墓じまいをしないとどうなるのか|放置した墓と、お金が無いときの順番
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墓じまいをしたほうがいいのは分かっている。ただ、お金が無い。あるいは、兄弟の誰が払うかで話が止まっている。そのまま何年か経っている、という人がいます。
- 費用を誰が払うかは、法律に書かれていません。民法が定めているのは、墓を承継する人までです
- 放置すると、無縁墳墓として改葬されることがあります。官報への掲載と、立札の1年間の掲示を経ます
- お金が無いときに最も効くのは、次の納め先を決めることです。撤去費より金額が動きます

実家じまい全体の流れと、先に確かめる期限は実家じまいは何から始める?5つの段階と、かかるお金の全体像にまとめています。
費用を誰が払うかは、法律に書かれていない
話が止まる原因の多くが、ここです。
民法の第897条は、こう定めています。「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」
墓を承継するのは「祭祀を主宰すべき者」です。これを祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)と呼びます。決まり方は3つあります。
- 亡くなった人が指定していれば、その人
- 指定が無ければ、慣習に従う
- 慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が定める(同条第2項)
注意:墓は相続財産と別扱いです。第897条は「前条の規定にかかわらず」と書いています。だから、遺産を相続しない人が祭祀承継者になることもあります。
そして、条文はここまでです。承継した人が費用を払う、とは書かれていません。兄弟で分けてもよいし、一人が出してもかまいません。法律が決めていない以上、話し合いで決めるしかない、というのが正確な答えです。葬儀費用も同じ構造で、故人の預金から出せる額と相続税で引ける範囲は葬儀費用は誰が払い、どこまで引けるのか|故人の預金・相続税・相続放棄にまとめました。
だからこそ、金額を先に出してください。「いくらかかるか分からないもの」を分担する話は進みません。費用の内訳は墓じまいの費用はいくら?実際に払った733人の分布と高くなる3つの条件にまとめました。
誰が継ぐかを決める順番は、民法897条に書かれています(仏壇とお墓は遺産分割の対象外|誰が継ぐかは民法897条で決まる。相続放棄をしても継げます)。費用の分担とは別の話です。
放置すると、無縁墳墓として改葬されうる
「そのままにしておく」は、選択肢としては成り立ちません。
墓地、埋葬等に関する法律施行規則の第3条は、無縁墳墓等を「死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂」としています。そして、無縁墳墓等の遺骨を改葬するときの手続きを定めています。
改葬の申請書に添えるのは、次の書類です。
- 無縁墳墓等の写真及び位置図
- 死亡者の本籍・氏名と、墓地使用者等、縁故者、権利を有する者に対し1年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に1年間掲示して公告し、その期間中に申出がなかった旨を記載した書面
- 官報を出力した書面と、立札の写真
つまり、こういう順番です。官報に載せる。墓の前に立札を立てる。1年待つ。誰も名乗り出なければ、改葬できる。

改葬されたあと、遺骨は合祀されることが多くなります。合祀すると、ほかの人の遺骨と混ざるので取り出せません。放置は「何も決めない」ではなく、「合祀を選んだ」のと同じ結果になりえます。
岐阜市の条例は、使用者が亡くなってから5年たっても承継の届出がないとき、市が無縁墳墓として改葬できると定めています(岐阜で親のお墓を探すなら|市営の合葬墓はいま工事中。市営墓地は返還が申込の2.8倍で、墓じまいすると使用料の3分の1が戻る)。
管理料の未納が理由になる市もあります。和歌山市の条例は、管理料を3年間納めないとき、市が使用許可を取り消せると定めています(和歌山で親のお墓を探すなら|市営の合葬墓・納骨堂は無い。市営の今福霊園は1区画45万円で、貸出は目標の4分の1まで減った)。
自治体は、何をもって「縁故者がない」と見ているか
判断の基準は、法律に書かれていません。
総務省が2023年に公表した墓地行政に関する調査は、市町村への実地調査の結果として、「縁故者がないと判断する主な目安」を挙げています。調査によれば、基準は一律ではありませんでした。
- 秋田県大仙市… 管理料の滞納が3年程度で、住民基本台帳による確認や戸籍の公用請求によっても縁故者が不明の場合
- 兵庫県神戸市… 管理料の滞納が10年程度で、戸籍の公用請求等による調査を行っても発見されない場合
- 福島県白河市… 使用者が死亡し5年以内に相続人・親族・縁故者から利用権承継の申出がない場合、または使用者が所在不明となり10年が経過した場合
- 兵庫県尼崎市… 使用者が死亡して5年が経過しても承継の申出がない、または所在不明となり10年が経過した場合
3年で動く自治体もあれば、10年の自治体もあります。同じ調査は「判断の目安に該当したことのみをもって、直ちに無縁墳墓等と判断されるものではない」とも記しています。
注意:共通しているのは、連絡が取れないことが入口になっている点です。引っ越して連絡先が変わったまま、という状態が最も危険です。払えないなら払えないと、管理者に伝えておいてください。
墓参の形跡があれば、争えることもある
無縁と扱われても、それで終わりとは限りません。
先ほどの総務省の調査は、宗教法人が経営する墓地に関する過去の裁判例として、平成26年の高松高等裁判所の判決を紹介しています。判決は「本件改葬行為直前にも複数回にわたって墓参の形跡があった」ことなどを理由に、調査義務を尽くさなかった宗教法人側の過失を指摘しました。
同じ調査は、こうも述べています。「使用者その他の縁故者が存在するにもかかわらず、無縁墳墓等として改葬が行われることは国民の宗教的感情等の点から適当ではない」
だから、官報公告と立札の1年間という慎重な手続きが求められています。通常の改葬手続きより重い手順です。
知らないうちに改葬されていた、という場合は弁護士に相談してください。ただし、合祀されたあとで遺骨を特定して取り戻すことは、事実上できません。争えるのは損害賠償であって、遺骨ではありません。
お金が無いとき、いちばん効くのは納め先
撤去費を値切るより先に、次にどこへ納めるかを決めてください。
墓じまいの総額を最も動かすのは、撤去費ではなく納め先です。合祀の永代供養墓なら数万円から、新しい一般墓を建てれば100万円台になります。同じ墓を片づけても、行き先で10倍以上変わります。
公営の施設を先に調べてください。神戸市の合葬式墓地は3万5,000円からです。ただし、市内に住んでいることなどの申込資格と、募集の時期があります。いつでも申し込めるわけではありません。
納め先の種類と、確かめる項目はこちらにまとめました。
- 永代供養の中身は永代供養とは何か|「永代」はずっと個別に置くという意味ではない
- 屋内に納める施設は納骨堂とは何か|許可が要る施設だから、帳簿を見せてもらえる
- 樹木葬で見落としやすい点は樹木葬で後悔する人は何を見落としたのか|契約前に確かめる5つの条件
都立霊園の使用者で承継者がいない場合は、墓を返して都の合葬式墓地へ移れば、納め先の使用料はかかりません。残るのは今の墓を更地に戻す費用です(都立霊園の墓じまい|八柱・多磨・小平などを返すとき。合葬へ移る「施設変更制度」は使用料なし、ただし更地に戻す費用は自己負担)。

自治体の補助制度を確かめる
改葬や墓地の返還に、補助を出す自治体があります。
金額も条件も自治体ごとに違い、受付期間が短いのが共通した特徴です。さらに、交付決定の前に契約すると対象外になる制度があります。見積もりを取る前に、制度の有無と順番を確かめてください。
制度の探し方と申請の順番は墓じまいに補助金はある?対象になるのは公営墓地の返還だけにまとめました。
お布施と離檀料には、公的な基準がない
「いくら包めばいいのか」に、正解はありません。
墓じまいのときに寺へ払うものは、主に2つです。
- 閉眼供養のお布施… 墓から魂を抜く法要に対するもの
- 離檀料… 檀家をやめるときに求められることがあるもの
どちらにも、公的に定められた金額はありません。話し合いで決まります。求められた場合は、何に対する費用なのかを書面で確かめてください。
注意:改葬の許可申請には、いま遺骨がある墓地の管理者の証明が要ります。寺が管理者なら、証明をもらう相手は寺です。話がこじれると手続きが止まります。だから、納め先を契約する前に寺へ相談してください。順番の話は「永代供養」で後悔する前に|宗旨と、菩提寺との関係を確かめるに書きました。
手続きそのものの流れは墓じまいの手続きはどこへ出す?改葬許可の流れと必要書類にあります。
進める順番
お金が無い場合でも、順番は変わりません。
- 墓地の管理者に連絡し、いまの状況を伝える。滞納があるなら、そのことも
- 祭祀承継者が誰かを、家族で確認する。払う人を決める前に、まずここです
- 納め先の候補を3つ挙げ、費用を並べる。公営を必ず1つ入れます
- 自治体の補助制度を調べる。受付期間と、契約の前後関係を確かめます
- 撤去の見積もりを2社以上から取る。寺の指定業者しか使えない場合は、その旨を確かめます
- 金額が出そろってから、誰がいくら出すかを話す
3番と5番を逆にしないでください。納め先が決まっていないと、撤去の見積もりも取れません。見積書で確かめる項目は墓じまいの業者はどう選ぶ?石材店・代行業者・行政書士の違いと、見積書で確かめる8つのことに書きました。
お墓をこのままにした場合のこと、調べたので共有します。
- 墓じまいの費用を誰が払うかは、法律に書いてありません。決まっているのは、お墓を継ぐ人(祭祀承継者)までです
- 管理料の滞納が続くと、無縁墳墓として改葬されることがあります。官報に載せ、お墓の前の立札に1年間掲示して、申し出がなければ改葬できます
- そのとき遺骨は合祀され、あとから取り出せません
- 払えないなら、まず霊園やお寺に伝えることが大事です
- 誰がお墓を継ぐか、一度話せますか
よくある質問
法律は決めていません。民法897条が定めているのは、系譜・祭具・墳墓の所有権を「祭祀を主宰すべき者」が承継する、というところまでです。費用の負担者までは書かれていません。指定が無ければ慣習に従い、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めます。実際には話し合いになるので、金額を先に出してから分担を決めてください。
管理料の滞納が続くと、無縁墳墓として改葬されることがあります。手続きは施行規則3条にあり、1年以内に申し出るべき旨を官報に掲載し、墓の見やすい場所の立札に1年間掲示します。申出がなければ改葬でき、遺骨は合祀されることが多くなります。総務省の調査では、滞納3年程度を目安にする自治体から10年程度の自治体まで幅がありました。
次の納め先からです。総額を最も動かすのは撤去費ではなく行き先で、合祀の永代供養墓なら数万円から、新しい一般墓なら100万円台になります。公営の合葬墓は神戸市で3万5,000円からですが、申込資格と募集時期があります。そのうえで自治体の補助制度を確かめ、撤去は2社以上から見積もりを取ってください。
改葬の許可が要ります。いま遺骨がある市区町村に申請し、その際に現在の墓地の管理者の証明と、移す先の受入証明が必要になるのが一般的です。順番としては、納め先を決めてから改葬許可を取り、そのあとに閉眼供養と撤去へ進みます。詳しくは墓じまいの手続きはどこへ出す?改葬許可の流れと必要書類を見てください。
公的な基準はなく、金額は話し合いです。ただし、改葬の許可申請にはいま遺骨がある墓地の管理者の証明が要るので、関係がこじれると手続きが止まります。まず、何に対する費用なのかを書面で確かめてください。そのうえで折り合わない場合は、弁護士か、市区町村の消費生活センターに相談してください。証明を出してもらえない場合の法令上の手続きと、話の順番は離檀料は払わないといけないのか|相場の根拠、断り方、証明を出してもらえないときの手続きと、閉眼供養のお布施の書き方に書きました。
出典
- 民法(明治29年法律第89号)第897条
- 墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年厚生省令第24号)第3条
- 総務省「墓地行政に関する調査」2023年(市町村への実地調査結果、平成26年高松高等裁判所判決の引用を含む)
- 神戸市「合葬式墓地(鵯越合葬墓)」

