。
注意:14日前という期限は、工事の日程に直接効きます。吹付け石綿が見つかってから届け出るのでは、そこから2週間動けません。調査を早めに済ませておく理由がここにあります。
築年で、調査の手間が変わる
石綿則3条2項は、事前調査の方法を2つ挙げています。設計図書等の文書を確認する方法と、目視により確認する方法です。全ての材料について行います。
ただし例外があります。3条3項3号は、新築工事の着工日が平成18年9月1日以降である建物について、当該着工日を設計図書等の文書で確認する方法によることができるとしています。

つまり、実家がいつ建ったかで手間が変わります。平成18年9月1日より前の建物なら、設計図書の確認と目視が要り、それでも分からなければ次の分析調査に進みます。
見積もりを取る前に、課税明細書か登記事項証明書で新築年を見ておいてください。建物の登記事項証明書には新築の年月が記録されています。この1点を先に知っているだけで、見積書の読み方が変わります。
分析をするか、あるものとみなすか
事前調査をしても石綿の有無が明らかにならないことがあります。そのとき石綿則3条5項は分析調査を義務づけていますが、ただし書があります。
「ただし、事業者が、当該解体等対象建築物等について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限りでない。」
つまり選択肢は2つです。
- 分析調査をして、有無をはっきりさせる(費用は分析代)
- 石綿があるものとみなして、そのまま対策を講じる(費用は対策代)
どちらが安いかは、家によって変わります。分析の対象が少なければ調べたほうが安く、広範囲に疑わしい材料があるならみなして進めたほうが早いこともあります。
見積書を読むときは、どちらの前提で金額が出ているのかを聞いてください。「石綿が見つかった場合は別途」とだけ書かれていると、上限が見えません。地中障害物と同じ構図です。
現場で自分の目で確かめられる
石綿則3条8項は、作業場への掲示を定めています。
- 調査終了日
- 調査を行った部分と、材料ごとの石綿の有無の概要
解体が始まったら、現場にこの掲示があるかを見てください。除去等の作業を行う作業場には、記録の写しを備え付けることも求められています。
記録の保存期間も決まっています。事前調査等の記録は調査終了日から3年間(3条7項)、作業の記録は作業を終了した日から3年間(35条の2)です。記録には調査を行った者の氏名と、その人が資格を持つことを証明する書類の写しも含まれます。
事前調査は、厚生労働大臣が定める知識を有する者に行わせなければなりません(3条4項)。誰が調査したのかは、記録に残る仕組みになっています。
進める順番
- 課税明細書か登記事項証明書で、実家の新築年を確かめる
- 床面積を確かめる。80平方メートル(約24坪)を超えるかを見る
- 見積もりを頼むとき、事前調査の費用が含まれているかを確かめる
- 分析をする前提か、あるものとみなす前提かを聞く
- 届出を代行してもらうなら委任状を出す。吹付け石綿があれば14日前の届出を日程に入れる
実家の解体のこと、アスベストの決まりを調べたので共有します。
- 見積もりにあるアスベスト調査費は、法律で発注者が負担するものとされています
- 調査自体は大きさに関係なく必要で、80平方メートル以上だと労働基準監督署への報告も要ります
- 実家が平成18年9月より前の建物だと、調査の手間が増えます。まず新築年を確かめたいです
- 吹付けのアスベストが見つかると、届出から14日待つので日程が動きます
- 見積もりを頼む前に、課税明細書を見せてもらえますか
よくある質問
発注者です。大気汚染防止法18条の15第2項は「解体等工事の発注者は、…調査に要する費用を適正に負担することその他当該調査に関し必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力しなければならない」と定めています。努力義務ではないので、見積もりから外させるのは発注者自身の義務に反します。
規模にかかわらず必要です。石綿障害予防規則3条1項は、解体または改修の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査しなければならないとしていて、床面積や金額の下限がありません。床面積80平方メートル以上という線引きは、調査ではなく労働基準監督署長への「報告」の要件です。
要ります。石綿障害予防規則3条1項は、解体または改修の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査しなければならないとしていて、床面積や金額の条件がありません。100万円や80平方メートルという数字は、調査の結果を労働基準監督署長に報告する義務がかかるかどうかの線です(同規則4条の2)。建築物の改修工事は請負代金100万円以上、解体工事は床面積80平方メートル以上で報告が要ります。報告するのは、工事を請け負った業者です。解体は金額ではなく床面積で決まるので、請負代金が100万円未満でも、床面積が80平方メートル以上なら報告が要ります。
必要ですが、方法が簡単になります。石綿則3条3項3号により、新築工事の着工日が平成18年9月1日以降の建物は、その着工日を設計図書等の文書で確認する方法によることができます。それより前の建物は、設計図書の確認と目視を行い、明らかにならなければ分析調査に進みます。
石綿があるものとみなして措置を講じる方法があります。石綿則3条5項ただし書に定められています。分析の費用はかかりませんが、対策の費用は上がります。どちらが安いかは疑わしい材料の範囲によって変わるので、見積書がどちらの前提で作られているかを確かめてください。
出典
- 石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)第3条・第4条・第4条の2・第5条・第35条の2(e-Gov法令検索)
- 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第18条の15・第18条の16・第18条の17(e-Gov法令検索)
- 建設リサイクル法にもとづく分別解体等の計画の届出(床面積80平方メートル以上、着手の7日前まで、発注者から都道府県知事へ)

