片付け

実家の残置物は誰が片づけるのか|解体業者に任せられない理由

杉野 一樹

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解体の見積書に「残置物処分費」という行があって、金額が大きい。あるいは「家財はそのままで結構です」と言われた。どちらの場合も、そのまま進めてよいとは限りません。

この記事で分かること
  • 残置物を片づける責任は、建物の所有者にあります。環境省の通知が明記しています
  • 家庭から出た残置物は一般廃棄物です。産業廃棄物処理業の許可だけでは引き受けられません
  • 順番は片付けが先で、解体があと。国の通知も、解体工事に先立って処理するのが原則としています
実家じまいの5段階。お墓、仏壇・位牌、片付け、家をどうするか、解体。この記事は片付け
この記事は③片付けの、家に残ったものをどうするかの話です。

実家じまい全体の流れと、先に確かめる期限は実家じまいは何から始める?5つの段階と、かかるお金の全体像にまとめています。

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残置物とは、解体で出るごみとは別のもの

残置物とは、建物を解体するときに、その建物の所有者が置いたままにした廃棄物のことです。

環境省の通知は、二つを分けて呼んでいます。建物を壊したことで出る木くずやがれきが「解体物」、壊す前から中にあった家財や生活用品が「残置物」です。タンス、布団、食器、衣類、本、写真、庭の物置の中身。実家に残っているもののほとんどが残置物にあたります。

この二つは、法律上の扱いが違います。通知は「解体物は木くず、がれき類等の産業廃棄物である場合が多い一方、残置物はその排出状況及び性状により一般廃棄物又は産業廃棄物となる」とし、「一般家庭が排出する場合は一般廃棄物となり」と書いています。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第2条第4項第1号は、産業廃棄物を「事業活動に伴つて生じた廃棄物」のうち政令で定めるものとしています。同条第2項は、一般廃棄物を「産業廃棄物以外の廃棄物」と定めています。親が暮らしていた家から出るものは、事業活動で出たものではありません。だから一般廃棄物です。

この一行が、あとの話を全部決めます。

片づける責任は、建物の所有者にある

残置物を片づけるのは、解体業者ではなく、建物を持っている人です。

平成30年6月22日の環境省通知は、責任の所在をこう分けています。

  • 解体物… その処理責任は「当該解体工事の発注者から直接当該解体工事を請け負った元請業者にある」
  • 残置物… その処理責任は「当該建築物の所有者等にある」

そのうえで「建築物の解体を行う際には、解体前に当該建築物の所有者等が残置物を適正に処理する必要がある」としています。

平成26年の通知に付けられた資料は、もっとはっきり書いています。「建物の解体を行う際には、解体工事の開始までに、建物内の廃棄物を適正に処理することが基本」であり、「残置物の排出者である元々の占有者が、解体工事の施工に先立って、その責任において処理をすることが原則」である、と。

実家を相続した人が、建物の所有者です。片づけるのは自分の仕事だ、というのが国の整理です。

なお、この通知は解体だけの話ではありません。「リフォーム工事など、建築物の解体以外の場合においても、当該建築物の所有者等が残置した廃棄物については、その処理責任は当該建築物の所有者等にある」と書かれています。

解体業者に丸ごと頼めるとは限らない

ここが、費用が別建てになる理由です。

一般廃棄物を運ぶ仕事は、許可が要ります。廃棄物処理法の第7条第1項は「一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならない」と定めています。許可を出すのは都道府県ではなく、市町村です。

そして環境省の通知は、こう釘を刺しています。「残置物が一般廃棄物である場合、その処理を受託するためには、産業廃棄物処理業の許可を取得していることのみでは足りず、一般廃棄物処理業の許可又は市町村からの当該残置物の処理に係る委託を受ける必要がある」

解体業者の多くは産業廃棄物の許可を持っています。解体物を扱う仕事だからです。ただし、それだけでは家財を引き受けられません。

無許可で引き受けた場合の罰則も、法律に書かれています。第25条第1項第1号は、第7条第1項に違反して一般廃棄物の収集運搬を業として行った者を、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方としています。

注意:これは珍しい話ではありません。平成29年2月の中央環境審議会の意見具申は、現状と課題として「建築物の解体時等における残置物については、建築物の解体に伴い生じた廃棄物の収集及び運搬又は処分を行う者にその処理を依頼する事例等が見受けられる」と指摘しています。国が繰り返し通知を出しているのは、そういう依頼が実際にあるからです。

見積書に「残置物処分」の行があったら、どの許可で運ぶのかを聞いてください。許可の確かめ方は遺品整理の業者はどう選ぶ?ランキングより先に見る許可と書面と同じです。

だから、片付けが先で、解体があと

順番を逆にすると、高くなるか、進まなくなります。

家財が残ったままだと、解体の見積もりに処分費が乗ります。家の解体費用は坪数で決まらない|見積書で見るべき7項目でも、見積書で比べる7項目の一つに残置物を挙げました。同じ家でも、中が空かどうかで金額が変わります。

補助金を使う場合も同じです。空き家の解体に補助金は出るのか|制度の有無と、申請の順番で書いたとおり、申請より先に契約や着工をすると対象外になる自治体があります。片付けに何か月もかかると、その日程に間に合いません。

壊さずに売る場合も、片付けが先です。仲介で個人に売るなら、内覧の前に家財を出すのが基本です。物が残ったままでよい買取と、どう比べるかは相続した実家の売り方|売りに出した空き家の7割は1年後も空き家のまま。仲介と買取を手取りで比べるに書きました。

解体そのものの前にも、石綿の事前調査があります(アスベストの調査費は削れない|法が発注者に費用負担を求めている。80平方メートルで報告が立つ)。片付け、調査、届出、着工の順で日程が決まります。

残置物を自分で出せるかを3つの質問で確かめる判断チャート
自分で出せるものから減らすと、頼む量が減ります。

撤去費用に相場の統計は無い。決まり方を見る

注意:更地にして国へ引き渡す場合、敷地に残った物も片付ける必要があります。物置や車両、樹木が地上にあると不承認になり、その理由が最も多い46件です(実家の土地を国に引き取ってもらえるか|申請5,997件に対し帰属3,119件。建物があると申請すらできない)。

残置物の撤去費用に、公的な統計はありません。坪数や間取りから金額を出す方法もありません。金額は、次の四つで動きます。

  1. 量。トラック何台分か。同じ広さでも、物の多い家と少ない家では倍以上違います。床が見えない状態なら、先に実家がごみ屋敷になっていたら|業者より先に、自治体に相談する理由を読んでください
  2. 人手と時間。何人が何時間かかるか。階段しかない、道路が狭くてトラックが家の前に着けられない、駐車位置から玄関まで遠い。この三つで人件費が伸びます
  3. 処分費。運んだ先で、重さや量に応じてかかります
  4. 別料金になる品目。家電4品目や金庫、ピアノなど

費用の考え方は遺品整理の費用はいくら?相場より先に見るべき3つの内訳と同じです。人が動く時間が費用になります。だから、量を減らせば減った分だけ安くなります。

注意:総額だけの見積書は比べられません。「残置物処分一式」と書かれていたら、量の前提と、別料金になる品目を書き足してもらってください。

売る・貸すなら、家財処分の補助が使える場合があります。ただし呉市のように解体予定の家を対象外にしている市や、処分の前の申請を条件にしている市があります。条件と順番は家財処分の費用に補助金は出る?|片付けたあとでは受け取れない。空き家の補助(広島県内10市町・東京都)と生活保護の家財処分料に書きました。

自分で出せるものは、自分で出すのがいちばん安い

法律も、そう書いています。

廃棄物処理法の第6条の2第4項は、土地や建物の占有者は、その中の一般廃棄物のうち「生活環境の保全上支障のない方法で容易に処分することができる一般廃棄物については、なるべく自ら処分するように努める」ものとしています。

市町村の粗大ごみは、1点あたりで料金が決まっています。たとえば大阪市の粗大ごみ処理手数料は、200円・400円・700円・1,000円の4段階で、品目ごとに一覧で公表されています。いすや衣装ケース、カーペットといった家財の多くが、この範囲に収まります。

多くの市町村には、自分で処理施設へ持ち込む方法もあります。たとえば大阪市は10kgごとに90円で、1トンでも9,000円です(大阪で実家を片付けるなら|自分で運べば1トン9,000円。粗大ごみ・自己搬入・許可業者271社の使い分け)。受付日や重量あたりの料金は市町村ごとに違うので、実家のある市町村のホームページで「粗大ごみ」「持込」を調べてください。東京23区では、袋に入るごみを一度に大量に出す有料の「臨時ごみ」もあります。杉並区は1kgあたり46円です。区ごとの出し方は東京で実家を片付けるなら|家庭のごみを集めるのは「区」。23区の臨時ごみ、ごみ屋敷の条例と支援、業者に頼む前に聞くことに書きました。

ただし、時間はかかります。粗大ごみは申し込んでから収集日まで日数が要ります。遠方に住んでいて何度も通えないなら、自分で出す分と業者に頼む分を先に分けてしまうほうが早く終わります。不用品回収の業者に頼む場合の許可の確かめ方と相談事例は不用品回収の業者はどう選ぶ?|許可の確かめ方、相場の実額、「定額」「詰め放題」の落とし穴に書きました。

注意:片付けを始める前に、書類だけは自分で抜いてください。契約書、権利証、通帳、印鑑、保険証券。遺言書の封筒が出てきたら、開けずに家庭裁判所へ持って行きます(親の遺言書は、見つけても開けない|家庭裁判所の検認は年2万3,523件。法務局に預けた遺言は800円で有無を調べられる)。実家の土地が借地なら、契約書は権利の裏づけを確かめる材料になります(借地の実家をどうするか|壊す前に確かめること)。地上権か賃借権かで売り方が変わるので、売るつもりなら借地権付きの実家を売る|地主の承諾と、3つの売り先も先に読んでください。売却で使う書類の話は相続した実家を売ると税金はいくら?3,000万円控除の条件と期限にあります。親が元気なうちに書類の場所を聞いておく話は生前整理は片付けから始めない|親が決められるうちに残す3つの書類に書きました。親が家で亡くなっていて、あとで売る予定があるなら、死亡診断書の写しと特殊清掃の領収書も残してください。売るときの告知の根拠になります(親が家で亡くなった実家は「事故物件」になるのか|告知が要る死・要らない死と、訳あり物件買取の使いどころ)。発見が遅れて体液のしみや臭いがあるなら、片付けの前に特殊清掃が要ります(特殊清掃とは何をするのか|費用の実額、誰が払うか、頼む前に確かめる8つのこと)。

粗大ごみに出せないものがある

次のものは、粗大ごみとは別の道になります。

  • 家電4品目(テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)… 家電リサイクル法の対象で、リサイクル料金と運搬が別に要ります。料金は遺品整理の費用はいくら?相場より先に見るべき3つの内訳にまとめました
  • パソコン… メーカーによる回収のしくみがあります
  • 灯油、農薬、塗料、スプレー缶… 危険物です。残っていたら市町村に電話して聞いてください
  • 金庫、ピアノ、タイヤ、消火器、バイク… 市町村が収集しないことが多く、別の窓口になります

買い取りと回収は、別の話です。まだ使えるものを買い取るには古物商の許可が要り、捨てるものを運ぶには一般廃棄物処理業の許可が要ります。古物商の許可は、廃棄物を回収する根拠にはなりません。環境省もそう明記しています。

頼む相手を確かめる

環境省は、無許可の回収業者を「ご家庭の廃棄物を、市区町村の一般廃棄物処理業の許可なく、または市区町村の委託を受けずに、違法に回収している業者」と説明しています。

そのうえで、営業のしかたの例として「町中を大音量で巡回」「空き地で回収」「チラシを配布」「インターネットで広告」を挙げています。声をかけられた場でその日のうちに頼まないでください。

残置物を業者に頼む前に確かめる項目のチェックリスト
印刷して、見積もりのときに手元に置いてください。
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「ぽいみつ」は、空き家の片付けや不用品回収の見積もりを、1回の入力で最大5社に依頼できる無料の一括見積もりサービスです。書類と貴重品を先に抜いてから、現地を見たうえでの見積もりを並べて比べてください。

家族に送る用(コピーしてLINEへ)

実家に残った家財(残置物)のこと、調べたので共有します。

  • 片付ける責任は、家を相続した人にあると環境省の通知に書いてあります
  • 家庭から出るものは一般廃棄物なので、産業廃棄物の許可しかない解体業者には引き取ってもらえません
  • 順番は、片付けが先で、解体があとです
  • 粗大ごみに自分で出せるものは先に出し、契約書と通帳は始める前に抜いておきます
  • 片付けの日を決める前に、書類だけ先に探しませんか

よくある質問

よくある質問①

解体業者から「残置物ごと処分できます」と言われました

どの許可で運ぶのかを聞いてください。家庭から出た残置物は一般廃棄物なので、実家のある市町村の一般廃棄物処理業の許可か、市町村からの委託が要ります。環境省の通知も「産業廃棄物処理業の許可を取得していることのみでは足りず」としています。許可を持つ会社と提携していて、そちらが運ぶという説明なら、その会社の名前を聞いて確かめてください。

よくある質問②

残置物を残したまま実家を売れますか

買主が同意すれば売れます。ただし、残ったものを誰がいつ片づけるかを契約書に書いておかないと、あとで揉めます。「現況のまま引き渡す」とだけ書かれていないかを確かめてください。片づける分を値引きするのか、売主が片づけてから引き渡すのか、金額と期限を文字にしておくことです。

よくある質問③

実家が遠くて片付けに行けません

行ける回数を先に決めて、そこから逆算してください。1回目で書類と貴重品だけ抜き、2回目で見積もりを取り、3回目で立ち会う、という組み立てになります。粗大ごみは申し込みから収集まで日数がかかるので、行ける日が決まっているなら早めに申し込んでおきます。

よくある質問④

相続放棄をすれば片づけなくてよいですか

片づける前に、弁護士か司法書士に相談してください。放棄したあとの実家の行方は相続放棄したら実家はどうなるか|放棄の申述は年32万3,524件。住んでいた人は、引き渡すまで管理が残るに、借金があっても実家を残す限定承認は借金があっても実家を残せる「限定承認」|放棄32万件に対し637件。相続人全員の同意と、実家を買い取るお金が要るに書きました。民法第921条第1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めています。家財を処分したことが「処分」にあたると判断されれば、放棄ができなくなるおそれがあります。また第940条は、放棄した人でも放棄の時にその財産を現に占有しているときは、引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならないとしています。放棄すれば何もしなくてよい、ではありません。葬儀費用を故人の預金から払う場合の注意も同じ条文の話です(葬儀費用は誰が払い、どこまで引けるのか|故人の預金・相続税・相続放棄)。

よくある質問⑤

親が賃貸住宅で亡くなりました。部屋の荷物は誰が片づけますか

賃貸借契約の当事者としての立場は相続人が引き継ぐので、原則として相続人が片づけます。国は、この場面をあらかじめ決めておく方法として、国土交通省と法務省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を示しています。単身の高齢者が入居するときに、賃貸借契約の解除と残置物の処理をあらかじめ委任しておくためのものです。すでに亡くなっている場合は、まず賃貸人と話し、相続放棄を考えているなら処分の前に専門家へ相談してください。

出典

  • 環境省「建築物の解体時等における残置物の取扱いについて(通知)」(平成30年6月22日 環循適発第1806224号・環循規発第1806224号)
  • 環境省「建築物の解体時における残置物の取扱いについて(通知)」(平成26年2月3日 環廃産発第1402031号)および別添資料
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第2条第2項・第4項、第6条の2第4項、第7条第1項、第25条第1項第1号
  • 環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」
  • 大阪市「粗大ごみ処理手数料一覧」
  • 民法(明治29年法律第89号)第921条、第940条
  • 国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」
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杉野 一樹(ペンネーム)
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