相続登記の期限は2027年3月31日|過料が来るのは「一部だけ登記した」とき。親の不動産を洗い出す証明書が始まった
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実家の名義が親のまま、あるいは祖父のまま。2024年4月1日から、相続登記は義務になりました。施行より前に相続した不動産にも適用され、期限は2027年3月31日です。怠ると10万円以下の過料。ここまでは広く知られています。あまり知られていないのは、法務省が「登記官が催告を行う端緒」を2つに限定していることです。どちらも一部だけ登記して、残りを放置したケースでした。この記事は、法務省の資料から、過料が現実に問題になる場面と、親の不動産を洗い出す新しい証明書の使い方を整理します。
- 施行前に相続した不動産の期限は2027年3月31日。登録免許税の免税措置(100万円以下の土地など)も同じ日で終わります
- 過料の催告には端緒が2つだけ定められています。どちらも「遺言書や遺産分割協議書に書かれた別の不動産を登記していない」ケースです
- 2026年2月2日から、親名義の不動産を一覧にした証明書が取れます。書面請求で検索条件1件につき1,600円。ただし網羅性に限界があると法務省自身が書いています

名義を直したあとの売り方は相続した実家の売り方|売りに出した空き家の7割は1年後も空き家のまま。仲介と買取を手取りで比べるに、売れない土地の出口は実家の土地を国に引き取ってもらえるか|申請5,997件に対し帰属3,119件。建物があると申請すらできないに書きました。
期限は3年。施行前の相続は2027年3月31日
義務の中身は、不動産登記法第76条の2第1項に書かれています。
相続(遺言を含む)で不動産の所有権を取得した相続人は、自分のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
施行日は2024年(令和6年)4月1日です。そして、ここが実家じまいでいちばん効くところです。
施行日より前に開始した相続で不動産を取得していて、まだ相続登記をしていない場合も対象になります。その場合の期限は2027年(令和9年)3月31日まで(不動産を相続で取得したことを知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内)。根拠は民法等の一部を改正する法律の附則第5条第6項です。
つまり、何十年も前に亡くなった祖父名義のままの土地も、2027年3月31日が期限です。

もう一つ、見落としやすい義務があります。
遺産分割が成立した場合は、成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた所有権移転の登記を申請する義務があります(不動産登記法第76条の2第2項、第76条の3第4項等)。基本的義務とは別の「追加的義務」です。
注意:後で書く相続人申告登記で果たせるのは、基本的義務だけです。法務省は「追加的義務については、相続人申告登記で義務を果たすことができませんので、ご注意ください」と明記しています。申告だけして安心していると、分割成立後の3年で引っかかります。
過料の催告には、端緒が2つしか定められていない
「登記していないと10万円取られる」と聞いて不安になる人が多い。実際の運用は、もう少し限定されています。
正当な理由がないのに申請義務を怠ったときは、10万円以下の過料の適用対象になります(不動産登記法第164条第1項)。ただし、いきなり過料になるわけではありません。
登記官は、違反を把握した場合、相当の期間を定めて申請すべき旨を催告します。催告したにもかかわらず正当な理由なくその期間内に申請しなかったとき、管轄の地方裁判所に事件を通知する、という順番です(不動産登記規則第187条第1号)。
そして、その催告を行う端緒が2つに限定されています。法務省は、登記官が次の(1)または(2)を端緒として、申請義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、催告を行うとしています。
- 相続人がある不動産について遺言の内容に基づく所有権移転登記を申請したが、その遺言書には別の不動産も、登記申請した相続人に相続させる旨が記載されていたとき
- 相続人がある不動産について遺産分割の結果に基づく相続登記を申請したが、その遺産分割協議書には別の不動産も、登記申請した相続人が相続する旨の記載がされていたとき
どちらも「一部だけ登記した」ケースです。
登記官が気づく理由も分かります。遺言書や遺産分割協議書は、登記申請のときに添付します。その書面に「甲土地と乙土地を長男に相続させる」と書いてあるのに、甲土地だけの申請が出てくれば、乙土地が未登記であることが窓口で分かります。
ここから読めることがあります。実家の建物と敷地だけを登記して、離れた場所にある山林や畑、私道の持分を忘れた人が、いちばん催告を受けやすい。逆に言えば、全部まとめて登記すれば、この端緒には当たりません。

注意:これは「登記しなくてよい」という意味ではありません。端緒は2つに限定されていますが、義務そのものは全員にかかります。そして登記していない不動産は、売ることも、担保に入れることも、国に引き取ってもらうこともできません。過料より先に、自分が困ります。
「正当な理由」は5つ示されている
期間内に申請できない事情がある場合、過料の通知は行われません。法務省は、一般に正当な理由があると認められる事情を5つ挙げています。
- 相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
- 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために、相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
- 義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
- 義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請に要する費用を負担する能力がない場合
法務省は、これらに該当しない場合でも、個別の事案の具体的な事情に応じて理由に正当性が認められれば、過料通知は行われないとしています。
1番と2番は、実家じまいでよく起きます。祖父の代から名義が動いておらず相続人が十数人になっている、きょうだいで話がついていない。該当しそうなら、法務局の窓口でその事情を伝えておいてください。
期限に間に合わないなら、相続人申告登記
話がまとまらないときの受け皿が用意されています。
相続人申告登記は、登記簿上の所有者について相続が開始したことと、自分がその相続人であることを法務局に申し出る制度です(不動産登記法第76条の3)。申出をすれば、基本的義務を履行したものとみなされます。
使いやすさが、通常の相続登記とはっきり違います。
- 特定の相続人が単独で申出できます(他の相続人の分も含めた代理申出も可)
- 押印・電子署名は不要。オンラインでも申出できます
- 専用のソフトウェアなしで、Webブラウザ上で手続きできます
- 法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要がありません
- 登録免許税がかかりません
通常の相続登記は、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本をそろえて、法定相続人の範囲と持分を確定する必要があります。相続人申告登記なら、自分が相続人だと分かる戸籍謄本等を出せば足ります。
注意:相続人申告登記だけでは売れません。持分の割合までは登記されないので、売却や担保設定には使えません。そして前に書いたとおり、遺産分割が成立したあとの追加的義務は、これでは果たせません。あくまで、期限を止めるための手続きです。分け方の話し合いが止まったときの流れは実家しかない相続ほど、分け方で止まる|家庭裁判所で決まった遺産分割の35%は遺産1,000万円以下。7割で代償金にまとめました。売却まで見据えた名義の決め方と、売ったときの3,000万円控除の期限は相続した実家を売ると税金はいくら?3,000万円控除の条件と期限にまとめました。
親の不動産を洗い出す証明書が、2026年2月に始まった
ここからが新しい話です。
2026年(令和8年)2月2日から、所有不動産記録証明制度が始まりました(不動産登記法第119条の2)。特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、登記官が一覧にして証明してくれる制度です。
なぜ必要になったのか、法務省が背景を書いています。
これまで登記記録は土地や建物ごとに作られていて、全国の不動産から特定の人が所有者になっているものを抽出する仕組みがありませんでした。その結果、所有者が亡くなったときに、相続人がどんな不動産があるかを把握しきれず、見逃された土地について相続登記がされないまま放置される事態が少なからず生じていたと指摘されていた、としています。
まさに、さきほどの「一部だけ登記した」問題の裏返しです。
請求できるのは次の人です。
- 所有権の登記名義人(法人を含む)
- その相続人その他の一般承継人(法人を含む)
- 代理人
全国すべての法務局・地方法務局(支局・出張所を含む)で、書面またはオンラインで請求できます。書面なら郵送でも請求できます。
手数料は、検索条件1件につき1通あたりです。
- 書面請求(収入印紙で納付)… 1,600円
- オンライン請求・郵送交付… 1,500円
- オンライン請求・窓口交付… 1,470円
法務省は例も示しています。登記所に請求書を提出する方法で、検索条件を4件指定し、請求通数を1通としたときの手数料は、4件×1通×1,600円=6,400円です。
必要書類は、名義人本人なら印鑑証明書か本人確認書類の写し。相続人が請求する場合は、これに加えて登記名義人との相続関係を証する情報(戸籍謄本、法定相続情報一覧図の写しなど)が要ります。一覧図の作り方は親の戸籍の集め方|2024年からは最寄りの役所で出生まで請求できる。法定相続情報一覧図にすれば写しは無料で使い回せるに書きました。代理人なら委任状と請求人の印鑑証明書です。
注意:交付まで時間がかかることがあります。法務省は「制度開始当初は、込み合うことも予想されるため、交付まで2週間程度要する場合があります」としています。2027年3月31日の期限から逆算して、余裕をもって請求してください。
この証明書には、限界があると法務省が書いている
便利な制度ですが、万能ではありません。法務省自身が注意点を並べています。
- 検索対象は所有権の登記がされている不動産に限られます。土地や建物の表示に関する登記しかない不動産は対象外です
- 登記簿がコンピュータ化されていない不動産は、検索結果として抽出されません
- 請求書に書いた検索条件だけで検索されます。登記記録上の氏名・住所と検索条件が違えば、抽出されません
- 該当する不動産がなければ「該当なし」の証明が出ます。この場合も手数料はかかり、返還されません
- 同名異人の不動産が抽出されることがあります
検索の仕様も公開されています。
- 氏名または名称の前方一致、かつ住所の市区町村までが一致している人
- 氏名または名称の前方一致、かつ住所の末尾5文字が一致している人
つまり、登記簿に記録されている住所が古いままだと、いまの住所で検索しても出てきません。法務省は、過去の氏名や住所も検索条件にできるとしていますが、その場合は戸除籍謄本や戸籍の附票の写しなど、過去の氏名・住所を証する書類が必要です。そして検索条件を増やすと、その分だけ手数料がかかります。
法務省は、この点をはっきり書いています。「氏名・住所等で検索する仕様上、検索結果として抽出される不動産の網羅性には限界があります」
注意:だから、この証明書だけで「これで全部だ」と結論づけないでください。親が転居を繰り返していたなら、住民票の除票や戸籍の附票で住所の履歴を先にそろえ、複数の検索条件で請求するのが確実です。固定資産税の納税通知書や、市町村の名寄帳と突き合わせる作業も、あわせてやってください。評価の低い土地には通知書そのものが届かないことがあります(親が亡くなった後の実家の固定資産税|払うのは相続人。登記が3か月で終わらないなら「現所有者申告」を出す)。
名義を直したあとに売る予定なら、査定額を先に知っておくと家族で話しやすくなります。登記を司法書士に頼むかどうかの判断材料にもなります。
100万円以下の土地は、登録免許税がかからない
費用の話です。相続登記の登録免許税には、免税措置があります。そもそも相続による登記の税率は0.4%で、贈与で名義を移す2%の5分の1です(実家を生前に子の名義にするといくらかかるか|贈与は登録免許税2%と不動産取得税。相続なら0.4%で取得税なし)。
法務省が挙げているのは次の2つで、免税期間は令和9年(2027年)3月31日までです。
- 相続により土地を取得した者が相続登記をせずに亡くなった場合の相続登記
- 不動産の価額が100万円以下の土地に係る相続登記
2番が効きます。山林や田畑、私道の持分など、評価額が低い土地はここに入ることがあります。実家の宅地は超えても、周辺の小さな土地は免税になる、という組み合わせが起こります。
そして、免税の期限も2027年3月31日です。相続登記の期限と同じ日に終わります。先送りすると、期限切れと免税切れが同時に来ます。
同じ不動産登記法でも、建物を壊したときの滅失登記は期限が1か月です(実家を壊したら1か月以内|建物滅失登記の期限と10万円以下の過料。名義が親のままでもできる)。3年と1か月で、長さがまるで違います。
背景:所有者不明土地の3分の2は相続登記の未了
なぜここまで国が動いているのか。数字が示されています。
相続登記がされないことなどで、(1)不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、(2)所有者が判明しても所在が不明で連絡がつかない土地を「所有者不明土地」といいます。
法務省は、全国のうち所有者不明土地が占める割合は九州の大きさに匹敵するともいわれている、としています。そして、所有者不明土地の発生原因の約3分の2を占めるのが相続登記の未了です。だから義務化された、という筋です。
関連する制度も始まっています。登記官が他の公的機関から取得した死亡情報に基づいて、不動産登記に死亡の事実を符号で表示する制度です。登記を見れば、その不動産の所有権の登記名義人が亡くなっていることが確認できるようになります。
放置した名義は、外から見えるようになっていきます。放置したまま建物が傷むと、管理不全空家等と判断されて固定資産税が上がることもあります(相続した空き家を放置すると|「管理不全空家」の判断基準と、年に何をすればいいか)。
名義を共有にした場合、そのあと何に誰の同意が要るかは共有の実家は壊すのに全員の同意|貸すのは過半数、直すのは1人。相続から10年で使える手が増えるに書きました。
相続した土地に田畑が含まれていれば、登記とは別に農業委員会への届出も要ります(実家に田畑が付いてきたら|農業委員会への届出が別に要る。怠ると10万円以下の過料)。
実家の名義のこと、調べたので共有します。
- 相続登記は2024年4月から義務です。昔の相続でも、2027年3月31日までにやる必要があります
- 過料10万円は自動では来ません。法務省は催告のきっかけを2つに限定していて、どちらも「遺言書や遺産分割協議書に書いてある別の不動産を登記していない」ケースです。つまり一部だけ登記した人が引っかかります
- だから、まず親名義の不動産を全部洗い出すのが先です。2026年2月から、一覧にした証明書(1通1,600円)が法務局で取れるようになりました
- ただし住所や氏名が登記簿と一致しないと出てきません。固定資産税の通知書や名寄帳とも突き合わせが要ります
- 話がまとまらないなら「相続人申告登記」で期限だけ止められます。単独で申し出でき、登録免許税もかかりません
- 評価額100万円以下の土地は登録免許税が免税です。これも2027年3月31日で終わります
- 一度、家にある権利証と固定資産税の通知書を集めませんか
よくある質問
必ずではありません。正当な理由がないのに義務を怠ったときに10万円以下の過料の適用対象になりますが、いきなり過料にはなりません。登記官が相当の期間を定めて催告し、それでも正当な理由なく申請されないときに、管轄の地方裁判所へ通知されます。しかも法務省は、登記官が催告を行う端緒を2つに限定しています。どちらも、遺言書や遺産分割協議書に書かれた別の不動産を登記していないケースです。ただし義務自体は全員にかかり、登記しないと売ることも担保に入れることもできません。
2027年(令和9年)3月31日までです。相続登記の義務化は2024年4月1日に施行されましたが、施行前に開始した相続で不動産を取得していて登記していない場合も対象になります。根拠は民法等の一部を改正する法律の附則第5条第6項です。何十年も前の相続でも同じ期限です。なお、親がまだ存命で判断能力が落ちている場合は、相続登記ではなく別の問題になります(親が認知症だと実家は売れないのか|成年後見の申立ては年4万3,159件。売却が終わっても後見は続く)。相続人が極めて多数で戸籍の収集に時間がかかる場合は「正当な理由」にあたりうるので、間に合わなそうなら法務局の窓口で事情を伝えておいてください。
2026年2月2日から、所有不動産記録証明制度が使えます。登記官が、特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧にして証明してくれる制度です。手数料は検索条件1件につき1通あたり、書面請求で1,600円、オンライン請求なら1,470円(窓口交付)から。全国すべての法務局・地方法務局で請求でき、郵送でも請求できます。相続人が請求する場合は、登記名義人との相続関係を証する戸籍謄本などが要ります。交付まで2週間程度かかる場合があります。
できるとは限りません。法務省は「氏名・住所等で検索する仕様上、検索結果として抽出される不動産の網羅性には限界があります」と明記しています。登記記録上の氏名・住所と検索条件が違えば抽出されず、登記簿がコンピュータ化されていない不動産も出てきません。所有権の登記がない(表示に関する登記だけの)不動産も対象外です。親が転居を繰り返していたなら、戸籍の附票などで住所の履歴をそろえて複数の条件で請求し、固定資産税の納税通知書や市町村の名寄帳とも突き合わせてください。
相続人申告登記で、基本的義務を果たすことができます。登記簿上の所有者について相続が開始したことと、自分がその相続人であることを法務局に申し出る制度です。特定の相続人が単独で申出でき、押印・電子署名は不要、オンラインでWebブラウザ上から手続きでき、法定相続人の範囲や持分の確定も要らず、登録免許税もかかりません。ただし、これだけでは売却できません。そして遺産分割が成立したあとは、成立日から3年以内に移転登記をする追加的義務があり、これは相続人申告登記では果たせません。
登録免許税の免税措置が2つあります。(1)相続により土地を取得した者が相続登記をせずに亡くなった場合の相続登記、(2)不動産の価額が100万円以下の土地に係る相続登記です。免税期間は令和9年(2027年)3月31日までで、相続登記の期限と同じ日に終わります。山林や田畑、私道の持分など評価額の低い土地は(2)に入ることがあります。実家の宅地は課税されても、周辺の小さな土地は免税になるという組み合わせが起こります。先送りすると、期限切れと免税切れが同時に来ます。
出典
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(令和8年4月1日更新)
- 法務省「所有不動産記録証明制度について」
- 法務省「相続人申告登記について」
- 不動産登記法第76条の2、第76条の3、第119条の2、第164条第1項
- 不動産登記規則第187条第1号
- 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第6項

