お墓

離檀料は払わないといけないのか|相場の根拠、断り方、証明を出してもらえないときの手続きと、閉眼供養のお布施の書き方

杉野 一樹

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寺院墓地の墓じまいで、一番言い出しにくいのが離檀です。「離檀料はいくらか」「払わないとどうなるか」「証明を出してもらえなかったら」。答えを先に書くと、離檀料は寺へのお礼のお布施で、法律にも契約の雛形にも金額の定めはなく、証明を出してもらえなくても改葬許可の道は法令に用意されています。この記事は、その根拠を国民生活センター、厚生労働省の標準契約約款、墓埋法施行規則で示し、話の順番と、閉眼供養のお布施の書き方までまとめます。

この記事で分かること
  • 離檀料は「寺にお礼として支払うお布施の意味を持つもので、料金に明確な基準はありません」(国民生活センター)。法律上の支払い義務はなく、契約書に金額がなければ債務にもなりません
  • 墓地の契約は、使用者が書面でいつでも解除できます。厚生労働省の標準約款がそう定めています。払った使用料は戻りませんが、離檀を止める権利は寺にありません
  • 寺が埋蔵証明を出さない場合、墓埋法施行規則は「市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」で申請できると定めています。市区町村に相談してください
  • 閉眼供養のお布施の表書きは「御布施」。浄土真宗は「魂を抜く」という考え方をとらないので、呼び方が違います
実家じまいの5段階。お墓、仏壇・位牌、片付け、家をどうするか、解体。この記事はお墓
この記事は①お墓の中の、寺との別れ方の話です。

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離檀料とは:法律にも約款にもない「お礼のお布施」

離檀料という言葉は、法律には出てきません。檀家をやめる(離檀する)ときに寺へ渡すお金を、慣習的にそう呼んでいるだけです。

国民生活センターは、消費者トラブルFAQ「改葬したいと伝えたら、寺から高額な離檀料を請求された。納得できない。」への回答で、こう書いています。

「離檀料は、寺にお礼として支払うお布施の意味を持つもので、現状は、料金に明確な基準はありません。」

そのうえで、基本的には当事者間での話し合いになる、納得できなければ消費者ホットライン「188」に相談を、としています。「基準はない」と国の相談機関が明言しているのが出発点です。

同じ国民生活センターに、墓に関する相談は2023年度1,046件、2024年度1,018件、2025年度1,077件寄せられています。挙げられている事例は「遠方の寺院の永代供養墓に納骨している両親の遺骨を近隣の霊園へ移したいが、寺院から高額な離檀料を請求された」「菩提寺に墓じまいを依頼したところ、高額な離檀料を請求されたが、規約などの定めもなく請求根拠が不明」。「規約などの定めもなく」が、この記事の核です。

「相場は3万〜20万円」の根拠

検索すると「離檀料の相場は3万〜20万円」「10万〜30万円」と出てきますが、公的な統計はありません。業者や寺の経験則です。このサイトの墓じまいの費用はいくら?実際に払った733人の分布と高くなる3つの条件では、離檀料の目安を「0〜20万円。請求されないことも多い」とし、墓じまい経験者230人の調査ではお布施の額が5〜10万円で23.8%と最も多く、5万円未満も19.0%いた、と書きました。「払っていない」「5万円未満」を合わせると、半分近くが少額か無償で離檀しています。

一方で、数十万円から100万円を超える額を提示された、という相談も実際にあります。相場という言葉で覚えるより、「基準がないから、寺によって0円から100万円超まで幅がある」と理解してください。幅があるのは、根拠がないからです。

払わないとどうなるか:契約は書面でいつでも解除できる

「払わないと墓じまいをさせてもらえないのでは」という不安に、答えを用意しておきます。

厚生労働省は平成12年12月6日、「墓地経営・管理の指針等について」(生衛発第1764号)で、墓地の契約の雛形「墓地使用に関する標準契約約款」を示しました。その第8条はこうです。

「第8条 使用者は、書面をもっていつでも契約を解除することができる。」

続く第2項は「使用者は既に支払った使用料及び管理料の返還を請求することはできない」と定めています。つまり、離檀(墓地使用契約の解除)は、使用者が書面で申し出ればできる。寺の承諾は要件になっていません。払った使用料が戻らないのは、使用者側の都合による解除だからです。約款の解説は、この規定を「使用者側の事情で改葬の必要が生じた場合等において、使用者がいつでも契約の解除権を行使できるようにするため」と説明しています。

この標準約款は雛形で、実際の墓地使用規則は寺ごとに違います。だからまず、手元の「墓地使用許可証」や「墓地使用規則」に離檀料の記載があるかを見てください。記載があれば契約上の債務として扱われます。記載がなければ、離檀料は契約に基づく請求ではなく、お礼のお布施の求めです。墓じまいの費用はいくら?にも書いたとおり、許可証に離檀料の記載があるケースはほとんどありません。

払わない選択をしたときに、寺が実際にできることは一つだけです。改葬許可申請に必要な「埋蔵証明」を出さない、という対応です。次の章で扱います。

離檀料を求められたときの判断チャート
契約書→納得できる額か→証明を出してもらえるか、の順です。

証明を出してもらえないとき:「準ずる書面」で申請できる

改葬には、いま遺骨がある市区町村の改葬許可が要ります。その申請に添える書類を定めているのが、墓地、埋葬等に関する法律施行規則の第2条です。第2項第1号は、こう書いています。

「墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)」

括弧の中が答えです。管理者(寺)の証明が得られない「特別の事情」がある場合は、市町村長が必要と認める「準ずる書面」で申請できる、と法令が定めています。何を準ずる書面とするかは市区町村の判断で、たとえば個人が管理する墓地からの改葬について、墓地台帳の写しや、死亡者の氏名が彫られた墓石の写真を添付するよう案内している自治体があります。

やることは、寺と押し問答を続けることではなく、改葬許可を出す市区町村の窓口に「管理者の証明が得られない」と相談することです。窓口は戸籍の担当課であることが多く、手数料は無料の自治体が多い。手続きの全体と必要書類は墓じまいの手続きはどこへ出す?改葬許可の流れと必要書類に書きました。

注意:これは最後の手段です。準ずる書面で許可が下りても、遺骨を取り出す作業は寺の敷地で行います。寺との関係を切らずに終える方が、作業もその後も楽です。次の章の順番で話せば、多くの場合、証明の拒否まで行きません。

話の順番:金額より先に、納め先と事情を決めておく

離檀料の話がこじれるのは、順番が逆になったときです。「墓じまいします。離檀料はいくらですか」から入ると、寺は金額の話しかできなくなります。

  1. 納め先を先に決める。永代供養墓・樹木葬・納骨堂・公営の合葬式墓地。受入先の使用許可証(受入証明)を先にもらう
  2. 寺に、事情を先に話す。遠方で通えない、承継者がいない、費用が続かない。これまでの供養への感謝を先に伝える。金額の話はしない
  3. 埋蔵証明をもらい、改葬許可を取る
  4. 閉眼供養をお願いし、お布施を渡す
  5. 墓石を撤去し、遺骨を取り出す。寺院墓地は指定石材店があることが多いので、先に確かめる
  6. 離檀のお礼として、包める額をお布施で渡す

金額を聞かれたら、「お気持ちとして○万円を考えています」と自分から額を示してかまいません。基準がないのだから、決めるのはこちら側です。提示された額が払えないなら、「その額は用意できません。○万円でお願いできませんか」と書面で伝えておくと、後の記録になります。

寺院墓地の墓じまいで離檀料の話が出る前に決めておく順番
離檀料の話は最後です。納め先と事情を先に。

閉眼供養のお布施:表書きは「御布施」、金額は寺に聞いてよい

閉眼供養(へいがんくよう)は、墓石から遺骨を取り出す前に、僧侶に読経してもらう法要です。「魂抜き」「お性根抜き」とも呼ばれます。お布施の目安は3〜10万円と書かれることが多く、墓じまいの費用でもそう書きましたが、これも公的な統計はありません。葬儀のお布施を含めた葬儀費用の総額の実額は葬儀費用の相場はいくらか|喪主2,000人の実額、「家族葬50万円」が120万円になる仕組み、自治体の規格葬儀に書きました。

表書きは「御布施」です。浄土真宗本願寺派は公式サイトの「よくあるご質問」で、僧侶に渡す金封について、「御布施」はお寺の御本尊・阿弥陀さまにお供えするためのもの、とし、「御礼」「御経料」「回向料」は適切でないとしています。他の宗派でも「御布施」で通ります。「閉眼供養料」「離檀料」と表に書く必要はありません。

封筒と渡し方は、次のとおりです。

  • 表… 上に「御布施」、下に施主のフルネームか「○○家」
  • 裏または中袋… 金額と住所。寺の記録のためで、大字(壱・弐)でなくてもよい
  • お札… 新札でも問題ない(香典と違い、不幸を待っていた意味にはならない)
  • 渡し方… 袱紗から出し、切手盆やお盆があればその上に載せて、法要の前か後に両手で渡す
  • 別に包むもの… 僧侶に来てもらう場合の御車代、会食を辞退された場合の御膳料。まとめるか分けるかは寺の慣習で、聞いてよい

「お布施はいくら包めばよいですか」と寺に聞くのは失礼ではありません。「お気持ちで」と言われたら、「皆さんはどれくらい包まれていますか」と聞き直してください。

閉眼供養と離檀のお布施を渡す前に確かめる7つのことのチェックリスト
寺に聞く・封筒を用意する・渡す、の3段階です。

浄土真宗は「魂を抜く」という考え方をとらない

実家が浄土真宗なら、「閉眼供養」「魂抜き」という言葉をそのまま使わないでください。浄土真宗本願寺派は、仏壇にご本尊を迎える「入仏法要」について、僧侶が「仏さまの『魂』を入れるのではありません(そんな大胆不敵なことはできる道理がありません)」と公式サイトに明記しています。入仏法要は「仏さま(ご本尊)をお迎えしたことを喜び、仏さまのお徳を讃える法要」だ、という説明です。

入れないのだから、抜くという発想もありません。墓石を撤去するときも、浄土真宗の寺は「魂抜き」ではなく、ご本尊や墓を移す法要として勤めます。呼び方は寺によって違うので、「墓じまいにあたって、どのような法要をお願いすればよいですか」と聞いてください。お布施の表書きは同じく「御布施」です。宗旨ごとの永代供養の考え方は「永代供養」で後悔する前に|宗旨と、菩提寺との関係を確かめるに書きました。

納め先へのお布施:永代供養墓に納骨するとき

「永代供養 お布施」で探す人へ。寺が経営する永代供養墓や納骨堂に納骨するとき、納骨法要のお布施を求められることがあります。これも表書きは「御布施」で、金額は納め先の寺に聞きます。永代供養料(委託管理料)に納骨の法要が含まれているかどうかは契約書で分かれるので、「永代供養料のほかに、納骨のときにお布施は要りますか」と契約前に聞いてください。

公営の合葬式墓地(東京都・横浜市・大阪市など)は、使用料だけで、お布施はありません。宗教行事を伴わないからです。永代供養そのものの仕組みと費用は永代供養とは何か|「永代」はずっと個別に置くという意味ではないに書きました。

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寺院墓地は指定石材店があることが多いので、先に確かめてください。指定がなければ、撤去費用の見積もりを複数取っておくと、離檀の話と工事の話を分けて進められます。

進める順番

  1. 手元の墓地使用許可証・使用規則に、離檀料の記載があるかを見る。あれば契約上の債務、なければお礼のお布施
  2. 納め先を決め、受入証明をもらう
  3. 寺に事情と感謝を先に話す。金額の話は後
  4. 求められた額が払えないなら、「○万円でお願いできませんか」と書面で伝える。基準はない
  5. 埋蔵証明を出してもらえないなら、改葬許可を出す市区町村に相談する。「準ずる書面」で申請できる
  6. 閉眼供養のお布施は「御布施」の表書きで、金額は寺に聞く。浄土真宗は法要の呼び方が違う

撤去を頼む石材店の選び方と、寺の指定石材店がある場合の考え方は墓じまいの業者はどう選ぶ?石材店・代行業者・行政書士の違いと、見積書で確かめる8つのことにまとめました。

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お寺の離檀料のこと、調べたので共有します。

  • 離檀料はお寺へのお礼のお布施で、法律にも国の標準約款にも金額の決まりはありません
  • 契約書に金額が書いていなければ、払う義務(債務)にはなりません
  • お寺が埋蔵証明を出してくれなくても、市町村長が認める書面で改葬許可を申請できる決まりがあります
  • 順番は、納め先を決める→事情と感謝を伝える→証明と改葬許可→閉眼供養→撤去→離檀のお礼です
  • お寺に話しに行く前に、伝え方を一緒に考えませんか

よくある質問

よくある質問①

離檀料の相場はいくらですか

公的な統計も基準もありません。国民生活センターは「料金に明確な基準はありません」としています。業者や寺の経験則として3万〜20万円と書かれることが多く、墓じまい経験者230人の調査ではお布施が5〜10万円で23.8%と最も多く、5万円未満が19.0%でした。一方で数十万〜100万円超の提示を受けた相談もあります。基準がないから幅が出る、と理解してください。

よくある質問②

離檀料を払わないと、墓じまいできませんか

できます。厚生労働省の標準契約約款は「使用者は、書面をもっていつでも契約を解除することができる」と定めていて、寺の承諾は要件ではありません。払った使用料は戻りません。寺が改葬許可に要る埋蔵証明を出さない場合でも、墓埋法施行規則第2条は「これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」で申請できると定めています。市区町村の窓口に相談してください。

よくある質問③

閉眼供養のお布施の表書きは何と書きますか

「御布施」です。浄土真宗本願寺派は公式サイトで、「御布施」はお寺の御本尊にお供えするためのものとし、「御礼」「御経料」「回向料」は適切でないとしています。他宗派でも「御布施」で通ります。下に施主の名前か「○○家」、裏か中袋に金額と住所を書きます。金額は寺に直接聞いてよく、御車代・御膳料を別に包むかも寺に聞いてください。

よくある質問④

浄土真宗でも閉眼供養は必要ですか

「閉眼供養」「魂抜き」という考え方を、浄土真宗はとりません。本願寺派は、僧侶が「仏さまの『魂』を入れるのではありません」と明記しています。入れないので抜くこともなく、墓を移すときの法要は別の名前で勤めます。呼び方は寺によって違うので、「墓じまいにあたってどのような法要をお願いすればよいか」と聞いてください。お布施の表書きは同じく「御布施」です。

よくある質問⑤

永代供養墓に納骨するとき、お布施は要りますか

寺が経営する永代供養墓や納骨堂では、納骨法要のお布施を求められることがあります。永代供養料に法要が含まれているかは契約書で分かれるので、契約前に「納骨のときにお布施は要りますか」と聞いてください。表書きは「御布施」です。東京都・横浜市・大阪市などの公営の合葬式墓地は使用料だけで、お布施はありません。

出典

  • 独立行政法人国民生活センター 消費者トラブルFAQ「【墓地】改葬したいと伝えたら、寺から高額な離檀料を請求された。納得できない。」/「墓・葬儀サービス(各種相談の件数や傾向)」(2026年5月31日現在)
  • 厚生労働省(旧厚生省生活衛生局長通知)「墓地経営・管理の指針等について」生衛発第1764号(平成12年12月6日)別添2「墓地使用に関する標準契約約款」第8条・第9条
  • 墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年厚生省令第24号)第2条第2項第1号
  • 浄土真宗本願寺派「よくあるご質問」(入仏法要、金封の表書き、浄土真宗のお墓)
  • 墓じまいパートナーズ「墓じまい実態調査2026」(経験者・検討者230人)
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