樹木葬で後悔する人は何を見落としたのか|契約前に確かめる5つの条件
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親のお墓を樹木葬にしようか迷っているとき、「後悔した」という言葉を見ると手が止まります。何を後悔したのかが分かれば、避けられるかどうかも分かります。
- 後悔の多くは「樹木葬」という言葉が、中身の違う複数の方式をまとめて指していることから起きている
- 分かれ目は「遺骨を後から取り出せるか」「個別に置かれる期間は何年か」「年間管理費があるか」の3つ
- この3つは、パンフレットではなく使用規則と契約書に書いてある

実家じまい全体の流れと、先に確かめる期限は実家じまいは何から始める?5つの段階と、かかるお金の全体像にまとめています。
後悔のほとんどは「樹木葬」という言葉のあいまいさから起きている
樹木葬は、ひとつの決まった方式ではありません。厚生労働科学研究費の報告書は、樹木葬型墓地を形と埋蔵の仕方でそれぞれ3通りに分けています。組み合わせが違えば、できることも変わります。樹木葬そのものの仕組み(契約は「埋蔵と管理の委託」であること)と3つの型、公営と民営の費用の実額は樹木葬とは何か|仕組み・3つの型・費用の実額と、永代供養との違いを国の約款で読むに書きました。
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| 分け方 | 3つの型 | 何が変わるか |
|---|---|---|
| 形 | 既存の山林の木の根元/モニュメントの大木の周囲/墓所区画に低木を植える | 行きやすさ、見た目 |
| 埋蔵の仕方 | 骨壷のまま/布袋に移す/樹木の根元に直接 | 後から取り出せるかどうか |
この整理は、公益社団法人全日本墓園協会の研究員がまとめた「いわゆる『樹木葬型墓地』に関する問題点の整理」(厚生労働科学特別研究事業)によるものです。
同じ「樹木葬」でも、骨壷のまま埋める施設と、遺骨を布袋に移して他の人と一緒に納める施設があります。後者は、後から個人の遺骨を取り出すことができません。ここを確かめずに契約したことが、後悔として語られている中身です。

見落とし1 遺骨を後から取り出せるか
最も戻せないのがここです。埋蔵の仕方が「布袋に移す」「直接まく」であれば、あとで別の場所へ移したくなっても動かせません。
東京都立小平霊園の樹林型合葬埋蔵施設は、申込者自身が遺骨を骨壷から布袋に移し、施設側がそれを受け取って、他の人の布袋と一緒に共同埋蔵施設へ納める方式です。共同埋蔵施設はひとつで500袋ほど、施設全体でおよそ1万体の収容能力があります。都立霊園の令和8年度の倍率と使用料、申込資格は東京で親のお墓を探すなら|都立霊園の倍率・使用料・申込資格を数字でにまとめました。
こういう方式は費用を低く抑えられます。その代わり、納めた時点で個別に取り出す前提がなくなります。
取り出せる前提がないと、次のような場面で困ります。
- 数年後に子どもが「やはり近くへ移したい」と言い出した
- 一緒に納めるつもりだった配偶者が、別の方式を希望した
- 施設の経営が変わって、移すことを考えた
なお、小平霊園の樹林墓地は2020年度を最後に募集が止まっています。今の都立の樹林型は多磨霊園と雑司ケ谷霊園です(小平霊園の樹木葬は、今は申し込めない|樹林墓地は2020年度、樹木墓地は2022年度が最後。都立の樹林型は多磨・雑司ケ谷に移った)。
遺骨の扱い方は、パンフレットの写真からは分かりません。使用規則と契約書に「骨壷のまま」なのか「布袋に移す」なのかが書いてあります。窓口で口頭の説明を受けたら、その内容が書面のどこにあるかを指してもらってください。
見落とし2 個別に置かれる期間と、そのあと
樹木葬の多くは、個別に置かれる期間が決まっています。公営の樹木葬では有期限が原則で、期間が終わると他の人と一緒に合祀されます。
ここで誤解が起きやすいのが「永代供養」という言葉です。永代供養は「寺や霊園が供養を続ける」という意味であって、「ずっと個別の場所に置く」という意味ではありません。13回忌まで、33回忌まで、といった期間を区切っている施設が多くあります。
確かめるのは2つです。
- 個別に置かれる期間は何年か
- その期間が終わったら、遺骨はどうなるか
この2つが契約書に書かれていない施設は、契約前に書面で示してもらってください。
見落とし3 年間管理費があるか
樹木葬は「安い」と言われます。ただし施設の維持そのものには、相応の費用がかかっています。
前述の報告書は、横浜市営メモリアルグリーンの合葬式樹木型納骨施設(3,000体)について、年間の管理費を試算しています。人件費が約1,234万円、植栽の管理が約6,228万円、建物や工作物の管理が約772万円などで、合計は年8,496万円、1体あたりに直すと年28,321円です。
樹木葬は木や芝生を維持するので、石のお墓より植栽の手入れに費用がかかります。高木199本、中木308本、低木2,346平方メートル、芝生16,688平方メートルの手入れが、この試算の中身です。
この費用を使用料に含んでいる施設と、毎年の管理費として別に集める施設があります。どちらなのかを契約前に確かめてください。含まれている場合でも、何年分が含まれているかは施設ごとに違います。
見落とし4 実際に行ける場所か
樹木葬の形のひとつは、既存の山林を使い、生えている木の根元に遺骨を納めるものです。自然の中という言葉のとおりですが、山の中にあるということでもあります。
鎌倉新書が2026年に733人へ行った調査では、墓じまいを考えた理由の1位は「お墓が遠方にある」で52.0%でした。遠くて通えないから墓じまいをした人が、次に選んだ樹木葬もまた遠かった、というのでは同じことの繰り返しになります。
見るのは距離だけではありません。
- 駐車場から墓所まで、どのくらい歩くか
- 足元は舗装されているか、傾斜はあるか
- 冬に雪が積もる場所か
- 参拝できる時間帯と、休みの日はあるか
写真では分かりません。契約前に一度、実際に行ってください。足腰が弱くなってから通う場所です。
見落とし5 家族と親族が納得しているか
費用よりも揉めやすいのが、ここです。
墓じまいパートナーズが2026年に経験者230人へ行った調査では、大変だったこととして「親族との話し合い」を17.3%が挙げています。費用の13.5%より高い割合です。お寺とのやり取り38.5%、手続きや書類23.1%に続く3番目でした。
樹木葬は、お墓の形が見えないことに抵抗を持つ人がいます。決めてから伝えるのではなく、場所と方式を決める前に、お参りに行く可能性のある人へ先に伝えてください。
実家の宗旨と菩提寺も、決める前に確かめる項目です。「永代供養」で後悔する前に|宗旨と、菩提寺との関係を確かめるにまとめました。
樹木葬は散骨ではありません
混同されやすいので、制度の位置づけを書いておきます。
樹木葬は、法律の上ではお墓です。厚生労働省は2006年10月22日の通知(健衛発第1022001号)で、「樹木の苗木を植える方法」も「土や落ち葉をかける方法」も、墓地埋葬法第4条でいう「焼骨の埋蔵」に当たるという見解を示しました。つまり、都道府県知事の許可を受けた墓地でしか行えません。
一方の散骨は、遺骨を埋めずにまくものです。厚生労働省の現在の解釈では、墓地埋葬法の規定には当たらないとされています。
前述の報告書も、お墓や墓碑が見えないことから、樹木葬が散骨と混同されて理解されている例は珍しくない、と書いています。「自然に還る」という言葉の印象と、制度上の扱いはずれています。山林に自由に埋めてよいわけではありません。
それでも樹木葬を選ぶ人は多い
ここまで注意点を書きましたが、選ばれている方式であることも事実です。
鎌倉新書の調査では、墓じまいのあとの遺骨の移し先として、樹木葬は24.1%で2番目に多い選択でした。1位は永代供養墓(合祀・合葬)の43.2%、3位が新しい一般墓の14.3%、4位が納骨堂の13.3%です。
1位の永代供養墓にも、個別に置かれる期間と、そのあと合祀されるという同じ構造があります。違いは永代供養とは何か|「永代」はずっと個別に置くという意味ではないにまとめました。
樹木葬へ移すには、いまのお墓を片づける費用も同時にかかります。総額の分布と、高くなる3つの条件は墓じまいの費用はいくら?実際に払った733人の分布と高くなる3つの条件にまとめてあります。
いまのお墓の撤去は石材店に頼みます。費用は石材店ごとに違うので、樹木葬の契約の前に、複数の見積もりで総額を確かめてください。見積もりを取っても契約の義務はありません。
理由ははっきりしています。承継する人がいなくても契約でき、石のお墓を建てるより費用が低いからです。学術誌に発表された調査では、樹木葬の費用はおおむね30〜50万円からが基本とされていました。
需要の強さも数字に出ています。横浜市営の合葬式樹木型納骨施設では、遺骨をまだ持っていない生前の申込者が、遺骨を持っている申込者の10倍を超えることが常態だと報告されています。
樹木葬で後悔しないように、調べたことを共有します。
- 後悔の多くは「遺骨を取り出せない」「個別の期間が終わって合祀された」「年間管理費があった」の3つです
- どれも、契約書に書いてあることでした
- 決める前に使用規則を読んで、一度は現地を見たいです
- 気になっている所があれば、使用規則を一緒に読みませんか
契約前に、紙で確かめる5つのこと
窓口へ持って行くための一覧です。印刷して使ってください。

見学の場では、良い面の説明が中心になります。書面のどこに書いてあるかを尋ねるだけで、確認は進みます。答えられない、書面が出てこないという場合は、その施設を候補から外す判断材料になります。
よくある質問
大きくは3つです。遺骨を後から取り出せない方式があること、個別に置かれる期間に区切りがあること、そして木や芝生の維持に費用がかかることです。どれも施設によって違うので、欠点というより「確認しないと後で困る点」です。
比べる対象がずれています。永代供養は「寺や霊園が供養を続ける」という仕組みの名前で、樹木葬はお墓の形の名前です。納骨堂だけは法律で定義された施設で、経営に許可が要ります(納骨堂とは何か|許可が要る施設だから、帳簿を見せてもらえる)。樹木葬の多くは永代供養がついています。費用でいえば、合祀の永代供養墓が最も低く、次に樹木葬、納骨堂、新しい一般墓の順になります。
施設によります。個別の期間を10年、13回忌まで、33回忌までと定めている施設があり、その期間が過ぎると合祀されます。期間の定めがない施設もあります。契約書の「使用期間」の項目を確認してください。
合祀を前提にした最も簡素な形であれば、それに近い金額の施設もあります。ただし学術誌に発表された調査では、おおむね30〜50万円からが基本とされていました。極端に安い金額を見たときは、個別に置かれる期間と、年間管理費の有無を先に確かめてください。
多いのは「永代供養と書いてあったのに期間があった」「後から遺骨を取り出せなかった」「管理費の説明がなかった」という、契約内容の認識のずれです。契約に関する困りごとは、お住まいの消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談できます。
出典
- 厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)分担研究報告書「いわゆる『樹木葬型墓地』に関する問題点の整理」(公益社団法人全日本墓園協会 横田睦)
- 厚生労働省「樹木葬森林公園に対する墓地、埋葬等に関する法律の適用について」2006年10月22日 健衛発第1022001号
- 墓地、埋葬等に関する法律
- 鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」2026年1月(有効回答733件)
- 墓じまいパートナーズ「墓じまい実態調査2026」(経験者・検討者230人)
- 宗教法学会「宗教法」第27号「いわゆる『樹木葬』に関する考察」2008年

