借地の実家をどうするか|壊す前に確かめること
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実家を相続してから、土地が自分のものではないと分かることがあります。毎月地代を払っていた、という書類が出てきて、そこで手が止まります。
- 建物を壊すと、借地権の裏づけを失いかねません。登記された建物があることで第三者に対抗できるためです
- 相続に地主の承諾は要りません。ただし第三者へ売るには承諾が必要です
- 承諾が得られない場合は、裁判所が承諾に代わる許可を与えるしくみがあります

実家じまい全体の流れと、先に確かめる期限は実家じまいは何から始める?5つの段階と、かかるお金の全体像にまとめています。
借地権とは何か
借地権は、建物を建てるために土地を借りる権利です。
借地借家法の第2条第1号は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。土地を借りていても、建物を建てる目的でなければ借地権にはあたりません。
登場人物の呼び名も条文で決まっています。
- 借地権者… 借地権を有する者。土地を借りて建物を持っている側です
- 借地権設定者… 借地権者に対して借地権を設定している者。いわゆる地主です
実家が借地なら、亡くなった親が借地権者でした。相続した人がその立場を引き継ぎます。

建物を壊すと、権利の裏づけを失う
ここがこの記事でいちばん大事なところです。
借地借家法の第10条第1項は、こう定めています。「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」
つまり、登記された建物があることが、借地権を主張できる根拠になっています。借地権そのものを登記していない家がほとんどなので、実質的には建物が権利の裏づけです。
注意:建物を壊すと、その裏づけが無くなります。同条第2項は、建物が滅失しても、建物を特定する事項と滅失の日、新たに築造する旨を土地の見やすい場所に掲示すれば効力が続くとしています。ただし、滅失の日から2年を経過した後は、その前に建物を新築して登記した場合に限られます。
空き家のまま置く期間の管理は相続した空き家を放置すると|「管理不全空家」の判断基準と、年に何をすればいいかに書きました。空き家になった借地の実家を「とりあえず更地にしよう」と考えたとき、この条文を知らないまま進めると、地主が土地を第三者に売った場合に権利を主張できなくなる可能性があります。
解体を考えているなら、その前に司法書士か弁護士に相談してください。解体費用の話は家の解体費用は坪数で決まらない|見積書で見るべき7項目にありますが、借地の場合は費用より先にこの確認です。
相続に地主の承諾は要らない
相続で借地権を引き継ぐことに、地主の承諾は必要ありません。
民法第612条は「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と定めています。これは譲渡と転貸の話であって、相続はどちらにもあたりません。相続は、亡くなった人の地位をそのまま引き継ぐものだからです。
実務では、相続を知った地主から「名義書換料」や「承諾料」を求められることがあります。法律上、相続について地主の承諾が要るわけではありません。支払うかどうかは話し合いになります。求められた場合は、何に対する費用なのかを書面で確かめてください。
一方、相続登記は必要です。建物の名義を変えないと、借地権の裏づけである「借地権者が登記されている建物」の状態が崩れます。相続登記は令和6年4月1日から義務になり、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象です。施行前の相続なら期限は2027年3月31日です(相続登記の期限は2027年3月31日|過料が来るのは「一部だけ登記した」とき。親の不動産を洗い出す証明書が始まった)。
相続の全体の期限は相続した実家を売ると税金はいくら?3,000万円控除の条件と期限にまとめています。

売るには地主の承諾が要る
相続とは違い、第三者へ売る場合は承諾が必要です。
先ほどの民法第612条がここで効いてきます。無断で譲渡すると、同条第2項により契約を解除される可能性があります。借地権付きの建物を売るときは、必ず地主と話を通してください。
承諾料の相場に公的な統計はありません。金額は話し合いで決まります。
承諾が得られない場合の手段も、法律に用意されています。借地借家法の第19条第1項は、第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず承諾しないときは、裁判所が借地権者の申立てにより、承諾に代わる許可を与えることができると定めています。
同じ条文の第3項も知っておいてください。この申立てがあった場合、裁判所が定める期間内に地主自身が建物と賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てたときは、裁判所は相当の対価を定めてこれを命じることができます。つまり、地主が自分で買い取る道を選ぶこともあります。
売ると決めたあとの手順は、別にまとめました。地上権と賃借権で承諾が要るかどうかが変わること、裁判所に許可を求めたときの期間と費用、売り先が3つあることは借地権付きの実家を売る|地主の承諾と、3つの売り先にあります。
期間と更新のしくみ
契約書の期間を確かめてください。
借地借家法の第3条は、借地権の存続期間を30年としています。契約でこれより長い期間を定めたときはその期間です。
更新後の期間は第4条にあります。更新の日から10年で、借地権の設定後の最初の更新だけは20年です。
第5条は更新請求について定めていますが、ここに条件があります。「建物がある場合に限り」更新請求ができるとされています。建物が無ければ更新を求められません。先ほどの解体の話と同じ方向を向いています。
注意:定期借地権は更新がありません。契約書の表題や条項で見分けます。平成4年より前からの古い契約は旧法の借地権にあたることがあり、扱いが変わります。何が旧法のまま残るかは平成4年より前に借りた土地は「旧法借地権」|新法と何が違い、何に気をつけるかにまとめました。契約書が見つからない場合は、地主に写しを求めてください。
なお第9条は、この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは無効としています。契約書に不利な条項があっても、そのまま有効とは限りません。
更新がないときは、建物を買い取ってもらえる
契約が終わるとき、建物をただで手放す必要はありません。
借地借家法の第13条第1項は、存続期間が満了して契約の更新がないとき、借地権者は借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができると定めています。これを建物買取請求権といいます。
これは、更地にして返す義務と表裏の関係にあります。契約で原状回復が決められている場合でも、この請求権があるかどうかで負担が変わります。契約書と条文の両方を見て判断が要るところなので、専門家に相談してください。
解体の記事では「借地の場合、解体費は借地人が負担するのが一般的」と書きました。ただし買取請求ができる場合は、その前提が変わります。壊す前に確かめる理由がここにもあります。
借地権割合と相続税
借地権にも財産としての価値があります。
国税庁は借地権の価額について、自用地としての価額に借地権割合を掛けて計算する方法を示しています。借地権割合は、国税庁ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
借地権の取引慣行がない地域では、割合を20パーセントとして計算するとされています。
相続税の申告が必要かどうかを判断するとき、借地権も財産に入ります。「土地は借りているだけだから関係ない」ではありません。基礎控除を超えるかどうかの計算に含めてください。判断に迷う場合は税務署か税理士に相談してください。
実家じまいでの進め方
借地の実家は、動かす順番が普通の持ち家と違います。
- 契約書と登記事項証明書を探す。片付けを頼む前に、自分で確保してください
- 建物の登記名義を確かめる。未登記や祖父母名義のままなら、先に司法書士へ
- 契約の種類と期間を確かめる。普通借地か定期借地か、次の更新はいつか
- 地主に相続したことを伝える。承諾は要りませんが、連絡は要ります
- そのうえで、持ち続けるか、売るか、地主に買い取ってもらうかを決める
- 解体はいちばん最後。決める前に壊さない
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片付けだけは先に進められます。ただし契約書と権利証は必ず自分で抜いてください。書類の探し方は遺品整理の費用はいくら?相場より先に見るべき3つの内訳にも書いています。
実家の土地が借地だった場合のこと、調べたので共有します。
- 借地権は、登記された建物があることで守られています。更地にすると、その裏づけを失いかねません
- なので、建物を壊す前に相談が必要です
- 相続するのに地主さんの承諾は要りませんが、売るときは要ります。承諾がもらえないときは、裁判所の許可を求められます
- まず、借地の契約書と登記事項証明書を探したいです。どこにあるか心当たりはありますか
よくある質問
借地借家法第2条第2号で「借地権を有する者」と定められています。土地を借りて建物を持っている側、つまり実家の場合は亡くなった親と、それを相続した人です。土地を貸している地主のほうは「借地権設定者」と呼ばれます。
賃借権としての登記は可能ですが、実際に登記されている例は多くありません。登記がなくても、土地の上に借地権者名義で登記された建物があれば第三者に対抗できると法律が定めているためです(借地借家法10条1項)。だからこそ、建物の登記が重要になります。
更新を拒むには正当の事由が必要とされています。また、更新がない場合でも建物買取請求権があります。一方的に言われたからといって、すぐに応じる必要はありません。弁護士に相談してください。
国税庁ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。相続税の計算に使う数字です。借地権の取引慣行がない地域では20パーセントとして計算するとされています。
払い続けてください。滞納は契約解除の理由になります。相続の話がまとまらない間も、地代の支払いは止めないほうが安全です。誰が払うかは相続人の間で決め、記録を残してください。
出典
- 借地借家法(平成3年法律第90号)第2条、第3条、第4条、第5条、第9条、第10条、第13条、第19条
- 民法(明治29年法律第89号)第612条
- 国税庁「貸宅地の評価」(借地権割合は財産評価基準書 路線価図・評価倍率表で確認)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(令和6年4月1日施行)

