納屋・蔵・倉庫だけの解体に補助金は出るか|19市の要綱を読むと「だけ」は0市。母屋と一緒に全部壊すのが条件の市が16
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実家の敷地に、使っていない納屋や蔵、倉庫が残っている。母屋はまだ使うので、古い納屋だけ先に壊したい。そう考えて補助金を探すと、ほとんどの場合、行き止まりになります。当サイトが自治体の要綱を読んだ範囲では、納屋や蔵だけの解体を補助の対象にしている市は、1つも見つかりませんでした。この記事は、政令指定都市を中心に31自治体の補助金の要綱とQ&Aから、付属の建物がどう扱われているかを整理します。
- 制度の中身を読めた19市のうち、付属の建物だけの解体を対象にしている市は0でした。16市は、母屋を含めて敷地内を全部壊すことが条件です
- 母屋と一緒に壊す場合でも、納屋や倉庫の分の費用は補助の計算に入れない市があります
- ビニールハウスや農業用倉庫の撤去に使える国の制度は、災害で壊れた場合を除いて見つかりませんでした

31自治体の要綱を読んだ結果:「付属の建物だけ」は0市
解体の補助金は、国ではなく市区町村の制度です。対象になる建物も、市ごとに要綱で決まっています。政令指定都市20市と、要綱やQ&Aをウェブで読めた11市町について、付属の建物(納屋・蔵・倉庫・物置・車庫など)の扱いを原文で確かめました(2026年10月12日)。
31自治体のうち12は、空き家一般の解体補助を確認できなかったか、付属の建物についての記載がありませんでした。残りの19市を分類した結果です。

- 付属の建物だけの解体も対象… 0市
- 付属の建物は対象外と明記… 3市(横浜市、静岡市、射水市)
- 母屋と一緒に壊すなら対象に含む… 4市(広島市、名古屋市、松山市、十日町市)
- 敷地内を全部壊すことが条件… 16市(札幌市、仙台市、相模原市、静岡市、浜松市、名古屋市、神戸市、北九州市、熊本市、松山市、長野市、山形市、山口市、十日町市、千曲市、北本市)
1つの市が2つの区分に入ることがあります。「0市」は、調べた範囲で見つからなかったという意味で、全国に1つも無いという意味ではありません。ただ、政令指定都市20市をすべて当たって0だったので、あてにできる制度ではないと言えます。
なぜ「納屋だけ」は対象にならないのか
市の補助金は、放置された空き家が倒れたり、周りに迷惑をかけたりするのを防ぐためのものです。だから多くの市は、「住宅」を壊して「更地にする」ことを条件にしています。要綱の原文を見ると、線の引き方がよく分かります。
- 十日町市… 対象は「市内の住宅や店舗等(敷地内にある住宅などに付随する附属家のみの除却は除く)」
- 射水市… 「納屋、倉庫、店舗等の非居住用建物は補助の対象とはなりません」
- 名古屋市… 対象は居住用の家屋で、「居住用の家屋以外の空き建築物は対象外となります(工場、事務所、倉庫 等)」
- 浜松市… 更地にする予定であることが条件で、「小屋、立ち木などの附属物も併せて除却する必要があります」
国の制度(空き家対策総合支援事業)の要綱は、対象を「空家等」としていて、住宅に限る文言はありません。対象を住宅に絞っているのは、市の要綱の側です。つまり、付属の建物を対象にするかどうかは市の判断で、今後広がる余地はあります。長野県千曲市は2026年4月の改正で、特定空家等に認定された建物だけを壊す場合は「更地にする工事でなくても補助対象となります」としました。
母屋と一緒に壊すとき:納屋の分は出ないことがある
「それなら母屋と一緒に全部壊せば、納屋の分も補助が出るのか」というと、これも市によって違います。
- 静岡市… 敷地内の建物を全部壊して更地にすることが条件。ただし補助の対象は「空き家の母屋部分の解体(除却)に要する費用」だけで、「離れ、倉庫やカーポートなどの解体(除却)に要する費用」は対象外。補助は母屋の解体費の2分の1以内、上限100万円
- 北九州市… 母屋と別棟の物置を一緒に壊しても、「母屋と併せて1棟扱い」で、上限は1棟分の30万円
- 松山市… 対象は「住宅(住宅に附属する納屋、車庫等を含む。)」。補助は対象経費の5分の4、上限100万円(島しょ部は160万円)
- 神戸市… Q&Aで、敷地内の倉庫・蔵・門・車庫なども原則として壊す必要があるとしている
静岡市の形がいちばん厳しく、「壊すことは条件だが、その分のお金は出ない」になります。見積もりを取るときは、母屋の分と、納屋・蔵・倉庫の分を分けて書いてもらってください。補助の申請で、母屋の分だけの見積書を求められる市があります。
母屋と納屋・蔵を一緒に壊す場合と、納屋だけを壊す場合で、費用を分けて出してもらうと比べやすくなります。見積もりを取っても契約の義務はありません。補助金を使う場合は、交付決定の前に契約しないでください。
受付の期間と予算にも注意が要ります。2026年度の受付をすでに終えている市や、予算の残りが少ない市が多くありました。補助金の申請の順番と、更地にしたあとの固定資産税は空き家の解体に補助金は使える?受付は1か月、税金は上がるに、解体費の見積書で見る項目は家の解体費用は坪数で決まらない|見積書で見るべき7項目に書きました。
静岡市も、敷地の中を全部壊して更地にするのが条件です。ただ、補助の計算に入るのは母屋の分だけで、離れや倉庫の解体費は入りません(静岡県の23市の空き家解体補助金を市ごとに比べた|18市に制度。静岡市は上限100万円、浜松市は相続した家だけ。4市は今年度の受付終了)。
ビニールハウス・農業用の倉庫:使えるのは災害のときだけ
農家だった実家には、ビニールハウスや農業用の倉庫が残っていることがあります。離農や老朽化を理由に撤去する費用を補助する国の制度は、当サイトの調べでは見つかりませんでした。
- 見つかった制度… 災害で壊れた農業用ハウスなどの撤去・再建への支援(農地利用効率化等支援交付金の被災農業者支援タイプなど)。営農を続ける人が対象
- ビニールなどの廃プラスチック… 農林水産省は、農業生産者が「産業廃棄物の排出事業者として、自らの責任において」処理しなければならないとしている
ビニールハウスの骨組みやビニールは、家庭ごみとしては出せません。産業廃棄物として処理できる業者に頼むことになります。市町村が独自に撤去を支援している場合もあるので、農業委員会か市町村の農政の窓口に聞いてください。畑や田んぼが一緒に残っている場合の届出は実家に田畑が付いてきたら|農業委員会への届出が別に要る。怠ると10万円以下の過料に書きました。
プレハブの物置や小屋も、扱いは納屋や倉庫と同じです。住宅ではないので、単独では空き家の解体補助の対象になりにくく、母屋と一緒に壊す場合に含まれるかどうかを市に確かめることになります。
蔵を壊す前に:指定がないかを確かめる
古い蔵や土蔵は、壊す前に確かめることがあります。文化財や景観の指定を受けていると、届出や許可が要ります。
- 登録有形文化財… 壊す30日前までに、文化庁長官へ届出(文化財保護法第64条)
- 伝統的建造物群保存地区の中… 壊すには許可が要る
- 景観重要建造物… 壊すには景観行政団体の長の許可が要る(景観法第22条)
- 歴史的風致形成建造物… 壊す30日前までに、市町村長へ届出
指定があると、解体の補助が使えない市もあります。浜松市は、空き家と付属する工作物が「文化財等に指定されていないこと」を条件にしています。
逆に、蔵を残して直す場合に補助が出る地域があります。栃木市は、歴史的な町並みの区域で、土蔵や見世蔵の修理に補助を出す要綱を設けています(当サイトが読めたのは2016年施行の版で、今の内容は市に確かめてください)。蔵のある地域では、「壊す補助」より「直す補助」のほうが見つかることがあります。市の文化財や景観の担当課に、一度聞いてみてください。
補助が出なくても、やることは同じ
補助金が使えなくても、壊す前と壊したあとの手続きは変わりません。

- 石綿(アスベスト)の事前調査… 建物の大きさに関係なく必要。納屋や倉庫のスレート屋根には、石綿が入っていることがある
- 建設リサイクル法の届出… 壊す建物の床面積の合計が80㎡以上なら、着手の7日前までに届け出る
- 滅失登記… 登記のある建物を壊したら、1か月以内に申請する(不動産登記法第57条)
- 登記のない建物… 市区町村に取り壊しを届ける。鹿児島市は「取り壊した年の年末までに電話等によるご連絡が必要です」と案内している
古い納屋や物置は、登記されていないことがよくあります。登記が無くても、固定資産税はかかっています。壊したのに届け出ないと、翌年も税金の計算に入ったままになることがあります。固定資産税は1月1日の状態で決まるので、年内に壊して、年内に届けるのが確実です。
石綿の事前調査はアスベストの調査費は削れない|法が発注者に費用負担を求めている。80平方メートルで報告が立つに、滅失登記の手続きは実家を壊したら1か月以内|建物滅失登記の期限と10万円以下の過料。名義が親のままでもできるにまとめています。
進める順番
- 母屋をどうするかを先に決める。母屋も壊すなら、補助金の対象になる可能性がある
- 市の空き家の担当課に、付属の建物の扱いと、更地にする条件を聞く。要綱やQ&Aを読む
- 蔵がある場合は、文化財や景観の指定がないかを市に確かめる
- 見積もりは、母屋の分と付属の建物の分を分けて取る。石綿の事前調査も頼む
- 補助金を使う場合は、交付決定を受けてから契約する
- 壊したら、滅失登記か、市区町村への届出を年内に済ませる
母屋も含めて壊すときに使える補助金の上限額と、2026年度の受付状況は、政令市20市を空き家の解体補助金を政令市20市で比べた|制度があるのは15市、上限は20万〜100万円。千葉市と静岡市は10月の時点で今年度の受付が終わっていたで比べました。
実家の納屋や蔵の解体のこと、調べたので共有します。
- 納屋や蔵だけを壊す場合、市の補助金はほぼ使えないようです
- 母屋と一緒に敷地を全部更地にするなら、補助が出る市があります。ただし納屋の分は出ない市もあります
- 蔵は、文化財や景観の指定があると、壊す前に届出や許可が要ります
- 登記していない納屋も、壊したら役所に届けないと税金がかかり続けることがあります
- 母屋をどうするか、先に話し合えますか
よくある質問
ほとんどの市で使えません。当サイトが31自治体の要綱とQ&Aを調べ、制度の中身を読めた19市を分類したところ、付属の建物だけの解体を対象にしている市は0でした。16市は、母屋を含めて敷地内を全部壊すことを条件にしています。
市によります。松山市は、住宅に附属する納屋や車庫を対象に含めています。静岡市は、全部壊すことを条件にしたうえで、離れや倉庫の解体費は補助の対象外としています。見積もりは、母屋の分と分けて取ってください。
離農や老朽化を理由にした国の制度は、見つかりませんでした。あるのは、災害で壊れたハウスの撤去や再建への支援です。ビニールなどは産業廃棄物として処理する必要があります。市町村の独自の支援は、農政の窓口に確かめてください。
市区町村に、取り壊したことを届けます。登記が無くても固定資産税がかかっているためです。届け方は市によって違い、電話でよい市も、家屋滅失届を出す市もあります。登記のある建物は、1か月以内に滅失登記を申請します。
出典
- 札幌市、仙台市、相模原市、横浜市、静岡市、浜松市、名古屋市、神戸市、広島市、北九州市、熊本市、松山市、長野市、山形市、山口市、十日町市、射水市、千曲市、北本市の空き家解体補助の要綱・案内・Q&A(2026年10月12日確認)
- 国土交通省「住宅市街地総合整備事業制度要綱」(空き家対策総合支援事業)、「空き家再生等推進事業」
- 農林水産省「農業由来廃プラスチックの適正処理」「農地利用効率化等支援交付金(被災農業者支援タイプ)」
- 文化財保護法、景観法、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律、栃木市歴史的町並み景観形成補助金
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、環境省の石綿の事前調査の案内、不動産登記法、鹿児島市「家屋を取り壊した時」、千葉市の固定資産税のよくある質問

